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米国の妊活系Femtech企業の創業者の想いを大学生に話したら、日本の遅れを突っ込まれた

Femtechの中でも、特に資金調達が活発な分野が妊活系サービス。
海外では、IPOする企業も出現し、男性向け不妊治療サービスとの提携も活発化。
そんな中、創業者がどのような想いで妊活系サービスを創業したのか調べてみて、大学生と話してみたので参考にしてほしい。

米国の妊活サービス3選

①Carrot Fertility(米国)

福利厚生として妊活サポートを提供している同社。
創業者のTammyは、Evernoteで働いていた34歳の時、子供ができにくい体質のため卵子凍結。

身体に負担がかかる、仕事の調整も必要。高額な費用は自己負担なことに不満を感じ、企業の福利厚生として起業。

270万まで治療費を一括で支払可能なデビットカードも導入しており、北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国以上で、200社の企業が導入。

シリコンバレーの企業において「家族形成のサポート」は、優秀な人材を獲得するために必須の福利厚生になりつつあるが、同社では体外受精、卵子・精子の凍結、代理母のドナー探し、養子縁組まで広くサポートしている。

昨年、男性向け不妊治療ブランドLegacyとも提携し、同社の会員はLegacyの自宅用精子検査や精子凍結保管サービス等を割引価格で受けられる。
不妊治療が女性のみの課題ではない。

②Future Family(米国)

卵子凍結から体外受精までの不妊治療のサービスを、月額プランで受けることが可能。米国内に多数の提携クリニックを持ち、クリニックへの送客も行っている。

創業者のClareは、1年以上妊娠するのに苦労し、10万ドル以上の費用をかけて妊娠・出産。不妊治療のコストと複雑さを取り除くために、同社を設立。

病院と連携し、すべての費用を事前に確定・前払いすることで、後日費用に驚かされることがないようにしている。

同社のSNSを見ると、LGBTQ+のカップルの写真も掲載。レズビアンとトランスジェンダーカップル向けの体外受精プログラムもある。
同社によると、ミレニアル世代の20%がLGBTQ+であり、77%が親になることを計画しているため、人気のある選択肢になりつつあるとのこと。

③Modern Fertility(米国)

自分で指先の血液を採取するだけで不妊の検査ができるキットを開発。2021年5月に遠隔医療を提供する米ユニコーン企業のRoに買収されている。 

共同創業者兼CEOのVecheryは、自分で妊娠可能テストを受けた際に、1500ドルかかり、かつ検査結果を受けとるまでに1年ほど通院する必要があることに疑問を持ったことが創業のきっかけ。

同社の妊娠可能テストは、自宅で指先の血液サンプルを採取するだけで検査可能。妊娠可能検査のアクセスを容易にしている。

同社を買収したRoは、2017年の創業時は男性向けのウェルネスブランド。しかし現在は女性の健康にも手を広げ、買収により不妊治療など妊活領域にも進出。
Roは買収の2カ月前に、大型の資金調達を実施。このような領域拡大のための買収は、2022年も増えてきそう。

日本企業から見た妊活サービス

日本でもメルカリなどが、福利厚生として卵子凍結サービスを導入しはじめたが、まだまだ発展途上。
筆者が実際に、企業で働く男性や人事担当者から聞いた話しは以下のとおり。

女性から「卵子凍結しています」と言われても想像がつかない

企業で働く男性

他社の福利厚生で導入しているのはわかるが、自社でどの程度使われるのか不明。個人情報なので、何人程度使っているかだけでも知りたいが連携してもらえるのか。

人事担当者

新しい福利厚生の仕組みを導入するのはハードルが高い

人事担当者

個人向け・企業向け、それぞれ課題はあるものの、妊活という機密情報の高いデータをどこまで連携できるのかが、ひとつの課題と感じている。

米国と日本の比較

大学生に、米国の妊活サービスを紹介したときに「さすが米国。なぜ日本のFemtechは米国のように進まないのか」という質問を受けた。
筆者として感じているのは「労働市場・転職・医療費」「価値観」「上場・買収」の3点。

①労働市場・転職・医療費

米国は、日本の2.5倍の人口であり、当然ながら労働人口も多い。さらに転職も活発なため、従業員を福利厚生などでつなぎとめておこうとする意識が企業側に強い。日本のような国民皆保険制度もないため、米国では個人が負担する医療費が高いことも影響している。

②価値観

筆者の知り合いで、事実婚の女性がいるのだが、不妊治療をする病院探しに苦戦していた。日本では、不妊治療=結婚している男女がするという意識がまだまだ強く、米国ほどの理解がないことも影響している。

③上場・買収

先ほど紹介したModern Fertilityもそうだが、米国ではFemtech企業の上場・買収があり、多くの資金が動いている。日本でも、そのような事例が出てくると、より注目度が集まるのではないだろうか。

上場・買収ではないが、日本でもネクイノ社が大型資金調達を実施し、オンラインピル処方の分野のプレーヤーが増えてきた。
ネクイノはオンラインピル以外にも、多方面での事業を展開しはじめており、このような事例が増えてくると、日本市場ももっと盛り上がると感じている。

Femtechイベント案内

①Femtech総まとめ:CES報告&US動向

2月4日(金)8:00~、シリコンバレー在住のお二人からCES報告&米国動向についてお話しいただけるオンラインイベント。
登壇される大嶋さんのFemtechに関する連載は、いつも本当に有益な情報ばかり。直接お話しがきけるのは今からとても楽しみにしている。

②Femtech総まとめ:世界&日本の重要ニュースと動向

2月9日(水)19:00~、世界&日本の重要ニュースと動向で筆者が登壇。
アクセラレータープログラムなどに参加したり、GlobisでFemtechコミュニティを立ち上げた中で気づいた点や、これからFemtech事業を展開しようとされている方の気づきやヒントになる話しができたらと思っている。

③データ取得・解析・活用を加速させるマッチングイベント

昨年、月経管理アプリのClueがデジタル避妊ツールでFDAを取得したが、Femtech業界におけるデータ取得・解説・活用は、今年、最も重要なキーファクターになると感じている。
2月28日(月)19:00~、オンラインとオフラインのハイブリットで開催。
データサイエンティスト・研究者の方は必見なので、ぜひ!