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「バイリンガル」神話のゆくえ

息子を引き連れニュージーランドに来てからというもの、本当に日々色々な方との新たな出会いがあります。
そんな中で、「子供のうちに英語圏に来れば、子供はバイリンガルに育つのか」「そもそもバイリンガルとは何か」について色々と考えることがあります。

今日はそのことについて。

完璧なバイリンガルはかなりレア

まず「バイリンガル」という言葉の定義は、実はとても曖昧です。

2言語で自由自在に思考したり読書したり話したりできるのがバイリンガルなのか。
一方の言語が優勢で、普段はその言語で思考するが、もう一方の言語でも問題なくコミュニケーションできればバイリンガルなのか。
「問題なく」とはどの程度なのか。

バイリンガルの定義について解説した記事を発見したので貼っておきますが、人によって、国によって定義が違うことがわかります。

また、バイリンガルと一口に言っても実際には様々な分類があり、均衡バイリンガル、偏重バイリンガル、限定的バイリンガルなどと呼ばれているようです。

日本人はバイリンガルの定義を非常に限定的に使い、「両方の言語を同程度に問題なく使用できなければバイリンガルではない」と考える傾向があるようですが、実際にはそのレベルのバイリンガルはかなりレアなようです。
大半のバイリンガルは、どちらか一方の言語が優勢なのだそう。

バイリンガルについての研究は色々あるかと思うのですが、今回は私個人の伝聞や経験則をもとに、なぜ完璧なバイリンガルになるのが難しいのかについて考えてみます。(なお、個人情報は一部変えています)

日本語の読み書き能力の維持は大変

1人目は、小学校入学前に日本からニュージーランドにやって来た9歳の女の子。
日本だと小学3年生の年です。

母親がアメリカ人で父親が日本人のハーフ、家では英語が基本でした。
だから、ニュージーランドに来た時も英語でのコミュニケーションは初めから問題なくできたそうです。

しかし、小学生入学前という日本語の読み書きを学習をする前に来たために、英語がかなり優勢になっているようです。
日本人補習校に通ってはいて日本語の読みはできるものの、書きはかなり難しく、本人も乗り気ではない様子。

ニュージーランドに来て数年経つ最近は、日本人の父親とも日本語を話したがらなくなり、父親が根気強く日本語で話しかけても英語で返ってくるそうです。

2人目は、小学校中学年でニュージーランドにやって来た男の子。
来た当初は英語はほとんど話せず、聞いたら何となく分かるレベル。

ニュージーランドに来て1年経った今、日本語の読み書き能力が明らかに落ちているのを親御さんは実感していました。
こちらのお子さんも日本人補習校に通ってはいますし、家でも日本語の読書などをかなり頑張っているようですが、特に漢字を覚えるのに苦戦しているようです。

ニュージーランドに来てまだ1ヶ月半の私の実感としても、海外にいながら日本語の読み書き能力を維持するのはかなりハードだなと感じています。
日本にいた時は、毎晩寝る前に日本語の本の読み聞かせをして、語彙力をつけてきました。
でも今は寝る前の読書は英語の本になっています。

息子は漢字の学習が好きで、漢字のワークをやりながら「世間話って何?半紙って何?」など私に意味のわからない語彙について聞いてきます。
そこからある程度語彙を増やしているとは思いますが、果たしてどこまで身についているかというと、微妙。

1日は誰にでも平等に24時間しかありませんし、何を優先するかと考えたら、やはり現地の言語を学ぶ方が優勢されてしまいます。

こちらに来てからというもの、息子の日本語力が上がっている感じがあまりしませんし、日本語で文も書いていないので、長くいればいるほど日本語能力、特に読み書きの力は落ちていくのでしょう。

現地の言葉が優勢にならざるを得ない

長年現地で暮らせば暮らすほど、生活で使う言語が優勢になり、それ以外の言語能力は劣勢になっていく。
つまり、使う能力はより優勢になり、使わないものは劣勢になる。

これは、生存戦略という意味では当たり前の動物としての機能なのかもしれません。
そうやって、環境に適応しながら生き延びてきたのですから。

だから、日本語の読み書き能力が落ちていくというのはある意味子供の生存戦略の一つで、悲嘆することではく自然なことなのかもしれません。
子供だって必死に日々、現地に適応しようとしているわけですもんね。

ある親御さん曰く、「ニュージーランドに来て2年。英語ができるようになってきたと思ったら、日本語ができなくなってきた。両立はかなり難しい」

親は子供にどこまで望むか

こう考えてくると、「子供に完璧なバイリンガルになってほしい」という望みはあまり持たない方がいいのかもしれません。

私自身はニュージーランドに来る前は、バイリンガルについてあまりよく分かっていませんでした。
息子が半年ニュージーランドで過ごしたら、どれくらい英語力が伸びるのか?どうすればバイリンガルになるのか?など、よく分かりませんでした。

でも来てみて思うのは、完璧なバイリンガルってそんなに簡単じゃない、ということ。
今は息子に「完璧なバイリンガルになってほしい」とは思っておらず、あくまで第二外国語として本人が困らない程度になってくれたらいいなと思っています。

語学は世界を広げてくれるとても素晴らしいものなので、その楽しさを私と一緒に味わってくれたら嬉しいな。


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