児童手当の特例給付廃止検討から伝わってくるメッセージ

昨日の朝、大統領選挙一色のニュースの中に、目を疑うような衝撃的なニュースが飛び込んできました。
それは「児童手当の特例給付を廃止して、その分を財源として待機児童解消策に充てる」というものです。
不妊治療の保険適用など少子化対策に力を入れている菅政権。まさか…と思ったのですが、NHKによると少子化対策を担当する坂本一億総活躍担当大臣が閣議のあとの記者会見で話したとあるので、すでに一定程度は検討が進んでいるのだと推測できます。

▼児童手当の「特例給付制度」とは?
▼今回検討されている制度変更のポイントは?
▼待機児童はどこにいるのか?
▼この施策から見え隠れする政府のメッセージ

▼児童手当の「特例給付制度」とは?
現行の児童手当制度では、中学校卒業までの子どもに対して以下の表のとおり現金給付されています。

画像引用:児童手当制度のご案内(内閣府)

そして、同じページに「※児童を養育している方の所得が所得制限限度額以上の場合は、特例給付として月額一律5,000円を支給します。」と書いてあります。これが特例給付です。

所得制限限度額は、世帯で最も所得が高い人で計算されますので、例えば夫婦共に600万円ずつ所得がある場合も特例給付は適用されません。

画像引用:児童手当制度のご案内(内閣府)

児童手当の総額は子ども1人あたり約200万円(第3子以降は約250万円)にもなります。15歳までのすべての期間、特例給付だったとしても支給総額は約90万円です。(※子どもの生まれ月によって総額が異なります)

▼今回検討されている制度変更のポイントは?
しかし、今回この児童手当のうち、特例給付制度をなくして、待機児童解消策に充てようということが検討されています。
それに加えて、支給額の算定基準を「世帯で最も稼ぎが多い人の収入をベースにする制度」から「世帯全体の収入を合算する方式へ」変更することが検討されています。

先ほどの夫婦共働きで600万円の所得がある場合だと、今の制度では満額もらえます。しかし、この制度変更がこのまま実施されると0円となってしまいます。
特例給付がなくなるだけでなく、算出基準が変わる。これが今回の大きなポイントだと思います。

共働きが増加し続けている中で、この制度変更が行われると、子育て世代やその下のこれから結婚して子どもを産みたいと考えている世代にとっては、児童手当が今の児童扶養手当(ひとり親家庭の子どもに支給)のようにある特定の層にだけ支給される手当だという位置付けになりそうだと感じます。

画像引用:専業主婦世帯と共働き世帯(労働政策研究・研修機構)

▼待機児童はどこにいるのか?
今回の改革案のポイントは、児童手当の特別給付削減で産み出したお金で待機児童解消をしましょうということ
です。

では、待機児童ってどこにどれぐらいいるのでしょうか?

待機児童のカウント方法をはじめとして、待機児童はまたこの投稿とは別にまとめた方がいいと思うぐらいいろいろ問題があるので、厚生労働省が2018年4月に出した「平成29年10月時点の保育園等の待機児童数の状況について」というプレスリリースからデータをもってきました。

このプレスリリースによると、平成29年4月1日時点で待機児童数50人以上の市区町村は128あります。一方、市区町村は1,747です。待機児童が50人以上いる市区町村は全体のたった7%です。

もちろん、待機児童は少子化対策として優先度高く解決してほしい問題であることには間違いありません。

ただ、待機児童という各地域で格差が大きい問題に対して、児童手当の特例給付削減という全国一律の施策で解決しようというところに違和感があります。

もっと言うと、これだけ少子化が叫ばれているのにもかかわらず、1つ子育て支援策を進めるために、1つ子育て支援策にメスを入れるというのはアクセルとドライブを同時に踏んでいるようなものです。 

▼この施策から見え隠れする政府のメッセージ
「たった5,000円/月がもらえなくなるだけじゃん。ほかの子育て支援策にまわるんだから、別に問題ないんなじゃない?」
もしかしたら、既に子育てを終えた人たちやまったく子育てに関わらない人たちにとって、このニュースはこれぐらいのインパクトかもしれません。

たしかに子ども1人あたりでみれば月5,000円です。金額は微々たるものかもしれません。

でも、もらえるはずだった手当がある日突然なくなる。そんな環境で、子どもを産んで育てようという前向きな気持ちが湧いてくるでしょうか。ただでさえ「子育ては大変」という風潮が強い日本で、政府からの支援策までもいつなくなるかわからない状況では、「リスクが大きすぎる、日本で子育てしたくない」と思う人がさらに増えるでしょう。
今のままでは、口では少子化が重要課題だと言うものの、「子どもを大切にしよう」「子育て世代を応援しよう」という考えがあるとは到底伝わってきません。

実は、安倍政権では、児童手当の増額まで検討されていました。
子どもが大切にされる国、子育てを社会全体で応援しようという国になるように、少なくとも子育て支援拡充のためにほかの子育て支援策を削るなんてことはしないでほしいなと強く望みます。

*おまけ*
残念ながら、子育て中の人たちが一致団結してSNSで声を上げたとしても、一握りの国会議員の目に留まれば良い方。もしかしたら大半の国会議員はこのニュースを知らないかもしれません。
もし少しでも何かできることはないかな?と思ったら、ぜひ選挙区の国会議員に声を送ってみてください。
同時に、政府にパブリックコメントを送るということもできます。今回だと内閣府が担当だと思います。

その時に、もしこのnoteが参考になれば…と今回は書いてみました。

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