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「産休・育休中のリスキリング」は、後押しすべき?

先週金曜日(1月27日)の参議院本会議でびっくり仰天な質問が飛び出し、話題になっています。

岸田総理は施政方針演説において、「構造的な賃上げ」政策の一環として、新たな分野で活躍するための能力・スキルを身につけること、いわゆるリスキリング支援を位置付けておられます。(中略)岸田総理、ぜひともご検討いただきたい新しいリスキリング案を、私からお示しいたします。
子育てのための産休・育休を取りにくい理由の一つが、一定期間仕事を休むことで昇進・昇給で同期から遅れを取ることだと言われてきました。
しかし、この懸念を乗り越えるために、産休・育休の期間にリスキリングによって、一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップが可能になることも考えられます。
https://www.jimin.jp/news/policy/205091.html

それに対して岸田総理は、「育児中などさまざまな状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししていく」と答弁。

今日(1月30日)の衆議院予算委員会では、自由民主党の鈴木貴子議員からリスキリングに問われて「あらゆるライフステージで、本人が希望した場合には、それに取り組める環境整備をすることが大事だという趣旨だ」と答弁していました。

私は、「学び直しをしたい人がその希望をかなえられるように環境整備すること」は重要だと思います。なので、今日の岸田総理の「あらゆるライフステージで」「本人が希望した場合」という方向性は賛成です。

でも・・・産休・育休中のリスキリングをというのは「何を言ってるんじゃ」という気持ちがいっぱいです。

私自身が、長男の出産後、ちょうど3週間で大学院の入試を受けに行き(里帰り先から1泊2日)、かつ長男が生後6か月の時から修士課程に入学しました。そして、大学院在籍中に、次男を妊娠・出産。まさに2人の乳幼児を抱えながら修士論文を書き、小さい頃から目標にしていたNGO業界に転職しました。

ここまで書くと、「え!政府が推したいリスキリングの成功例では」と思われる方もいるかもしれません。でも、私は大学院入学直前に退職し、大学院生となり、保育園に預けて修士課程に通いました。

保育園に預けているからといって、子育て・家事と学び・研究の両立は容易ではありませんでした。
課題図書や文献を電車で読み込み、電車の中で鬼の形相でレポートを書く日々。夜泣きすれば抱っこ紐で抱きかかえたまま、立ちながら。休日に子どもたちが遊んでいる時には室内用ジャングルジムにダンボールをひいてその上でPCと資料を広げて。保育園の送迎時は、自転車を漕ぎながら音声入力で修士論文を書いていました(笑)

大学院生2年目だった第二子妊娠中には、おそらく過労で倒れ、救急車で運ばれて入院もしています。

それでもできたのは、自分がやりたいからやっただけ。誰かに強制されたわけでもなく、純粋にやりたかったから、やり切れたんだと思います。

それに加えて、子どもが極めて健康だったこと、家族のバックアップがあったこと、保育園に入れたこと(これが重要)などなど幸運が重なっていました。

産休・育休は、「休業」という言葉が示すように、仕事を休んで子育てに専念できる限られた貴重な時間です。

妊娠出産したときから、子育てという途中で止まることの難しいマラソンが始まります。赤ちゃん(こども)の視点から考えるなら、赤ちゃんはほっておくことはできません。親は、初めての連続を、いろんな人の手を借りながらやって行くことで、親になっていくのだと思います。

その中で、いろんなラッキーな条件が重なって、かつ「自分は誰から強制されることなく学びたいんだ!!」という人はじゃんじゃん時間を有効活用し勉強したり学校に通い直したらいいと思います。それは、今から税金を注ぎ込んで制度を整えなくても、やりたい人はやります、以上!でいいと思うのです。それができるのは一部の幸運に恵まれかつ体力おばけの人だけです。
(私が敢えてこう書くのは、「会社からやれって言われてるし、〇〇したら給料アップすると言われてるしな」と自分への義務になった瞬間に、それができないとイライラが募って、優先順位が逆になり、結果的に子育てのための休業期間にならないだろうなと思うからです)

子育てをしながらリスキリングをするためには?

ちょっと「ここは可能性があるかも!」と思っているのは、産休・育休は育児のために取得した上で、子育て中の人もリスキリングしやすくするにはどうしたらいいかという視点です。

そもそも、リスキリングという言葉が一人歩きしていて、かかる時間も難易度もごちゃ混ぜに「学び直し」としてなってしまっているのも問題だと思います。学位取得なら2〜5年ぐらいかかりますが、「TOEICで100点上げたいんだよね」や勉強時間が比較的少なくて取得できる資格もあるでしょう。

ここからは、学位取得や数年かかる国家資格(少なくとも1年かがり)のことに限定して、私がもしこの政策を決められるのならば、以下の政策を提案します。

・休職&短時間勤務の取得を学び直しのためにも取得できるようにする。終了後は同じ職場に戻る権利を保障。その期間の給与も100%になるように国が補償する。これは子育て中の人も、それ以外のあらゆる人もあらゆる人を対象にします。
子育てをしながら、休日に勉強…は子どもが複数いるとかなり厳しいです。睡眠時間を削ってやっている人も多いはず。その分たとえば、平日毎日1時間だけ早く帰って勉強に充てられるとか、1年だけ休職するとかできたらいいなと。もちろん、子育て中の人だけでなく、リスキリングを支援するなら対象は全ての雇用されている人です。

・保育園(一部学童保育)の就労要件を外す。
仕事をしていないと保育園に入れない仕組みを変え、妊娠出産で仕事を辞めてしまった人や育休後にリスキリングをしたい人も保育園に入れるようにする。週5日預けなくても良いこととする。学童保育で就労要件があるところは同様に。

・産後ケアの充実(産後ドューラや産後ケア施設の利用に助成)
・子育て期の家事代行やベビーシッター、一時預かりの拡充
子育て中の人が学ぶための環境整備という文脈でこれは欠かせないです。

・高等教育の無償化もしくは学費の減額
子育て中の人が大学・大学院に行こうと思っても、「子どもの教育費もあるのに、自分の学費なんて払えない!」という状況になることは容易に想像できます。

・長時間労働の是正
仕事をしながら学べるように慢性的な長時間労働を是正する(が、この点については働きたい人もいてインターバル制を敷いてすべでの人が長時間労働できなくするのはどうなんだろう…思っています)

とここまで書いて、一つ疑問が。
学び直しをして、キャリアアップって一つの企業・団体の中でできることじゃないと思うのですが、転職がもっと流動的になるということセット(かつ転職の際は必ず給与が上がるというルール)じゃないと、そもそもリスキリングした人とといろんな事情でできない人の間でますます格差が広がりそうだと思いました。

あと、たぶん第一子は増えるけど第二子以降「産みたい」と思う人減るのでは。(子育てと勉強、仕事の両立は支援があってますハードモードすぎるから)

ここにいくら予算を投入するのかわからないけど、こどもまんなかど直球の施策とパッケージで進めてほしいものです。



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