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【ヤマムラメグミノエッセイ】#1 あんたが大将

その昔、友人関係で相当悩んでいた時期がある。

図書館で「友達幻想」とか「友達いないと不安だ症候群につける薬」とかそんな類の本をどっさり借りてきて読み漁るくらいのレベルだった。
(この時、図書館で貸し出しする際の恥ずかしエピソードは、私の鉄板ネタになっている)

幼なじみだからという理由で、噂話、陰口、マウント、不倫、どれだけ貢がれているかの話を讃える会の一員である自分に何の疑問も持たずに生きてきた。これからもその一員として過ごしていくのだと思っていた。

若くして妊娠出産結婚、骨肉腫を経験し、手術を経て身体障害者になった。ある時、結構なモラハラだった結婚相手から「この障害者!」と怒鳴られた。
今まで積み上げてきたものが音を立てるようにガラガラと一瞬で崩れ去り、私の中で全てが終わった。骨肉腫の治療中、一度足りともお見舞いに来たことがなく、入院中毎日電話で食事も家事もどうしてくれるんだと説教してくる彼に関するもの全てが受け入れられなくなった。子どももだった。

離婚して1人になった。あの会が開催されると連絡があった。
私は何と言われるんだろう...。
そんな思いとは裏腹に、みんなが笑顔で出迎えてくれた。
「メグ良かったじゃん!」
「合コンやろう!合コン!」
自分の選択が理解されないのではないかと思ってビクビクしていたから、みんなの表情と言葉に安堵した。

その会からしばらく経った時、その時参加していた友人から
「メグちゃんがトイレに行ってる時、メグちゃん、言われてたよ。『メグ、あいつ何なの?女として有り得ない。てか、人間として有り得なくね?』って。」

私がトイレから戻った時もあんなに笑顔だったのに?

わからなくなった。

それから会を欠席するようになった。
数回欠席したある日、会を取り仕切るボスから呼び出された。

「うちらは厳しい事も言うけど、それは全部メグのためを思ってのことじゃん?やさしさでしかない。これ以上、欠席したら友達無くすよ?笑」

鼻で笑われた。

友達ってなんだろう。

わからなくなった。

30過ぎて新しい友達なんて出来るわけがない。欠席したら友達がいなくなってしまう。そんなことをしたら友達は減る一方じゃないか。

そんな強迫観念から、再び会に参加するようになったものの、誰かひとり席を外すと始まるその人の陰口や噂話や報告を知っているから、ひとりでトイレに立つことは難しくなった。

限界まで我慢して、誰かがトイレに行くのを待って、なるべく自分の存在が薄まるように努力した。
誰かトイレに行ってくれ...。私にとって、トイレのことばかり考える会になった。

友達ってなんだろう。

そんな時、お母さんみたいな存在だった人から言われた

「メグちゃん、これはあんたの人生なんだよ。将棋で言ったら、あんたが大将なの。大将の周りに置く駒の数は決まってるのよ。自分の周りに置く駒は自分で選びなさい。そんな駒を選んで大丈夫?」

本を何冊読んでも出なかった答えが一瞬で導き出された。

すぐに退会届を提出し
(勿論、心の中だけで)
二度とその会に参加することはなかった。

あれから10年は経っただろうか、現在では、あの後、出会った多くの友人に囲まれて笑っている私がいる。

あの時の私からしたら想像もつかない程、愛に溢れた素晴らしい友人たちに。


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