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工業簿記の「基準・実際・標準」がようやくわかった

簿記2級の工業簿記の勉強していると、基準操業度、実際配賦、標準原価、予定配賦率、、などと「基準・実際・標準(・予定)」という言葉がたくさん出てきて、何が何だかわからなくなってくる。

一度全部を整理してみると理解が進んだので、記事にして残そうと思う。

配賦とは?

まず、予定配賦という手続きをするために、基準・実際の区別が必要になってくるので、配賦とは何かを振り返る。

配賦
一定の基準(例: 作業時間)で部門や製品ごとに費用を配分すること。
製造間接費の実際配賦
実際に発生した額の製造間接費を配賦すること。
(ここでは、その配賦額を仕掛品勘定に振り替える手続きと考えて良い)
製造間接費の予定配賦
適当に定めた製造間接費の配賦額(=予定配賦額)を配賦すること。
(ここでは、その配賦額を仕掛品勘定に振り替える手続きと考えて良い)

製造間接費について述べましたが、加工費(間接材料費・賃金・経費)の場合もあります。

なぜ実際配賦ではなく予定配賦を行うのか?

製造業を営む上で、製品を作るのにどのくらいコストがかかっているのかを算出して、経営判断(例: 次の月は材料を安いものに変更する等の判断)を下していくことが必要不可欠。

製品を作るのにどのくらいコストがかかっているのか(製造原価)を算出するためには、製造間接費の額がわかる必要がある。
しかし、実際の製造間接費の額がわかるには、時間がかかる(例えば、光熱費は利用した月の次の月にいくらかわかる)。
ただ、それを待ってから製造原価を算出していては経営判断に遅れが生じる。

そのため、予定配賦を通して、実際の製造間接費の額がわかるよりも先に配賦を行って大体の製造原価を算出することで、経営判断が遅れないようにする。

そして、予定配賦額と実際の費用の額の差を配賦差異(予算差異・操業度差異)として把握する。

予定配賦額はどうやって決まる?

予定配賦額は、実際の製造間接費がわかる前に定める必要があるが、どのように定めるのが良いのだろうか?
それなりに実際の製造間接費に近い値じゃないと意味がない。

製造間接費をこのくらいに収めたい、という製造間接費予算が先に決まっているとして、予定配賦額は以下のように求める。

予定配賦率 = 製造間接費予算 ÷ 基準操業度
予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度

ここで操業度とは、以下のような意味である。

操業度
製品を製造するために使われた労働力・設備等の利用度合い
例: 機械稼働時間、直接作業時間
基準操業度
一定期間中(年・月など)に、利用されると想定される操業度。
例: 予定機械稼働時間、予算直接作業時間
実際操業度
一定期間中(年・月など)に、実際に必要となった操業度。

つまり、予定配賦率は1操業度あたり(例: 1時間当たり)製造間接費がいくらかかると考えられるのか、予定配賦額は算出した予定配賦率で実稼働時間分生産すると製造間接費がいくらかかるのか(予定配賦額だけど、実際操業度を用いて算出するのでわかりにくい!)(そして、予算と予定配賦額が違うのもわかりにくい!)、を表している。

ちなみに、何の数値を基準操業度とするのかは、問題文中で「製造間接費の配賦基準は機械稼働時間である」などのように示されるので、それを利用する。

また、製造間接費の予算が変動費と固定費に分かれている場合は、固定費予算を基準操業度で割って、固定費率(予定配賦率に含まれる値)を算出する。

計算式としては、以下のようになる。

固定費率 = 固定費予算 ÷ 基準操業度
予定配賦率 = 変動費率 + 固定費率
予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度

基準操業度はどうやって決まる?

