大切な人の死と向き合う時に観る映画
今となってはかなり古い映画だが
「Shadowlands(邦題:永遠の愛に生きて)」
をご存知だろうか。
リチャード・アッテンボロー監督による1993年に公開されたイギリスの伝記映画だ。オックスフォード大学教授で作家のC・S・ルイスと、アメリカ合衆国出身の詩人の女性の恋愛映画だ。(Wikiより)
これを観た時、私はまだ10代で、ちょうど英語への興味と英国への興味を持ち始めた頃だったし、主演のアンソニー・ホプキンスはまさにイギリス紳士といった役所で、難しい題材の映画だったが、夢中で見た。
恋愛映画といってもこれは、ワクワクするような恋愛ものではない。
せっかく出会って結婚したのに、妻となった女性は不治の病に冒され、緩やかに、でも確実に病気は体を侵食し、最後は静かに息をひきとる。
最初から最後まで、物語は静かに進む。
この映画の主題は「愛する人との永遠の別れにどう向き合うのか」ということだと思う。映画の中では、実母、そして妻との別れ。本当は教会の教えなどとも深く関わる解釈が入るので、聖書の教えを知らない私には、本当にその真意を理解することは難しいかもしれない。
けれど、本当に愛したものを失う時の悲しみを
確かな言葉で表現してくれている。
'I don't know what to do. You have to tell me.'
どうしたらよいのかわからない。君が教えて。
'You have to let me go.'
もう私を手放して。
'I'm not sure if I can.'
できるかどうかわからない。
'I love you so much.
You make me so happy. I din't know I can be so happy. '
君を愛している。こんなに自分が幸せになれるなんて知らなかった。
'Experience is a brutal teacher.'
経験は冷酷な教師だ。
'I want to see her again.' 'Me too...!'
(子:僕、またママに会いたいよ。妻の夫:私もだ...!)
私の場合、犬の死からまだ完全に立ち直っていないから
久しぶりにこの映画を観た時には、
妻が犬に置きかわり、言葉を発しているような気がして、
号泣した。
犬は、病気を抱えていたから、
最後の数日は本当に全身が痛かったんだと思う。
多分、口がきけたら妻と同じことを言ったのではないか。
もう、痛いから空に行っていいかな、と。
最愛の妻を失う夫が私。
息を引き取ったばかりの犬にこう言った。
まだ準備ができていないし、素直に見送ることなんて、できない。
逝かないで、と。
今だって、いつだって会いたいし、
また天国で一緒に海に行ったり
カフェに行ったりしたいと思っている。
もし、なんと表現したら良いかわからない
悲しみを抱えているならば、
それを表現する的確な言葉が必要だ。
その言葉に重ねて、自分の気持ちを整理し、
手放していくことで、
いつか傷は癒えるのではないだろうか。
私はまだ犬の死を手放すのにも時間が必要だ。
これからも、きっと何回もこの映画を見返して
きっと同じところで何度も泣くのだろう。
どれだけ辛かったとしても、
悲しみと向き合うことで
いずれは幸せの記憶の一部にすることができる。
残酷な経験さえも、希望に変わるような余韻を味わえる映画だ。