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【フェムテック⑫通信】2022年海外デジタルヘルス150に選出されたフェムテック企業と、日本にトレースできるサービスモデルとは?

1.デジタルヘルス150とは?

アメリカの調査会社CBインサイトが、世界で成長しているヘルスケア企業150社を毎年発表している。
フェムテックはデジタルヘルスの一部として、毎年何社かランクインしているが、上場や買収・大型資金調達を実施している企業も多い。

そこで、2022年12月に発表された、デジタルヘルス150社の中から、フェムテック企業を紹介する。

2.2022年12月 デジタルヘルス150に選出されたフェムテック企業

①MAVEN

・カテゴリー:遠隔&対面診療
・国:米国
・投資家:BoxGroup, Brent Hoberman, Female Founders Fund, Great Oaks Venture Capital, Matt Mullenweg, Susan Lyne, Thomas Lehrman, Venrex Investment Management, Company, 14W, 8VC, Colle Capital Partners, DGNL Ventures, Spring Mountain Capital, Oak HC/FT Partners, Sequoia Capital, Anne Wojcicki, Harmony Partners, Icon Ventures, Mindy Kaling, Natalie Portman, Reese Witherspoon, Bond, Dragoneer Investment Group, Lux Capital, Oprah Winfrey, CVS Health Ventures, General Catalyst, Intermountain Ventures, La Famiglia
・調達額:$289M

不妊治療や妊娠・育児などのオンラインサービスを提供するMAVEN。「全ての従業員やその家族にケアを届ける」という信念を軸に、日本を含む175カ国以上で、約1,500万人の生活を支えている。

②Tia

・カテゴリー:遠隔&対面診療
・国:米国
・投資家:Combine VC, Compound, Homebrew, ACME Capital, Define Ventures, Emily Melton, John Doerr, Torch Capital, Gingerbread Capital, Human Ventures, Lone Pine Capital, Seae Ventures, The Helm, Threshold Ventures
・調達額:$127M

遠隔&対面のハイブリットで、婦人科系やメンタルヘルスケアを手がける。アプリで専門家にチャットで相談できたり、おしゃれな自社クリニックも展開。アプリとクリニックが連動したノンストップなケアで、従来より低いコストで診療可能。

③Kindbody

・カテゴリー:遠隔&対面診療
・国:米国
・投資家:TQ Ventures, Green D Ventures, Noro-Moseley Partners, Perceptive Advisors, RRE Ventures, TMV, Winklevoss Capital, Google Ventures, Paycheck Protection Program, Claritas Capital, Freemark Partners, Goodgrower, NFP Ventures, Rock Springs Capital, Bramalea Partners, Eldridge, Monashee Investment Management, Theresa Sexton
・調達額:$182M

移動式の不妊治療啓蒙検査バスが有名。2022年には、いくつかの不妊治療関連企業を買収。米国では1度の卵子凍結で約100万円ほどかかるといわれているが、Kindbodyのサービスは、デジタル化で3割程度、費用が削減できる。

④Embr Labs

・カテゴリー:自宅ケア
・国:米国
・投資家:Massachusetts Institute of Technology, MassChallenge, Kickstarter, Plug and Play Accelerator, Bose Ventures, Social Starts, PBJ Capital, Intel Capital, National Science Foundation, DigiTx Partners, Safar Partners, Paycheck Protection Program, Ignite Medtech, Tech4eva Accelerator
・調達額:$18M

マサチューセッツ工科大学の科学者3人によって設立され、温熱環境の改善を促進する技術に焦点を当てている。更年期のホットフラッシュ改善デバイスを提供し、手首の熱受容体を冷やしたり温めたりすることで、温度の感じ方をトラッキングし、数分後には冷たくなったり温かくなったりする。すでに45,000台以上のデバイスを販売し、Boseやジョンソン・エンド・ジョンソンとの共同開発契約も締結。

⑤Evvy

・カテゴリー:自宅ケア
・国:米国
・投資家:BBG Ventures, BoxGroup, G9 Ventures, General Catalyst, Virtue Capital Management
・調達額:$5M

膣内のマイクロバイオームの状態を分析し、健康状態やアドバイスを提供。3カ月ごとの定期検査のサブスクモデルと、1回のみの検査キット購入が選べる。実際に検査を体験した、以下の日本語の記事が参考になるのでぜひ読んでほしい。

⑥Nuvo Group

・カテゴリー:遠隔診療
・国:イスラエル
・投資家:Shareholder Value Management, MedTech Innovator
・調達額:$68M

遠隔妊娠モニタリングシステムを提供。母親と医師をリアルタイムで結び、母親と赤ちゃんの様子を医師がモニタリング。
「中東のシリコンバレー」とも言われるイスラエル。イスラエル最大の病院「シェバ」内には、フェムテック特化型イノベーションセンターも存在。
子沢山な超正統派のユダヤ人が、人口の75%を占め、イスラエルは高い出生率を維持している。

