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兄がおしえてくれたこと⑤

兄は、某企業の研究室に
就職していました。

ところが、バブルがはじけて
景気が悪くなったころ

独身でお人良しの兄は
ていよく関連子会社に
飛ばされていたようです。

某企業にずっと勤務してると
思ってたわたしは
亡くなってから
そのことを知りました。

それでもめげずに
兄は置かれた環境で

研究だけでなく
クレーム修理なども担いながら
不器用ながらも
懸命に働いていたようです。


一番驚いたのは、
片付けた部屋の片隅の
積み重なった本の間から

特許を取った時の表彰状の
額が出てきたことでした。

兄の研究した製品が
会社の特許になっていたのです。

それまでわたしたちは
そんなこと知りませんでした。

飾るでも自慢するでもなく
地位や名誉や欲も関心なく…

そんな兄には、少なくても
心から慕ってくれる友人たちがいた…

長く綴られた手紙と
表彰状の額を抱きしめながら

父は、最高の自慢の息子だったと
おいおいと泣いていたそうです。


それから、
三回忌にも七回忌にも
その友人が来てくれました。

十三回忌のときも、
お墓に見覚えのない花が
ありました。

わたしが今亡くなったら
十三回忌まで誰かに
お花をいけてもらえるだろうか…

兄の凄さ、素晴らしさを
今更ながら思い返したわたしは

これからは、兄のように
丁寧に生きていこう

残りの人生は、
自分の気持ちに
素直に正直に生きて

心の通いあう
あたたかい関係を
築いていこう

止まらない涙の中で
そう心に誓ったのです。。。

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