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狙いは低所得者? 快進撃のアメリカ激安スーパー
2月24日(土)TOKYO FM, TOKYO NEWS RADIO LIFEでレポートした内容に、加筆再構成しています。
東京首都圏の方はラジコのタイムフリーで、それ以外の日本の方エリアフリーで、3月1日(金)まで聴けますので、ぜひチェックしてくださいね。
https://radiko.jp
TOKYO NEWS RADIO~LIFE~
で検索お願いします。
日本以外の方はすみません。ここで読んでください!
記録的な株高でもニューヨーカーの半数以上が低所得者
NYダウの話題が初の3万9000ドル台となり、日本もアメリカも「史上最高値」で盛り上がっています。
ただ、株価も含めアメリカ経済は世界で唯一、拡大傾向にあるにもかかわらず、一般市民にその恩恵は届いていません。
インフレは一時に比べるとかなり落ち着いてはいますが、家賃など住居費は依然上昇していて、食品価格も、高止まりしつつジリジリ上がっています。
昨年末に、富裕層以外のアメリカ人の暮らしは、今年前半むしろ苦しくなるだろう、という話をしましたが、確かにそうなっている感じがします。
ニューヨーク市では先日、過半数の市民が貧困か低所得者、特に子供の4人に1人が貧困、というショッキングな統計結果も発表されました。
貧富の差が広がると同時に、中間層が貧困レベルに落ちてきているんです。そういう中で注目されているのが、「激安スーパー」。ニューヨークだけでなく、アメリカ中で快進撃を続けています。
ニューヨーカーに人気ナンバーワンのスーパーは?
まずニューヨーカーはどんなスーパーで買い物しているか?街で聞いてみたところ、
圧倒的に多かったのが
「トレーダー・ジョーズ」
みんな口々に「安くていい!」と言っていました。確かに他に比べて1〜2割安い。私もよく行きます。
この「トレーダー・ジョーズ」カリフォルニア発で、全米に570店舗を展開。
ただニューヨーク市内には9件しかない。それでも わざわざ地下鉄に乗って買いに行く人もいるくらい人気です。
並べられた商品のほとんどが、プライベート・ブランド。オーガニック食品も充実しています。
おかげで安いだけではなく、質も他のスーパー以上という声も。ここだけでしか買えないユニークな季節限定商品などでも支持されています。
ただトレーダー・ジョーズは激安スーパーという感じではありません。
急成長する激安スーパー
Aldi アルディ
より激安を求める人に人気急上昇なのがこちらです。
「ALDIアルディ」というお店。
アメリカで最も成長しているスーパーと言われ、現在、全米で2500店舗を展開。今年前半だけで120店舗増やす計画です。
ただしニューヨーク市内にはまだ2店舗、しかも中心部ではないためまだあまり知られていません。
インタビューに答えてくれたニューヨーク大学の学生は、「とにかく値段が安い。自分のように限られたお金で生活する学生にとっては、とてもありがたい店。」と言っていました。
どのくらい安いかというと、例えば朝食に食べるシリアル、普通のスーパーだと一箱7ドルくらいのものが、こちらはプライベートブランドですが、半分くらいの値段で買えます。
私の感覚では他も3〜4割は安い感じがします。
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ここも生鮮食品以外はプライベートブランドで、限られたスペースに商品の種類を限定し、コストを抑えていいます。しかも、商品は全て運送用の段ボール箱に入ったまま、積み上げられています。こうすることで人件費も最小限に抑えているわけです。
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ただ、食品などは商品の質という意味では、値段に見合ったそれなりのクオリティだと思います。
また、激安だけにサービスもよくない。先日取材で行った時は、レジが2つしか空いてなくて40人くらいの列ができていました。
人件費を削って、サービスが悪くて、質はそこそこでも、安いから売れる。利益も上がるというわけで、それだけお財布事情が厳しい人が増えているということの現れですね。
異常な増殖?を見せる激安店
ダラーストア
実は激安という部分では、この「ALDIアルディ」どころではない、
とんでもない成長を見せている激安店があります。
ダラー・ストア(1ドル・ストア)というコンセプトの激安チェーン店です。
1ドルストアというと、日本の百均を連想するかもしれませんが、全然違います。
アメリカのダラーストアは、どこにでも売っているような日用品 洗剤とかトイレットペーパーや食品が並ぶ激安店で、ダラーと言っても、商品単価は1ドルから10ドルほど。
地方の辺境地区や、都市部の低所得者が多い地域、つまり他のスーパーが進出したがらないような場所にオープンし、急激に成長しています。
ダラーストアには3つの大手チェーン店があり、2022年現在、全米でトータル3万7000件。
1年で2000軒以上店舗を増やす勢いです。
この数字もすごい。2021年から22年にかけて、全米でオープンした全ての店舗のうち、3分の1がダラーストアという、驚くほどの増え方です。
低所得者につけこんだ商売?
ただ、こうしたダラーストアの急成長に対しては、批判の声もあります。
ダラーストアは価格を下げるために、従業員の数、賃金も最低限に押えています。従業員の働く環境の問題が指摘されています。
また、日本でも同じことが起きてきたと思いますが、激安スーパーの進出で、地元の小さな独立店が、競合できず、閉店せざるを得なくなっています。
そして、ダラーストアには生鮮食品はほとんどなく、添加物を多く含む加工食品ばかりが並びます。選択の余地がない住民の、健康を害していると批判されています。
また、 大型店でまとめ買いすればかなり安くなるペーパータオルなどは、
1個ずつバラ売りで値段は割高。一度に1個ずつしか買えない低所得者につけこんで、利益を上げているという批判も。
インフレが進み、こうした店でしか買い物できない人は低所得者だけでなく中間層にも増えています。アメリカの厳しい経済状況を、この激安店ブームが反映しています。