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人形の囁き⁉︎(実話)
私がまだ、小学生だった頃のこと。ちょうど夏休みか何かの長期の休みで、私は家に一人で過ごしていた。何をするでもなく、ただ部屋の中でぼんやりと時間を過ごしていた。両親は出かけていて、家には私以外誰もいない静かな午後…。
ふと目に入ったのは、部屋の隅に飾ってある大きなガラスケースに入った人形だった。その人形は母の結婚が決まった時、祖母(母のお母さん)からもらったもので、母がいつも大切にしていた。
しかし、久しぶりに近くで見ると、ケースの上に埃が積もっているのに気づいた。
「こんなに汚れてたんだ…」
私は布巾を手に取り、ケースの周囲を拭き始めた。埃を取るたびに、光が反射して人形の顔が一層鮮明に見えるようになった。人形の無表情な顔が妙にリアルに感じられて、不思議な感覚に襲われたが、気にせず掃除を続けた。
ちょうどケースの上を拭き終わったその瞬間だった。突然、頭の中で低い声が聞こえた。
「ありがとう…」
「えっ…?」
私はその場で凍りついた。部屋には誰もいないはずだった。心臓の鼓動が早くなり、背筋がぞくっとした。振り返っても、部屋には私一人しかいなかった。窓もドアも閉まっていて、外の音も聞こえない。
「今の…誰…?」
恐る恐る再び人形の方を見たが、何も変わった様子はなかった。ただ、人形が以前よりも微笑んでいるように見えた。
その日のことを思い出すたびに、あの声の正体が気になって仕方がない。家族に話しても、誰も信じてくれなかった。
しかし、あの低い声での「ありがとう」は、今でも私の記憶に鮮明に残っている。