危機管理広報について学んだことをまとめてみた!
こんにちは、カンム 広報のミヤモトです。この記事はカンム Advent Calendar 2023の16日目の記事になります。
今年も世間でいろんなニュースで賑わい、一部では「危機管理広報」の重要性を感じる機会が多い1年でしたね。私自身、過去に経験がある危機管理広報に関して、この機会にまとめを書いてみたいと思います。皆さんに危機が訪れないことを願いつつ…。
危機は突然やってくる
ある日、突然メディアから「◎◎について取り上げさせてほしい」などと連絡があり取材を受けたら、放送後に事前説明と全く異なる形で編集されて放送されていた!という事例も耳にします。
放送される前に未然に気づければいいのですが、基本的にテレビ放送は事前に放送内容の確認はできませんし、本当の取材意図を隠されてしまうと気づけないということはあると思います。
どうしたら未然に気づくことができるのか。私が尊敬するセイビー社 広報の岩熊さんは数ある修羅場を潜り抜け、宣伝会議などでも講師をされる大ベテランの方ですが、危機対応時の私にこのような言葉を贈ってくれました。
メディアとは決して友達のような馴れ合いではなく、真剣に勝負する相手という意識で気を抜くことなくコミュニケーションをはかっていくことが大事だと伝えてくれています。「最高の準備をして、“失敗出来ない”という緊張感とリスペクトを持って挑む」とも仰っていました。
以前、私自身も事前の取材意図とは全く異なる放送になりそうな事態に遭遇したことがあります。事前に察知できたため、事実確認・交渉を行った上で放送そのものを一度取りやめていただいたことがありました。とはいえ、世の中にはよりハードな果し合いをした事例があります。
【果し合い事例】“不適切動画”で一斉休業。1億円損失も高評価
セイビー社 広報の岩熊さんは、過去に広報として勤めていた大手飲食チェーン店で、突然の“不適切動画”の拡散に遭遇。アルバイトの店員による悪ふざけが拡散されたことで、国内350店舗ものお店を一斉休業。売り上げは1億円ほど減る見込みとなりました(2019年当時)。
1億円もの売り上げが減るとしても、信頼回復に努める誠実な企業姿勢を貫き、記者会見まで行ったことで、一般の世間の方々から理解や賛同を得ています。大きな危機をチャンスに変えた、その手腕に各所からも「お見事」など多数の称賛の声が上がりました。
まさに企業として真剣に果し合いにのぞんだ結果であり、「気の毒だ」「素晴らしい英断だ」と、世間を味方につけることができたのも、痛みを伴った決断があったからこそ。危機管理対応の鑑という言葉すらチープに感じてしまうほど素敵な対応でした。
平時から危機管理広報の体制構築を行う
とはいえ大抵の場合、果し合いの準備には時間がかかります。でも危機はある日突然、やってくるかもしれません。一般的には「最初の情報開示は8時間以内に」など、準備万端にするまでにはあまりにも短い時間で対応が迫られることになります。そこで、平時から準備しておいた方が良い内容で思いつくものを書き出してみました。
①考えられるリスクの洗い出し
ステークホルダー別のリスクの重要度や発生頻度の分析・予想。想定したリスクの管理・把握。
②危機発生時のフロー構築
どのタイミングで危機対策委員を発足するのか。その委員に入るメンバーは誰か。誰の判断で、誰が指示出しを行って改善策対応していくのか…などを社内でコンセンサスを取っておく必要があります。危機対応に不慣れなスタートアップ企業の場合は特に、「この件は誰が責任を持って実行する」を決めておかなければ、いざと言う時に組織が機能不全に陥ってしまう可能性があるので、事前のフロー構築はおすすめです。
③代表や役員陣のメディアトレーニング
普段の取材におけるメディア対応はもちろん、危機時のための謝罪会見トレーニングを定期的に実施しておく。本番の会見時さながら、スーツを着てもらい、記者役の人から集中的に質問攻めにされる訓練をしておくことで、危機時に焦らずに済みます。
以前在籍していた会社では、公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ) 元理事の鶴野さんに謝罪会見トレーニングをお願いしました。初対面の記者役の方に矢継ぎ早に質問していただきましたが、社内の人員だけでは出せない緊迫感を経験した経営陣からは「やってよかった!本当にありがとう!」と言ってもらえるぐらい大好評でした。
ちなみに今月発売の月刊広報会議の巻頭特集で、1年を振り返る危機管理の記事を書いてくださっています。気になる方はぜひご覧ください。
④危機時に必要になる判断軸構築
