ぼくはまだ生きている
私は天才じゃない。
どこにでもいる凡人だ。
その他の多くの人がそうであるように
地球規模で見たらなんでもないようなことで
悩み怒り喜び悲しんで生きている。
大抵の人がそうであるように
自分がいなくても世の中は何も変わらない。
私がたとえ問題を起こしたとしても
世界を揺るがすほどの影響などない。
なのに。
それなのに。
そんなごく普通の私ですら
言いたいことも言えず
やりたい事もできず
行きたいところすら行けない。
ここは私にとって大事なところ。
人に言えないことを言えるところ。
この家は私の帰る場所。
安心して生活できるところ。
この街は私の人生に必要なところ。
色んなものを見て色んな人と会えたところ。
もっともっともっと
言いたいこともやりたい事も見たい景色も
数え切れないくらい沢山あるのに。
皆我慢してる。
だから。
それだけの理由で。
私の人生が縛られている。
学校。勉強。家庭。仕事。
そういう自分を縛るものが嫌で
全部取っ払って逃げてきたのに。
今度は世間が私を縛る。
ほんの少しの弱音を吐いただけで
沢山の人に迷惑と心配をかけるような対応をされた。
あの頃はどんなに必死に訴えても
こっちを見向きもしなかったのに。
助けて、の言葉を見てみぬふりをされたのに。
本人の言葉が一番大切なはずなのに
どこの誰かも分からない他人の言葉には
世間の目や言葉にへらへらして
私の言う事なんて聞いてくれやしない。
それどころか嫌味を言ってにやにや笑って
ああもう気持ちが悪いったらありゃしない。
そんな奴らのさらに上の奴らが言う
我慢してください。なんて
聞く耳を持てなくて当たり前だろう。
それで自分らのためには動くってんだから尚更。
ほんと嫌んなっちゃうね。
私は私のことが嫌いだよ。
けど上の方で偉そうにしてるあんたらも嫌いだよ。
海や星が見たいだけ。
お祭りに行きたいだけ。
悪いことなんてなんもしてないのにさ。
今までたくさん我慢してきたのにさ。
仕事がなくなったって借金したって
嫌な思いしたって生きてきたのにさ。
いつまでたっても先が見えないんだよ。
私はまだまだ若いんだろう。
これからなんだって出来るんだろう。
でももう諦めてしまったよ。
同じくらいの歳の人に比べたら
私はきっと色んなものを知りすぎたんだろう。
お酒も煙草も醜い欲も大人ってものも
知りたくなかったことまで見てしまったから
生き急いで死に急いでしまったから。
たとえば私が今死んだら
まだ若いのに、って言われるんだろう。
若いからなんだ。
働くのに、生きるのに、何かをするのに
年なんて関係ないだろう。
子供の頃は皆いろんなものに守られていて
その守られる権利を捨ててしまったら
あとはもう自分で守るしかないんだ。
いつの間にか守られる側から守る側になるんだ。
ずっと自分で自分を守ってきた。
私を脅かすものを、
私が嫌だと思うものを全て捨てた。
沢山のことから逃げ続けてきた。
けどもう疲れた。
新しい事を覚えたくても覚えられない。
前は人の名前も仕事もすぐに覚えたのに。
どんなに頑張っても数十分後には忘れてる。
身体も思うように動かない。
疲れはずっと取れない。
食欲もそんなになくなった。
怖いと思うものが増えた。
嫌な記憶には蓋をした。
無意識にまた逃げていた。
心の拠り所がもうどこにもなくなった。
自分が醜くて仕方ない。
容姿も声も話し方も思考も全てが憎い。
もう何も愛せない。
余裕がない。
疲れてしまった。
死にたい、なんて言ったら
また通報でもされるのかな。
そんなことに意味なんてないのに。
くだらねえな。
私もあいつもこの世界も。
なのにまだ生きてるんだから
ほんと、可笑しいね。
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