2002~

ほら、あたしたちは言葉なんてすぐ忘れてしまうから。誰にも届かないこんな場所にでも書いておきましょう。あたしの言葉はいつかのあたしを救う。他の誰かにもきっと届く。
死にたくて泣いた夜に、寂しくてうずくまる夕暮れに、昔を思い出して喉の奥が締め付けられるような朝焼けに、あったかいコーヒーと傷を舐めるようなほんの少しの言葉があれば、眠るときに枕を濡らさずに済むかもしれない。
そのおかげで明日も生きていけるかもしれない。
その程度でいい。
人生を変えるような格言も、愛する人に贈るラブレターも書けやしない。
昔の自分を憐れんで、死にたい夜に死にたいってグダグダ書き連ねて、後ろ向きのまんま無理やり這いつくばって進むみたいな、そんな文章。
バターになれないマーガリン。
アイスクリームになれないラクトアイス。
そんなもん。
でも、その言葉たちに救われた夜が確実にある。
忘れたくない思いを残してきた。
愛と生と死。それだけが全て。
なんで生きてるのか。なんで死にたくなって、なんで死ぬのをやめたのか。
誰とどんな恋をして、どうして泣いたのか。
あたしはね、全部忘れたくないの。
全部を書いておけるわけじゃないけど。
だけど、こんなに色んなことを感じて、考えて悩んで、そうやって生きてきたんだよって、何年後かのあたしに残しておきたいんだ。
酒飲んで酔っ払って笑って生きてるから、きっと明日にはなんで笑ってたのかも憶えてられないから、せめてここに足跡つけさせて。
文章でお金が稼げなくても、誰にも見つけてもらえなくても、あたしが知ってればいい。
あたしはあたしを救うために生きてんだから。
蜘蛛の糸は何本あってもきっといいよね。
あたしの最終章はまだ決まってないから、いつか死ぬそのときまで。ね。

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