ひまわり
誰にも言えない話をあたしに打ち明けてくれる嬉しさ。夏の楽しみにあたしを引き入れてくれる嬉しさ。一人の夜に、何気ない食事の時間に、思い悩む世界に、あたしを混じり合わせてくれるその嬉しさで、今、生きてる。
あたしを見て笑うその顔が、美しいその瞳に映る自分が、とてつもなく愛おしい。
あたしは可哀想なあたしを救いたくて泣いていた。
あの頃の自分を助けたくて生きてきた。
あたしはあたしを見捨てたくなかった。
何度も投げ出しかけたこの生命を、何度憎いと思ったかわからないこの人生を、どうしたって愛せなかったこの身体を、今、何に使えるだろう。
あたし一人しかいなかった世界にキラキラの笑顔とうるさいくらいの笑い声を差し込んでくれた人たちに何ができるだろう。
生きていれば言葉を届けられる。
あなたたちの温もりをこの手で感じられる。
汗をかく。涙が出るほどに笑える。夜の海の冷たさや湿った風を肌で感じられる。今年も夏がきたことをこの身体ぜんぶで感じられる。
まだ、なんにでもなれる。
どん底の真っ暗闇でもうだめだって突っ伏していたって、今ここで立っている。
あたしの手を取って一緒に立つ人がいる。
倒れそうな友達の頭も背中も心もまだこの手と言葉で支えてやれる。
あたし一人にできることなんてそんなにない。
でも、一人じゃない。
だから大丈夫。
完璧じゃない。穴ぼこだらけだ。泣いたり怒ったり人生全部が嫌になったりする。
それでも、まだ、面白いくらいに生きてる。
笑顔の写真が増えていく。
コンプレックスを笑って話せるようになる。
すっぴんでも会える人がいる。
着飾らなくても楽しめることがある。
晴れた空を美しいと思う心がまだある。
人生ぜんぶがきれいじゃない。
ずっと楽しいことだけでもない。
それでも、人生は美しい。
そばかすや皺や脂肪を醜いと悩んだりしても、今あたしの目に映るあなたは美しい。
本当に綺麗なんだよ。
大好きなのよ。
あなたたちのおかげで生きてる人がいる。
救えなかった人もいる。
思い出すことすらなくなった人もいる。
そういうものなんだろう。
寂しくて、冷たくて、汚くて、そうやって歳を取るんだろう。
そうやって死に向かってくんだろう。
それでいい。
あたしはあなたを愛している。
恋をして働いて酒を飲んで笑ってる。
今が楽しいんだ。
こんな世界に来れたことが嬉しいんだ。
まだなんにも大丈夫じゃないけど、やっていけるような気がしちゃうんだよ。
ありがとう。
ほんとうに幸せだよ。
あなたたちを泣かせたくないから、また会いたいから、死ぬつもりなんてないよ。
安心して、次の約束をしていいよ。
これからも色んなところに行こう。
花火をして水着を着て、また馬鹿みたいに酒飲んで潰れよう。夕方まで寝て、起きたら二日酔いでしんどいねって笑おう。
そうやって一緒に生きてこう。
誰も欠けないで。泣かないで。
幸せになって。
でも誰よりもあたしが一番幸せになってやるから、それまで待っててね。
ひまわりが似合う夏のあなたたちへ。