木澤尚文2023~対左への可能性
はじめに
久々の2次戦力外、ピーターズとの別れ。ドラフト後ですがつらいニュースが続きますね…
こんにちは、暁めぐりです。
今回は「木澤尚文2023~対左への可能性」として左打者への投球を中心に今シーズンの木澤投手の投球を振り返ります。
今季は2年連続で50試合以上に登板し、自己最多20ホールドを記録し、苦しいチームを支えてくれました。
ご存知の通り、木澤投手は対右被打率.168に対し、対左が.287。左右で極端に得意/不得意のある投手です。左打者に対するとき、投球内容やスタッツにどのような変化があるのか、来季への「伸びしろ」としてお読みいただければ幸いです。
※記事に何かあればこちらまで
暁めぐり@燕党新人Vtuber(@Meguri_Akatsuki)さん / X (twitter.com)
総合成績
成績:防御率2.72、被打率.223、奪三振率8.32、BB/9:0.51。
四球以外ではポジティブな数字が並んでます。
基本直球はシュートで投球の52%を占めます。
集計上の問題でフォーク=スプリット、カットボール=ムービングと表記していきます。
スプリットの空振り率は18%で平均的、カットはそれより空振りが取れています。ここにカーブを交えるのが今の投球スタイルですね。
球種別被打率みても優秀な数値が並んでいて、特にカット/スプリットは投球数みてもかなりいいボールですね。
対左打者
はい。対左になるとこうなります…
カット/スプリットの被打率が跳ね上がり、シュートに頼り気味に。カーブはまた後で。
もう一つ、対左では、追い込んでからの被打率が.275と高い水準になっていました。
そこで、左右別に、「三振をとったボール」(決め球)を確認してみます。
対右33奪三振、対左16奪三振と2:1くらいの比率。
割合をみると、対右奪三振の過半数を占めていたカットでの奪三振が激減。スプリットは比率的には同じくらい。対左におけるカットの減少で、代わりにシュートでの奪三振割合が増加。シュートでは左右で同じくらい三振の「数」が取れています。
ここまで木澤投手をみていくと、対左に関して、
①シュートはそこまで悪くない
②カットボールは被打率が高く、三振が対右との比較でとりにくい
③スプリットは被打率が高く、三振の数自体は減っているが、三振に占める割合は変わらない。
という感じ。ここからは各球種別に、打者左右の違いでどのような変化がみられるか確認していきます(ここから長いので飛ばし読み推奨…)。
対左球種分析
シュート
まずは投球の半数を占めるシュートから。
平均球速は変わりませんが、空振り率が3%低下しています。右投手の投げる対左シュートは軌道上一般的には見やすいからかと。
顕著なのがファーストストライク被打率。対左がとんでもなく高い上に1つストライクをとった後の被打率は対右より低いです。
これを見る限り、1stストライクのシュートは狙われているようですね。木澤投手にはシュート以外に50%以上のストライクをとれる球種がなく、対左に関してはカウント作りに苦労しています。
言い換えるともう一つカウントボールがあれば、シュートを含めてストライクを先行させることができ、シュート等を決め球にできるカウントまでもっていくことができそう(印象としてもそんな感じ)。
もう一つがストライク率の低下。約10%の低下が見られます。こちらもカウントを作るのに苦労する要因となっていそう。
そこで、投球分布からどこに外れているかを詳しく見ていきます。
基本的にはアバウトにコントロールできていれば抑えられる投手であることを念頭に置いて。投手目線の図です。
左打者のアウトコースに外れているのは「アバウトに」外にいっているので許容範囲内で、実際このコースはストライク率50%を超えています。
問題はインロー。データがありませんが、対左打者の外角に構えた時にこのコースに外れるシーンが散見されます。
また、同じコースでも右打者の外角への投球になるとストライク率が上がります。おそらくは引っ掛かってインローのボールゾーンへいっていると思われるので、これが減ると四球やボール先行は減りそうです。
最後に、コース別被打率と空振り分布から有効なゾーンを。
まず見て取れるのがインハイ。被打率が低い上に、貴重な空振りも2つ取れています。
アウトコースでは低めのほうが安全そうですが、アウトハイ(右のインハイ)は継続して(アバウトに)投げていきそう。
低めの逃げていくボールは立派にウイニングショットになってますね。
シュートに関してまとめると
①他のカウントボールは置いておいて
②インローに引っかかるボールを何とかする
③インハイ/アウトコースをアバウトに投げ切る
という感じ。
正直、印象ほど悪くないと思うのでこのまま軸として磨いてほしいですね。
いやホント、カウント球があれば超楽になるんですけど。
カットボール
続いてはカットボールです。
カットに関しては空振り率24%→13%と左打者に対して大幅な低下がみられます(対右カットが魔球なのもありますが)。
一方でストライク率は38%→47%と対左のほうが高く、1stストライク被打率も低く収まっています。ただ、0ストライク時のストライク率は41%まで下がります。
カットボールにおいて対左ストライク率が対右より高い要因を探るために、左右別でカットの投球分布を見てみます。
基本的には右投手の対角線に投じるボールです。
対左においてはストライクゾーン真ん中/真ん中低めにもう一つヒートゾーンがあり、これによってストライク率が上昇しているようです。
…つまり、真ん中に集まりがちってことです。
一方対右を見ると、抜け球はあるものの、アウトローに集めることができています。対左におけるストライク率の上昇と空振り率の低下はこのあたりに原因がありそう。
最後にコース別被打率と空振り分布を。
例によって投手目線。
やはり真ん中に集まると(当たり前ですが)危険ですね。
