眠っているはずの我が子を覗く時眠っているはずの我が子もまたこちらを覗いているのだ
娘が常時つけているサチュレーションモニター、これは娘のSpo2つまり血中の酸素濃度と心拍数を示しているのだけど、その心拍数を見ると娘が眠っているかは私には大体部屋を覗かなくてもわかる。
娘が眠る時に必要な呼吸器、これは眠ると止めてしまう娘の呼吸を助けてくれる機械で、肺へ送り込む空気の漏れ出るシューシューという音がするのだけど、この音の具合で娘が眠っているか、私には大体部屋を覗かなくてもわかる。
あと、アレ、まぁ、なんとなくわかる。
母の勘。
とにかく。もう眠っているはずだ。
医療的ケア児であるうちの娘を寝かせる前にはちょっとした準備が必要だ。
眠気に負けて眠ってしまった子に優しく毛布をかけ頬を撫でながら
「あらあら、眠ってしまってしまったのね。ふふ。おやすみなさい。いい夢を(チュ)」
というわけにはいかないのだ。やりたいけども。
いやいやまてアンタ寝てしもたら呼吸忘れるやん!
呼吸器つけな寝かせるわけにゃいかんのよ!
呼吸器つけるためカニューレを挿れなあかんねん!
ああ、ちょっと待って寝る前に浣腸してお腹しっかり動かさなまたすぐしんどくなるで!!
ちょちょ、ちょっと待ち!!まだ寝たらあかん!!
とまぁ、こんな感じだ。
あんなに眠たがってたしすんなり眠っただろう。眠ると下がる心拍数も既にこんなに低い。
呼吸器の音も規則正しく、ペースも落ちてる。
あとはアレ、なんとなく、もう眠っているだろう。
母の勘。
灯りを落とした部屋の中に入りそーっと娘の顔を覗き込む。
暗くて見えないな。
だんだん目が慣れてきて娘の顔が見えてきた。
と、目が合う。
(ヒィ!)
声にならない声を上げてビクーーーーンとなる私を見つめて娘が微笑む。それはそれはいい顔で。
やめてよ。言ってよ起きてるなら起きてるって。
いや喋れないんだったわうちの子。
声も出ないんだったわ。
とにかく。
起きとるやないかーい。
母の勘とは。
眠っているはずの子を覗く時、眠っているはずの子もまたこちらを覗いているのだ。
いや、もう、寝て。
いただいたサポートは娘の今に、未来に、同じように病気や障害を抱えて生きる子達の為に、大切に使わせていただきます。 そして娘の専属運転手の私の眠気覚ましのコンビニコーヒーを、稀にカフェラテにさせてください…