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三日坊主に打ち勝つ実験/愛おしき日常(第7回)
10月に十数年ぶりのキャンプを予定していた。
キャンプといえば、テントに寝袋。
寝袋など、中学時代に押し入れの奥から引っ張り出したなんかペチャンコなものに包まれた思い出くらいだ。
知識・経験ともに、ほぼ初心者である。
初心者ながら、いい大人だから、”上の下”くらいの、それなりに評価を得ている寝袋を買った。
商品が届いて早速開封してみると、「ふわっふわやないか…!」と、まず今どきの寝袋のクオリティに驚いた。一呼吸おいて、その時の衣服のままで一度入ってみる。やはりふわっふわで軽い寝袋には驚きを隠せない三十路。
これはもう試さずにはいられない。
届いた日の晩は「初心者としては本番を想定した練習が必要だ!」と、地面の硬さを考慮し、床で就寝した。
翌晩は、できるだけリアルの環境を保ちつつも、より良い寝心地を追求する。本番用の荷物を枕にする想定でベストポジションを探り当てた。
そのまた翌晩は、本番の外気温に近づけるべく、部屋の窓という窓を開け放った。密かに聞こえる虫の声と、そよそよと流れる風を感じながら眠りについた。
そのほか、寝相の悪さに対応できるのか、うつ伏せになったら起き上がれるのかなど、このふわっふわの寝袋の良さを最大限に発揮させる使い方を求め、思いつく限りの実験を行った。
私は根っからの三日坊主だが、この寝袋はそんな性格をものともせず、3日以上の刺激を与えてくれたのだった。
夜になってはひとりでクネクネと試し続ける住人。恐らくマンションで最も気持ちの悪い存在であったこと間違いないだろう。
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