見出し画像

[ショートショート]天使は目覚めない


年の差カップル。なんてことを聞いたことはないだろうか?

俺の両親、母さんは父さんよりも3歳、年上だそうだ。

母さんができた人で父さんはアホなので、両親は俺が高校生になった今も仲が良い。


「なぁ楓さん、俺のこと好き?俺は昔よりずっと好きになってる・・・なんだ?。帰ってきたのか?」


といった具合。というか。父親が母親に甘えてる姿は、できるだけ見たくなかったが。

そして、どういうわけか。俺にも付き合っている人がいる。


自慢ではないが、俺にはもてる要素が微塵もない。

空手と食事で父親の遺伝子が覚醒し筋肉の鎧をまとった巨躯。母親譲りの殺し屋のような双眸。

高校でのあだ名は「おやっさん」


「ねぇ。」と俺の左腕にしがみつくようにもたれかかってくる。
その子は身長140センチ。

身長差が40センチほどの俺たちは、ちゃんとカップルに見えるだろうか?


騒がしい公園のベンチで、他愛もない流行っているものの話しや、ゲームの話しをして家まで送る。

これ以上でもなく、これ以下でもない。



そうじゃないと、俺は俺じゃなくなってしまう。


左腕に伝わる体温を感じながら、

年上である俺がしっかりしなければならない。と俺は自戒し平穏な時間を楽しむのだ。


平穏で幸せな時間を過ごしていると、

必ず「大変なことになる、不幸になるのでは?」という妄想じみたことを思ってしまうのは、なぜだろう?


いつものように俺たちは、公園から自宅へと一緒に歩いていた。

俺の顔や体格で、どうしても悪目立ちしてしまい、「こんな俺ですまない。恥ずかしいだろ?」と思わず聞いてしまった。


「恥ずかしい?そうなの?格好いいとおもうけど」

返ってきた言葉は、俺を有頂天にさせるには十分だった。

この子は天使だ。間違いなく、俺の天使だ。


こんな幸せが続けばいいのに。


「あ!」


この子が天使なら、俺は魂を悪魔にだって売り渡してもいい。


俺だけの天使でいてもらうために。


「あ。お姉ちゃんだ!たかしくん、またね!ばいばい!」


「おう!また明日な」





早く社会人になれたらいいのに。


そうすれば7歳差なんて気にしなくなるのに。



それまで無垢なままのお前でいられるように


俺はお前を「俺好みに育てなければならない」

天使はまだ、目覚めなくていい。


起こすのは、俺だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?