THE FIRST FINAL
SHUNSUKEは朝からバタついたようで「今日は7時40分集合で、7時に起きて、コーヒーを入れて覚醒させてきました。でも朝なんで、ろれつが回ってないですね(笑)」と話し、BE:FIRSTのSOTAは「まだ朝8時半だけど元気です!」と笑顔を見せた。 現役中学生のTAIKIは「一日中動いてアドレナリンが出まくって、絶対に寝られないと思っていたらすんなり寝られました」とはにかみ、「全然疲れてないです。楽しみが勝ってます!」と胸を高鳴らせた。
『THE FIRST』参加者とはひと味違う独特の緊張感をまとっていたのは、“BMSG最初のふたり”であるNovel CoreとSKY-HIだ。
Novel Coreは「『THE FIRST』のメンバーとは違う特別な感情で、ステージに挑んでいる感じがある。昨日もいろんな感情があふれ出ていた」と明かし、SKY-HIは「アリーナいっぱいのお客さんが自分たちを迎え入れてくれる環境に、みんな昨日より慣れると思うので、何が出てくるか楽しみ」と話した。
何度となく行われてきたリハーサルも、いよいよ今回が最後。『THE FIRST FINAL』パーカーに身を包んだメンバーがステージに並ぶと、SKY-HIは次のように挨拶した。
「突貫工事だったにもかかわらず、こんなに素敵なステージを作っていただいてありがとうございます。出会って1年足らずの僕たちですけど、そんじょそこらの10年、20年よりも濃い時間を過ごしてきたと自負しております。すべてをぶつけて、みんなの記憶と歴史に残るようにがんばりますので、何卒、『THE FIRST FINAL』を最後までよろしくお願いいたします」
SHUNTOは、「休憩する間もないまま、ずっと進んでいく感じなのが見どころじゃないかな。『あのころはこうだった』『今はこうなった』と感じられるというか」と話した。そのあとに現れたAile The Shotaは同じ質問に、「僕たちが過ごしていた時間に一瞬でタイムスリップしてしまうような、あの空間と感覚を一緒に味わえるライブになっていると思います。ぶっちゃけ、ライブ中どこでも泣ける。一生、エモいじゃん」と笑顔で答えた。
『THE FIRST』の“卒業式”である『THE FIRST FINAL』も、この夜公演でついに終わりを迎える。参加者全員で円陣を組むと、SKY-HIはメンバーに次のようなメッセージを送り、最後には気合いを入れた。
「いよいよラストです。これが終わったらそれぞれの人生があると思うんですけど、いつでも振り返るところにこの素敵な一日があったということは、今後の人生でとてもいい方向に作用すると確信しています。5年後あたりにみんなでもう一回この映像を観て、エモ散らかしましょう。それまでいい人生を送れるように、今日がっちりアクセルを踏むので……行くぞ! THE FIRST!」
“卒業式”を前に、参加メンバーの気合いもじゅうぶん。SOTAが「悔いもだし、何も残してこないように、全部出してきます」とコメントすれば、JUNONは「『THE FIRST』はいったんおしまいですけどなくなるわけじゃないし、最後の最後でいいものにできたらなって思います」と話した。
この公演限りのサプライズが行われたのは、「14th Syndrome」と「me time」のときだった。「14th Syndrome」のパフォーマンスが終わり、これまでどおりステージからはけようとするedhiii boi&TAIKI&RUIに向かって「ストップストップストップ! 待ってって(笑)」と声をかけるSKY-HI。
すると「預かりものがある」と言い、『THE FIRST』合宿3次審査合格メンバーに渡された青いラバーバンドをRUIに贈ったのである。つづけて「1個飛ばして青でごめんね」と、TAIKIにも同様のラバーバンドが贈られた。さらにedhiii boiには「(「118」の歌詞で)<遅れて貰ったフーディーにはname>って言わせちゃってるからさ。間に合わせたぜ!」と言って、名前入りのBMSGパーカーを手渡した。
プレゼントをもらった3人は、ステージ裏に戻ってからも心底うれしそうだった。RUIとTAIKIはイスに腰をかけながら仲よくリストバンドを眺め、パーカーを着用したedhiii boiは「どうすか?」と得意げに笑みを浮かべる。さらに、「こんなに自分を思ってくれる事務所や社長って、本当にいない。世界で比べてみても、こんな素敵な居場所を作ってくれる事務所なんてない」とBMSGやSKY-HIに対する感謝を語った。