報道リスクレベルを予め決めておき、そのレベルに応じてどのような策を行うのかをまとめた軸を作っておくと、何かあった時にその内容をカスタマイズして使うことができて大変便利です。
右列にはメディア対応例の他に、SNS対応やIR対応、記者会見対応など含めて会社に合わせた対応例を記載しておきます。
⑤考えられるリスクで最も危険度の高い内容を把握し、想定QAの準備
あらかじめ、叩きを作っておくことで冷静に判断ができます。また、日頃から法務部門などとやりとりを行なっておくことで、実際に危機が発生した時にスムーズに連携できるようになります。
危機対応真っ最中。どんなことをしているのか
危機対応はスタートアップ企業であればつきものです。特に新しいことに挑戦しようとすればするほど、これまでの常識とは違うものであればあるほど、そのリスクは高まります。
危機対応は悪いことばかりではありません。世の中の声と自社の認識が乖離しているのであれば、世間の皆さまの反応を元に、よりサービスなどを改善した上で、受け入れてもらえるチャンスになり得るのです。
とはいえ、渦中の栗状態では、考えることがいっぱいでジャッジミスも起こりやすい状況です。具体的にどのような対応をするのかを、頭に入れておくだけでも役立つと思うので、思いつく限り、洗い出してみました。
社内外のステークホルダーとのやりとり
メディア、関係会社などとの電話やメールのやりとりが毎日頻繁に、何度も何度も発生する
世間の皆さまと自社の間に認識のズレがあれば埋めるコミュニケーションを行う
想定の最悪のシナリオを予想してつくる
どのようなルートを辿って、どのような最悪なシナリオになるのかを複数用意しておく
例:記事化される→SNSで炎上する→炎上をした内容のまとめ記事ができる→そこから専門メディアに飛び火する→他多数のメディアが追随する→ブランディング棄損して売上低下などの影響が出る
会社としてのゴールを決める
上記でどのような状況が起きそうかを洗い出した上で、その時々に合わせた危機対応における理想的なゴールを決める
会社として一番大切なことは何かを言語化する
当該事象における危機対応のミッションを決める
想定Q&Aの作成
会社としてお伝えすべき内容を整理した上で法務や事業部など関係各所に確認を行う
改善策が必要な場合は改善策を検討
決済者とそのチームに、期日までに改善策内容を具体的に提示してもらう(文書として落とし込んだ際に、質問が来ても答えられるぐらいの詳細なレベルが望ましい)
世の中の声と乖離しそうな場合には、広報が外部の目線を伝えた上で再検討などを依頼する
情報発信のルールメイキング
未解禁情報を外に出さないように社内に情報の取り扱いやSNS発信などへの注意喚起を行う
メディアに向けた回答準備
会見対応なのか、書面回答なのか、オンレコでの取材対応なのかによるが想定Q&Aのほか、メインスピーカーの選定、会社として伝えたいキーメッセージの作成など
(必要に応じて)リリースなどの発信準備
メディアで掲載・放送された内容に誤りがあり訂正が必要な場合、意図しない形で編集をされて本来伝えるべき内容が伝わっていない場合、謝罪すべき事象である場合など、状況に応じて
などなど、盛り沢山です。私は、これらを通じて脳が溶ける感覚を体感しました。脳みそがじんわり熱くなるような・・(苦笑)。
重要なのは社内の意思
これまで色々なことを書いてきましたが、重要なのは社内の意思だと思っています。どれだけ小手先のテクニックで上手く対応をして未然に防ぎ続けても、強制的にその時が訪れてしまうことはあるからです。
そのためには、常に「自分たちばかりに目線が向いていないか」という社外の目線を、普段から社内に向けて伝える必要があると思います。
世間の目から見て、自分たちの考えていること・やっていることはズレていないのか。ズレているのであれば、その理由は何か。世の中に新しい価値観を浸透させる目的であえてズラしているのであれば、今後どのようなタイミングで、どのように説明していこうか…など。
重要なことは、広報側から課題提起して考える機会を設けて、社内の意思決定に関わっていくことなのだと思います。
終わりに
ちなみにカンムの場合は、もし仮に今後危機に見舞われるようなことがあったとしても、自浄作用が働くのではないかと思っています。というのも、透明性の高い環境を経営陣を含めて誰もが意識していて、年次やポジション、役職に関係なく自分の意見を言える社風だからです。それに甘んじることなく、広報として外部の目線を社内に伝えていけるように頑張ります!
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