⑦Babyscripts

・カテゴリー:スクリーニング・モニタリング・診断
・国:米国
・投資家:MCx, Aurora Health Care, CG Health Ventures, Insud Pharma, IrishAngels, P5 Health Ventures, Ysios Capital Partners, 1776, Kensington Capital Partners, Arab Angel Fund, GE Healthcare, Inception Health, WellSpan Health, NueCura Partners, Philips, StartUp Health, Inova Health Systems, Inova Personalized Health Accelerator, Banner Health, CU Healthcare Innovation Fund, MemorialCare Innovation Fund, Philips Ventures, University Hospitals, Atlantic Health System, Cigna Ventures, Texas Medical Center Venture Fund
・調達額:$39M

2030年までに、人種や文化的背景に関わらず妊産婦の死亡率をゼロにすることを目標としており、産婦人科に妊婦の健康をモニタリングするための IoT 対応のデバイスやアプリなどを提供。
2017年の調査では、黒人女性は白人女性よりも3~4倍、出産で死亡する可能性が高いという報告もあり、人種間格差やマイノリティの問題の影響があると言われている。

3.2021年10月 デジタルヘルス150に選出されたフェムテック企業

①Cleo

出産前の社員や、子育てをはじめた社員を支援するための福利厚生として、個人にあわせたファミリーサポートを提供。

②adyn

避妊方法の副作用を抑えるために、自分にあった避妊薬がわかる自宅検査キットを提供。唾液と指先のサンプルから、ユーザーのホルモンレベルを分析し、副作用を特定したあと、避妊薬を郵送で送ってくれる。

自宅で検査をして、パーソナライズされた薬であったり、サプリメントを提供するというビジネスモデルは、日本でも徐々に増えつつある。

③FOLX

ホルモン補充療法、PrEP処方(HIV感染予防を目的として性行為をする前から薬を内服する治療法)、セクシャルヘルスサービスなどを通じて、包括的なヘルスケアを提供。2022年にはシリーズBラウンドで3,000万ドルの資金調達を実施。

4.2020年8月 デジタルヘルス150に選出されたフェムテック企業

①hims&hers

2021年3月に上場。もともと男性向けのスキンケアや脱毛周りのオンライン診療・処方箋の宅配サービスを行う企業だったが、その後、女性向けに処方に基づくピルやスキンケア商品なども追加し、D2Cで販売。

②Ro、Modern fertility

2021年5月に遠隔診療を手掛けるRoが、自宅用不妊検査キットを提供するModern fertilityを買収。Roは、男性の脱毛治療薬・勃起不全のソリューションを提供したあと、女性の更年期向けのRORYというブランドを展開。さらにModern fertilityを買収し、妊活領域にも進出している。

Modern fertilityは、指先の少量の血液サンプルを送ることで、ホルモン値をチェックし、想定される卵子の数や閉経するタイミングなどを予測することができる検査キットを提供。

③Carrot Fertility

創業者のTammyは、30代前半で卵子凍結したが、身体に負担がかかる・仕事の調整も必要・高額な費用が自己負担なことに不満を感じ、企業の福利厚生として不妊治療サービスを提供するため起業。
米国、アジア、ヨーロッパ、中東など50カ国以上でサービスを展開。体外受精、卵子・精子凍結、代理母のドナー探し、養子縁組まで幅広くサポート。

5.まとめ:日本にトレースできるサービスモデルとは?

デジタルヘルス150に選出されたフェムテック企業の特徴だが、MAVENは福利厚生制度の策定から、家庭持ちで働く人に特化したサポート内容まで、包括的な企業向けサービスが充実している。
Tiaは、「子宮筋腫だと婦人科」「糖尿病だと循環器内科」ではなく、女性の健康全般をカバーする部分が、ユーザーに受け入れられている。

起業や新規事業の初期段階は、顧客と課題を絞ることだが、上記のように垂直統合や水平統合による、「包括的なサービス」が米国のフェムテック企業中心に広がりつつある。

統合がどこまで広がっていくかは未知数だが、包括的なサービスが広がるひとつの方法として、大企業が入り込むことで、広がりの速度は上がっていくと筆者は推測している。

6.記事&プレスリリース共有

①記事共有:フェムテック発展のカギはジェンダード・イノベーション。避妊分野での米国最新事情

米国では、避妊のイノベーションと医療格差の改善サービスに投資家の関心が集中している。
上記の記事では、避妊に関する米国の製品・サービスも多く紹介されているので、参考にしてほしい。

②プレスリリース共有:Femtech Community Japan社団法人化を発表!

活動しているFemtech Community Japanが社団法人化を発表。法人会員も絶賛募集中なので、興味のある方は、ぜひ個別にご連絡ください!