「me time」のパフォーマンス終わりでは、名前入りのBMSGパーカーをAile The ShotaにプレゼントしたSKY-HI。「SHOTA」パーカーがお蔵入りになり、「Aile The Shota」パーカーを新調したと明かした。舞台裏に戻ったAile The Shotaは、「これはやばい。うれしいなあ」と喜びを嚙み締めていた。
そして、大トリの「To The First」を全員でパフォーマンスして、『THE FIRST FINAL』は閉幕した──。
バックステージで最後の集合写真を撮り終えると、SKY-HIは「出会えたのは本当に君でよかったです。本当にありがとうございました」と参加メンバーたちにリスペクトと感謝の気持ちを伝え、頭を下げた。
それが合図だと言わんばかりに、「帰れると思ってます? 胴上げですよ。これをやるために集まったんです」と声をかけるLEO。「マジで落としちゃダメだからね。振りじゃないから」と入念に前置きをして、出演者全員でSKY-HIを胴上げした。「生きているとこういう日もあるんですね」と、SKY-HIは感慨深そうにぽつりと漏らした。
『THE FIRST FINAL』を終えた直後、各メンバーは以下のように感想を述べていた。
MANATO パフォーマンス中もそうだけど、最後に限って「FINAL」って言葉が頭に何回も出てきちゃって。今までにない変な感覚。ちゃんとパフォーマンスもしていたけど、感動もすごくて……一生味わえないだろうなって思います。
JUNON 最高でした。たぶん走馬灯に出てきます(笑)。本当に忘れることのない2日間でしたね。もともと何があった人間でもないのに、こうやってオーディションをきっかけに応援してもらえるようになったのが、すごくありがたいです。
SOTA こんなにやる価値があるライブはないと思います。重要度は卒業式と同じくらいですね。「これがないと次に行けないな」って、終わってから身に染みて感じています。(SKY-HIが)「伝説に残そう」と大きいことを言ってくれていたんですけど、実現できたんじゃないかな。
Novel Core BMSGに誘ってもらったタイミングで「こういうことをやろうと思っている」と『THE FIRST』の構想を聞いていましたし、僕もSKY-HIさんの「日本を揺らしにいく」という言葉を信じてついてきました。自分は直接的に『THE FIRST』のストーリーに入っていた人間ではなかったので怖いこともいっぱいあったんですけど、みんながこうやって仲間として受け入れてくれて、『THE FIRST』のストーリーの一員にしてくれたことがすごくうれしくて、号泣してしまいました。
SKY-HI「みんなでみんなの人生を応援し合っていた」
『THE FIRST FINAL』を完遂した今、SKY-HIは何を感じ、何を考えているのか。その心境を聞くために、インタビューが行われた。
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──ステージを終えた、今の心境は?
SKY-HI 感慨しかないですね。『THE FIRST』そのものや『THE FIRST FINAL』を作った人という責任があったので、終わるまでは感慨にやられないように気をつけていた節があったんです。みんなはいくら泣いてもいいけど、今日のライブに関して俺は絶対に泣いちゃダメなやつだから、気が張っていたところもあるのかな。今は安心も込みで感慨が深いけど……やっぱり一番は感謝かな。
NAOKIがいなかったのは本当に残念だけど、その場に誰が居た/居なかったではなくて、気持ちの面でこれだけみんなが同じ方向を向けるっていうのは、夢があることだと思わないですか。「今の日本に必要なこと」だと言いつづけてきたけど、それが証明できたと思うし、パフォーマンスだけでなく、心持ちも含めてみんながいてくれたことで証明できた。……本当に感謝しかないです。
しゃべってるときとか「本当にこのみんなでよかった」って、すごく思う。入る高校によって人格が変わってしまうように、人ってびっくりするくらい環境によって変わるじゃないですか。(『THE FIRST』が)彼らをあんな素敵な人にできる環境だった、と間接的に証明されてしまった。それについても感謝しかないし、彼らと一緒に歩いてこれたこの1年に強く深く感謝しています。
──いちファンとして、『THE FIRST』の物語をどう見ていましたか?
