少年S君の後悔(実話)
私には忘れることができない、ある思い出があります。まだ、私が小学校3年生だった頃の話です。
休み明け、教室に入ると、教室がざわついていました。何が起きたのかクラスメイトに聞いたところ、1年生のS君が事故で亡くなったそうです。
昨日、友達とボール遊びをしていたS君は、友達が投げたボールを取り損なってしまいました。そのボールはコロコロと、近くに止めてあったゴミ収集車の下に転がっていったのです。
「よし、ボール取ってくるから、待っててくれよ!」
友達が止めるのも聞かず、S君は小さな体で車の下に潜りこみ、這いつくばった状態で ボールを取ろうとした矢先!
運悪く、ゴミ収集車が突然、発進し、S君の頭は車のタイヤの下敷きに…!事故の状況はかなり悲惨だったそうです。
救急車の中で、S君は「痛い…痛い…」と苦しみながら、息をひきとりました。
S君は、学校でも有名なやんちゃっ子で、乱暴者として知られていました。私の妹はS君と同級生で、彼を恐れていました。
そんなS君ですが、私が最後に彼を見たのはお祭りの帰り道でした。偶然、S君と帰り道が一緒になった私は、S君と会話を交わすことに…。
その時、彼は「俺、今まで悪い子だった。反省してる…」とつぶやきました。その寂しげな表情と、いつもと違うS君に違和感を覚えましたが、私は、「S君が反省してるなら、みんな許してくれるよ」と彼に言ったのを覚えています。
それが私が最後に見たS君の姿でした。
後になって思い返すと、S君は自分の死が近づいていることを感じ取っていたのかもしれません。毎年、お祭りの日が近づくと、この出来事を思い出し、S君のご冥福を心の中で祈らずにはいられません。