なぜタイトルがunhappyなのか
2/1(金)-3/3(日)まで渋谷交差点の目の前にあるSHIBUYA TSUTAYA7階でzineの販売を行います!
キヤノン写真新世紀2018で優秀賞を受賞した「How to hide my Cryptocurrencies」の中から、「witness」(イスラエル)と「unhappy」(アイスランド)をピックアップし今回制作しました。
カバーは7インチ(18×18センチ)のレコードジャケットで、プリントは全てバラになっていますので額などに入れて飾ることも可能です。
展示では様々な制約もありブックを閲覧不可にしていたのですが、このzineではそれぞれ全ての写真を掲載しています。
遠方の方は通販もご用意しています!
https://www.megumiyamakoshi.jp/shop
さてさて、一体なぜ「unhappy」というタイトルなのか…?と言いますと…
普通タイトルをつけるなら撮影した写真に合うものや、逆にテーマを決めて撮影していくのではないでしょうか。写真家にとって、タイトルというのは写真と同じくらい重要な意味を持っていると思います。
ですがこの作品において、アイスランドを撮影した写真たちのタイトルが「unhappy」と言うのはある意味では偶然の副産物です。
全体の作品のタイトルは「How to hide my Cryptocurrencies」ですが、直訳すると「私の仮想通貨の隠し方」です。
仮想通貨と言うのは、いわゆる目に見えないデジタル通貨で、最近では暗号資産などと呼ばれています。
昨年2月にコインチェック社がハッキングされ、大量の仮想通貨が流出したと言う事件はご存知の方も多いかと思います。
仮想通貨はコインチェックなど取引所のウォレットと呼ばれるお財布にそのまま預けておくことも出来ますが、その危険性からハードウォレットなどインターネットから遮断された環境に移しておくことが推奨されています。
そして自分で設定したパスワードがわからなくなってしまった場合の最後の手段として、「復号鍵」と呼ばれるランダムに生成された複数の単語というものが存在します。
銀行と違い基本的に管理者のいない仮想通貨ではこれを無くしてしまうと誰にも取り出すことは不可能なのです。
そしてランダムに生成された単語たちは一文字でも順番が入れ替わってしまうと別の復号鍵になってしまいます。
記憶しても忘れてしまう…
紙だと火事にあったら燃えてしまう…(自分自身実家が火事になったことがあるので特別な出来事ではない。)
他人に見られてもパスワードだとわからないようにしなければならない… などなど
実在するWAVESと言うウォレットを使用すると生成される復号鍵の単語は全部で15個。
これらの様々な制約がある中で、この復号鍵を「写真集のタイトルにして部屋に隠そう」と言うのがこの作品のスタートでした。
これを15冊のブックにするため、かなり悩みました。(心が折れた時は15枚でいいんじゃないかと諦めそうになりました…ウッ)
例えば14番目の単語はhorseなので、分かりやすく馬を撮ってみるか…
と思ってまず北海道のばんえい競馬場まで撮影に行きました。2日かけて撮影してみたもののなんだかいまいち…。
ぶるぶる震えながら撮影してたのですが、ふと弟の大学進学に合わせて北海道に半年くらい滞在していた時の思い出が鮮明に蘇りました。一度してみたかったリゾートバイトをしてみたり、温泉巡りをしてみたり。
人と言うのは「いつ・どこで・だれと・なにをした」というのが組み合わさるとかなり記憶に残っているものです。
それに気がついてから、私の記憶の中で様々なエピソードがあり、時系列に思い出せる「場所」を撮りに行こうと決めました。
15冊のブックがバラバラになっていても、写真を見れば自分なら必ず順番に並び替えることが出来るという訳です。
5歳の時初めて訪れてから住んだことがあるフィリピンや、初めて訪れたアイスランドなど全部で10カ国15箇所を撮りおろしました。
今回発売するイスラエルのwitnessとアイスランドのunhappyは5番目と6番目の復号鍵です。
イスラエルは実家がクリスチャンで小学校6年生まで毎週教会に通っていたこともあり、絶対に撮りに行こうと決めていました。思春期だったこともあって、中学生になるとぱったり行かなくなってしまいました。
アイスランドはbjorkが好きで、高校1年生の元旦にダンサーインザダークを1人観に行った記憶があります。
そんな様々なエピソードがある「場所」を撮りおろした作品となっています!
(追記)ちょうど写真新世紀公開審査会のレポートが公開になりました。→
https://global.canon/ja/newcosmos/closeup/exhibition-report-2018/index.html
残りのzineも作っていきますのでぜひよろしくお願いいたします。
それでは
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