[ショートショート]スカッと晴れた日・前編
「ふざけんな!クソが!爆散しろ!」
家が近所。
というか、3軒となりの幼馴染。
というか。恋愛感情に発展するほど仲が良かった。わけではない。
というか。ぶっちゃけ、幼馴染というか、ただのご近所さん。
それでも。
幼稚園、小学校、中学校。そして高校の2年間。
クラスが同じだったり違ったりしながらも、顔を見合わせていたら
嫌でも目に付くだろ?
それでも。
普通に可愛い感じの女の子がさ、もっと可愛い女の子に育ってしまったら
嫌でも気になるだろ?
それでも。
幼稚園の頃、あだ名で呼びあって遊んでいた記憶がうっすら残っていたら
味方してあげたくなるだろ?
動機はそれで十二分。
俺は幼馴染()の味方になると、決めた。
アホとアホのフリした堅物と、最近は一緒にいるんだが、時々熱い視線を感じるんだ。
チラっとみて視線を逸らしたり、見てないよ?な顔しながらそっとチラ見したり。
視線の先は、アホの方だった。
まじかよ!
お前、アホが好きなわけ?よっしゃ!全力で応援するぜ!
幼馴染()の視線の先にアホがいるとわかった日から、学校の中では、できるだけ幼馴染()の側で話しをしたり遊んだりするように仕組んできた。
数日もすれば、アホのフリした堅物も気が付いたらしい。
根が真面目な武闘派野郎なので、俺と視線で合図するレベルで合わせてくれる。頼もしい野郎だ。
たかし。お前、本当いいやつだな。相棒だぜ?
そんなこんなで、幼馴染()のバレンタインチョコを渡したいけど、勇気がでなくて動けないよ!がバレバレすぎて、俺と相棒は先に下校するようにして、わかりやすくアホを一人の状況に置くようにした。
「なぁ。実はさ、この前のバレンタインのとき告白されてさ、彼女できたんだわ」
「まじか!」
相棒、棒読みじゃねぇか。慣れねぇなら無理して慣れてねぇ言葉使うな。聞いてる俺が恥ずかしい。
「おい!だれだよ?」
アホの子の口から幼馴染()の名前がでますように!お願いします!気持ちが伝わっていますように!お願いします!
しかし。
アホから出てきた言葉は
「マリちゃん」
「まじか!」
「はぁ!?・・・・ふざけんな!クソが!爆散しろ!」
なんなんだ?コイツ?本当にアホなのか?
大学生のモデルみたいなイケメンの彼氏がいるって噂の奴だぞ?
チョコを渡すか?義理チョコならあるか・・・
いやしかし、告白された?
「お前、マジで告られたわけ?」
「まじなんだわ。でさ、明日一緒に遊びに行くんだわ・・・」
「おまえ、もうちょっと詳しく教えろよ」
アホから出てきた自慢風の自慢を聞きながら、俺は思った。
コイツ、マジでアホじゃねぇか。
「なぁ。お前さ、大学生の彼氏いるって自慢してたよな?高校生なんてガキ臭いってさ」
「そうね。そういうところがガキ臭いわね」
「いや、煽んなよ。俺は聞きたいだけだ。アホの友人として」
「ふーん。気持ち悪い友情もあったものね?」
「どうとでも言え。お前、その大学生の彼氏とはちゃんと別れたわけ?アイツ、アホだから舞い上がってるんだよ。それだけ聞かせてくれない?」
「あんたには関係ないでしょ?」
「あぁ、ないな。じゃあ、お願いするよ。お前とアホが付き合ったら、俺たちがアホと遊べる回数減っちゃうだろ?」
「まぁ、いいわ。イラつくけど。別れたかって?違うわ。振ったのよ。私を汚い女なんていう男はこちらから願い下げだって」
「そうなのか。じゃあ、わかった、ありがとう。お前、いいやつだな。」
「バカじゃないの?」
「もう一つだけ、聞かせてくれるか?」
「何よ?」
「お前さ、泣いてただろ?泣いたことがバレバレになってるくらい泣いた理由ってなんだ?」
マリは俺の言葉で、顔から表情が消えたかと思うと、一滴の涙が一筋流れ、そのままグズグズに泣き始めてしまった。
そして、俺がマリが泣かせたというよくわからん噂が流れて、アホが切れていた。