予定配賦率(固定費率)は予算を基準操業度で割って求まる。
では、基準操業度はどのように決まるのだろう?(簿記の問題中では、基準操業度は何かしらの形で与えられる)

基準操業度は、企業ごとに適切と思われるものを以下から採用すればよい。

・実際的生産能力: 最大でどのくらい稼働して生産できるのか?
・平均操業度: 今までの操業度の平均
・期待実際操業度: 予想される操業度

詳細は、以下のリンクを参考に。

標準原価計算制度を採用する場合

ここまでの話は、実際原価計算制度という原価計算の枠組みの話で、これ以降は標準原価計算制度という枠組みでの話になる(まだ自分もよくわかっていないので、ここは流し読みで)。

標準原価計算とは、製品原価の目標値(理想値)となる標準原価を計算することである。

そして、その計算した標準原価と実際の製品原価を比較して、その差異(標準原価差異)について、材料費については価格差異と数量差異、加工費については能率差異・予算差異・操業度差異に分けて分析をする。
要するに、理想と現実の差がどこで生じているのかを分析する、ということである。

標準原価計算制度では、予定配賦額ではなく、標準配賦額を用いて、加工費を配賦する。
標準配賦額は、以下のように求まる。

固定費率 = 固定費予算 ÷ 基準操業度
標準配賦率 = 変動費率 + 固定費率 (= 予定配賦率)
標準操業度 = 1製品当たりの標準作業時間 x 実際の完成製品数
標準配賦額 = 標準配賦率 × 標準操業度

標準配賦率は、実際原価計算制度での予定配賦率と同じく、1操業度(作業時間)当たりいくら加工費がかかるかである。
標準操業度は、完成した製品の数を生産するために必要な理想の作業時間のことである。

標準原価の内訳

標準原価計算制度では、加工費だけではなく、直接材料費についても標準が存在し、加工費と直接材料費を合わせて製品の標準原価となる。

具体的には、以下のように計算できる。

製品1個当たりの標準原価(=原価標準)
直接材料費: 標準単価 × 1製品あたりの標準消費量
加工費: 標準配賦率 × 1製品あたりの標準作業時間

上記だとわかりにくいが、例えば、以下のようなイメージ。

直接材料費: 1500円/kg x 0.6kg = 900円
加工費: 4000円/時 x 0.2時間 = 800円
原価標準: 1700円(=900円+800円)

基準・実際・標準のイメージ

基準
製品を生産するに当たって、最大キャパシティを表す数値。予算・予定とほぼ同じ意味(年間予定機械作業時間等)。ただし、予定配賦額や予定配賦率との違いに注意。
例: 基準操業度
実際
製品を生産するに当たって、実際にかかった数値。
例: 実際操業度, 実際配賦額
標準
製品を生産するに当たって、コスト的に最も理想的な数値。
例: 標準操業度, 標準配賦額, 標準原価

まとめ

まず、原価計算制度として、実際原価計算制度標準原価計算制度がある。

実際原価計算制度では、実際原価が財務諸表に紐付く。
実際原価計算制度の中に、予定配賦/実際配賦の考え方がある。予定配賦を行って、実際の製造間接費(または、加工費)と予定配賦額の差異(配賦差異)を予算差異・操業度差異に分けて分析する。
予定配賦をすることによって、実際の費用がわかる前に大体の製品原価がわかり、素早い経営判断につながる。

標準原価計算制度では、標準原価が財務諸表に紐付き、実際原価との差異が標準原価差異として扱われる。ここでいう標準原価とは、製品を生産するのに必要となるコストの理想のことである。
標準原価計算制度では標準配賦を行って、実際の加工費(または、製造間接費)と標準配賦額の差異を能率差異・予算差異・操業度差異に分けて分析する。
標準配賦でも、実際の費用がわかる前に大体の製品原価(標準原価)がわかる。
また、原料費(または、直接材料費、または、製造直接費)についても標準があり、実際の費用と標準原料費の差異を数量差異・価格差異に分けて分析する。

基準操業度は、予定配賦額・標準配賦額を求める際に必要となる予定配賦率・標準配賦率を求める際に用いる値で、最大でどのくらい稼働して生産できるのか?を表す値や、今までの操業度の平均値が用いられる。


最後に、本記事を執筆するに当たって参考にしたWebサイトを記しておく。




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