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ペリカンとアホウドリ


子供たちと風呂に入る。

毎日、風呂に入る。

だから、ときどき思うんだ。一人でゆっくり風呂くらい入りたい、って。


そうして願い続けて、唐突に手に入った一人風呂の時間。


静かだ。

実に静かだ。

こんなに穏やかな風呂に入るのはいつぶりだろう。

しかし、うるさい。

わざわざ私が風呂に入る時間になって洗濯機を使うなんて。


ゴウンゴウンと響く洗濯機の音を聞きながら思うんだ。

一人で風呂に入るときくらい、静かに入らせてほしいものだ、って。

しかし、いつも騒がしい子供たちが静かだ。

ケンカしている声が聞こえない。

まぁ、それだけでもよしとするか・・・



ないものねだりをしているなぁ、なんてことを思いながら風呂から上がる。

フカフカに乾いたバスタオルで体を拭く。

隣接するキッチンに居るであろう妻に、脱衣所から声をかける。


「なぁ、せっかく一人で風呂に入れるのに、なんだって洗濯機を使うんだい?」


「私じゃないわ。スイッチを入れたのはあなたよ?」


「そうだったかな?しかし、子供たちは今日はえらく静かじゃないか。もう寝ちゃったのかい?」



「何、言ってるの?私達に子どもなんていないじゃない」



「あれ?いや、確かに僕には子供がいたはずだよ?」


「いいえ、いないわ。子供がいたと思い込んでいただけよ?」


「昨日だって、一緒に風呂に入っ・・・。あれ?そうだったかな?」


心がざわつく。

子供がいたつもりになっていた?だったのかな?

一緒に遊んだり、寝かしつけたりする記憶はあるのに・・・


体を拭き、髪を乾かし、パジャマに着替える。

脱衣所からキッチンへ目をやると、暗い。


「おーい、なんで電気消したの?」


「・・・」


「あれ・・・。俺、誰に話しかけてんの?」


「あれ?妻に話しかけてなかった?妻?いつ結婚した?」


昔、先輩に借りた漫画であったなぁ。アホウドリってタイトルの漫画。

作者誰だったかな?


山野・・・

そう、山野一。

懐かしいなぁ。


「おーい。パパ、お風呂あがったぞ。ご飯食べよう!」



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