SKY-HI 「事実は小説より奇なり」って、よく言うじゃないですか。「本気はマンガより熱い」でどうですか? 最近は変わってきたと思うんですけど、自分の世代にはわりと顕著に「本気にならないほうがクール」みたいな、“熱い”ことが時代遅れだった時代が確実にあって。
マンガにあるような「ケガしたキャプテンが9回裏ツーアウトで打席に間に合ってホームランを打つ」なんて「作り物じゃん」って思うこともあると思うんですけど、本物の人生は取り返しがつかないし引き返せないから、本気になったときの“本気の度合い”、それだけはフィクションには出せないものだと思うんです。フィクションにはフィクションのよさがあることはじゅうぶんわかった上で、どうしてもフィクションには出せないものがあって、それが込められていたかな。本当……“マンガみたい”だと思う。
──『THE FIRST』という物語が完結を迎えます。
SKY-HI マンガは完結するけど、人生は完結しない。観にきてくれていた人も含めて、一人ひとりの人生は、『THE FIRST』が終わった今日から次の人生に進んでいる。BE:FIRSTは新曲をやって終われているので、次の一歩は明確。アルバムを作らなきゃいけないし、ツアーもやらなきゃいけない。ほかにもやりたいことがいっぱいあって、彼らにもやりたいことがたくさんある。
BE:FIRST以外の面々は、この瞬間から彼らの人生が新たなステップに入っているので、次があるよね。最終回で終わりのことなんて、現実にはないから。マンガだとあったとしても「最終回、その後」くらいだけど、こっちは「最終回、2分後」。リアルにはこれがあるんで。明日にはこの2日間を終えたあとの彼らの1日目が始まるわけだし、そこでドラマが生まれるかどうかは“本気”っていうところにかかってくるんじゃないですか。俺はみんなに対して本気だし、彼らも自分の人生に対して本気だし、何かが起こらないことは絶対にないと思います。
──次に思い描いているビジョンはありますか?
SKY-HI それは、いっぱいあります。個々人なのかもしれないし、集団なのかもしれないし、さまざまな輝き方をしている人が集まる場もそうだし、いっぱい考えてはいますね。楽しみにしていてもらいたいな、と思います。
──今後、『THE FIRST FINAL』のメンバー全員が集まることは?
SKY-HI 「『THE FIRST FINAL』を完全再現する」みたいなことはないと思います。このみんなが集まるのは、たぶんこれが最後ではないかな。ただNAOKIとやれなかったから「何かNAOKIとやりたいな」とかはありますけど、どこかのタイミングで全員を集めても「今だったら何やる?」ってなっちゃうじゃないですか。たとえ求める人がいたとしても、もう一回同じことをやってしまうことは、やればやるだけ今日の感動も薄れていくと思います。『THE FIRST』のことを大事に思っているからこそ、焼き直しみたいなことをするつもりはないです。
ただたとえば、俺とNovel Coreは年に1曲くらい一緒にやる曲が増えていってるから、ふたりで一緒になったときにやる曲があるし、そこにedhiii boiとSOTAがいたら「118」もできる。きっと、そうやって広がっていくのだと思うんです。そういう広がりが増えたら、“結果としてみんなが集まっている”ということはあると思います。
結局それは、俺や彼らが今後も音楽に対して本気でいつづけられるかどうかにかかっている。最年少のTAIKIも言ってたんだけど、みんながバラバラの道へ行くかもしれないけど、それはそれでいいと思うんです。その人が幸せでいられる人生が一番なので、だから「またこれをやるために俺はがんばるぜ」とは絶対に言えない。結果的にまた集まれたら素敵なことですけど、それよりも自分自身だったり、彼ら自身だったり、自分から彼らだったり、そして何よりも音楽に対して誠実に生きたい。
──応援してくれたファンに向けて、メッセージをお願いします。
SKY-HI 「本当にやりたいことをやっただけ」という前提がありつつ、『THE FIRST』みたいなことを本気でやったら絶対に素晴らしいものになるとは思っていました。応援してくださっている皆さんは「素晴らしいものを作ってくれた」「素晴らしいものを観られた」と思ってくださっていると思うんですけど、『THE FIRST』があふれる有象無象のエゴではなく人の心や本質を掴むエゴで、素晴らしかったと証明できたのは、応援してくれた皆さんが「素晴らしい」と思ってくださったから。
今日はなおさらフィジカルでもそれを感じてしまったけど、けっして現場に来なくても、けっしてすべてのエピソードを穴が空くまで観ていなくても、最近知った方でも、2021年の4月からずっと観てくださっている方でも、「素晴らしいな、これは」と思ってくださったすべての方々の力で、今の影響力や数字・実績みたいな形に残るもの、記憶だけではなくて記録に残るものがたくさんいただけた。それは本当に皆さんのおかげです。『THE FIRST』を素晴らしいものにしてくれて、ありがとうございます。
もうひとつは、オーディションで誰が落ちるとか受かるとか関係なく、みんなでみんなの人生を応援し合っていたのが『THE FIRST』。だから、僕や彼らは観てくださっている皆さんのこれからの人生を応援します。みんなで応援してくださって、『THE FIRST FINAL』までできたんだから、そのぶんみんなの人生を本当に応援したいと思っているので、お互いにいい人生を歩んで、夢の向こうでまたお会いしましょう。