一方でしっかりインローに集めれば空振りは取れています。被打率の高まるコースとは紙一重なのでカットの失投は命取りになりがち。
データ上は対角となるアウトハイのバックドアは被打率が低く空振りもとれています。
「制球のいい」エース小川が「引き出しとして」アウトローのスライダーでたまにやってますが、木澤投手のカットはそもそもが落ち球ですし、難易度は低くないと思います。が、ものにすれば外角のカットは有効なカウント球になりそうですね。
逆に小川がデフォルトで使うインハイのカットは球質が全く別物なので使いにくそうに見えます。
カットボールに関してまとめると
①対右ほど空振りがとれるわけではない
②真ん中に集まりがち(高被打率と①の原因の1つ)
③対左インローは右打者アウトローと同じく空振りがとれる(リスクもある)
④外カットには可能性を感じる
という感じ。
対左中心に書いているので微妙に聞こえるかもしれませんが、対右を見れば立派な魔球?ですし、実際投球を見てもいいボールだと思います。
やはり「アバウトに」引き出しを増やすことが課題といえそう。
スプリット
続いてスプリット。
スプリットに関しても空振り率が対右23%→対左15%とかなり低下しています。ボール球の見極め率は対右のほうが高く、ファウル/結果打球率は対左のほうが高いことから、左打者のほうがバットに当てやすいのかなと。
空振りを狙うボールなのでストライク率は低めです。
余談ですが、対右を見てお分かりの通り、対右被打率.000です。すごい。
今回は対左空振り率低下の要因を探るため、左右別に空振り分布を見ていきたいと思います。
例によって投手目線の空振り分布図です。
空振りが「取れている」コースは左右同じで対角線低めのボール。比べてみると一目瞭然ですが、対左ではゾーンに浮くボールが多いですね。この球をバットに当てられていることで空振り率が下がっている感じ。
ゾーンスプリットも見逃しでストライクがとれていればいいのですが、対左におけるゾーンスプリットのスイング率は93.75%(15/16)。
例えば清水昇や星知弥のようにゾーンでカウントを稼ぐボールでは、現状ではないようです。
最後にコース別被打率を。
※11打数4安打なのでサンプル少ないです。
浮くと打たれますよ、という当たり前の話に見えますが、やはりカウントを取りに行くボールとしては怖いですね。
一方で真ん中低めで3三振を奪うなど、対右と比べて浮き気味のスプリットを低めに制御することでの改善の余地は大いにありそう。
実際、先ほど例にあげた清水/星の2人の勝ちパターン投手は投手はフォークを武器に左打者と対峙します。
例
清水昇対左:フォーク被打率.098 空振り率20% 対左総合被打率.224
星知弥対左:フォーク被打率.125 空振り率18% 対左総合被打率.227
球質の違いがかなりありそうなので一概には言えませんが、例えばアウトローで安定して空振りが取れるようになったりすると変わってきそうですね。
カーブ
最後に、後回しにしたカーブを。
投球割合は5%ほどと多投するボールではないです。左右関係なく見逃し率の高い球種で、カウントを稼げる可能性のあるボール。ただし、現状においてはストライク率が30%台なのでとても微妙です。
また、球数を見てもわかる通り左打者に多く投げているボールで、対左での投球割合は7%ほどになっています。
例によって投球分布も見ていきます。
投球分布的には、左打者のアウトコースでストライクが取れているのがいいですね。
一方でストライク率30%台の原因は左右関係なく低めのボールゾーンへの投球が多いことでしょうか。特に左打者に対しては低めのストライクゾーンにいくボールがない(統計上の問題もありますが)ことから、かなり引っ掛かっているように見えます。
基本的にはショートイニングかつ前述した3球種が軸なので狙い打ちされることは少ないでしょうし、ゾーンに来ればムーチョ中心に上手く要求してくれるでしょう。
1イニング0~2球、対左の苦しいところでストライクが取れるだけで大きいと思いますし、持ち球の中で平均球速130前後のボールはカーブだけなので割合を変えずに主戦級に引き上げると幅が広がりそうですね。
結論
まとめると
①カウント球にカット/カーブを混ぜて、カウントシュートの被打率を抑えつつストライク先行にしたい
②追い込めたら内外アバウトなシュートとカット/スプリットで打ち取りたい
→対左に関してはカット/スプリットはもう少し精度があると嬉しい
という感じでしょうか。
現状、アウトハイのシュート+インローの落ち球2球種という2ゾーンにかなり偏っているので、それ以外のコースでも勝負ができると左打者目線では打ちづらくなりそう。
実際にはこの記事で上げたものの何か一つでもあれば十分だと思いますが、それが難しいのがプロ野球ですね(言うは易し)。
個人的には「木澤なら来季までに何か掴んでくるだろう」みたいな感じで、とても楽しみにしてます。
研究熱心ですし、予想以上の何かを見せてくれる気もしますね~
おわりに(次回予告)
長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
2022年は8ホールド17HP、2023年20ホールド22HP。2年連続で50試合以上の登板で、2022は回跨ぎも多く疲労は心配ですが順調に来てますね。
記事執筆時点では田口の去就が定まっておらず、しみのぼに疲労が見えてきている現状、個人的に大きな期待をかけている一人です。
来年は安心して見られる試合が増えるでしょう(願望)
さて次回ですがサイスニードのストレートを予定しています。本当は長岡のバッティングについてやりたいのですが、個人的に忙しい時期と重なっているのでそっちはチマチマ進めたいなと。
できる限り更新頻度を上げていくつもりですのでお待ちいただければと思います。
では、木澤くんがアメリカで何かを掴んでくることを期待して。