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観劇メモ:言式の解なし


言式の解なしを見る

言式とは、俳優の梅津瑞樹さんと橋本祥平さんの演劇ユニット。
「解なし」は言式の旗揚げ公演だ。
脚本と演出を梅津瑞樹さんが手がけていて、「生きるとは何か」という命題へのアンサーを描く。
(以下、この文章中ではお二人のことを敬称略して記載する)

見よう見ようと思いつつ滑り込みギリギリで配信を購入。どうやら円盤化はないと公式から発表があったので急いだ。(急いだ結果、最終日に購入している)
現地に行きたかったが、抽選で負けた。平日日中の観劇が叶わないのなら、もう終わりだ。つくづく運がない。

感想

面白そうと思っていたし、見てみたら面白かった。

元々、梅津瑞樹と橋本祥平というの時点で何か面白いものが出てくるという信頼が私の中には存在していた。想定通りだったし想像以上だった。
普段ストーリーがおおよそわかっているものばかり観劇するので、完全初見の舞台はドキドキするが、掲げているテーマから自分と合わないことはないだろうと思うことができた。「生きるとは何か」を梅津瑞樹がどのように描くのかということに興味があれば見てほしい。

この舞台では役者が何にでもなる。男性にも女性にも、若者にも老人にも。小道具が少ない分視線の動きやマイムで観客に伝えなければならないので身体表現力が問われるものだなと感じた。
脚本もどれもハズレだと思うことはなかった。シリアスで真剣な内容の中にちょっとしたユーモアもあるし、全力で笑わせにくるような内容もあった。

舞台らしい身体表現と、絶妙に笑わせてくるストーリーと、共感したり考えさせられるものが私は好きだということが改めて実感できた。

スイッチングか全景か

劇中、観客が笑っている理由というのがわからない箇所があった。暗い舞台上で役者一人にスポットライトが当たっているシーン、彼がした動き自体への笑いではない何かの要因での笑いが起きる。その続きを見ればスポットライトが当たっていない舞台上でもう一人が何かしらの動きをしたのだろうと推測できた。
個人的には全景だと遠すぎるのでスイッチングで見るべき箇所に注目してくれたほうがありがたい。
とはいえ、全体が見れたほうが役者がどこにいてどういうことが起きているか分かるので、全景もスイッチングもどちらも良いところ悪いところがあることを体感できた。
そもそも、現地で観劇するのが一番いいんだよなぁ。

本編について書き連ねたこと(ネタバレあり)

観劇しながらメモした感想を残す。
パンフレットは未購入のため、各タイトルは正式なものではない。
(そもそも正式なタイトルってどこかにあるんだろうか?)

Chapter1 男性と女性が老いるまでの話

男女が出会い、結婚をし、子供が生まれ、老いていき、死ぬ。
開始16分たってやっと日本語での言葉が出てくる。俳優は発しない。
大切な人を亡くした叫びと天井から降り注ぐ「あ」という表現が美しく悲しみを表現していてよかった。
それと同時に、降り注ぐ大量の「あ」はこのまま舞台に残り続けるのかとびっくりしている。
悲しみが降り注ぐ中で傘をさしてあげるのは美しい。

Chapter2 幼馴染の話

舞台上でタバコ、普通に灰とかの処理が気になるよね。下手したら火事だし。
15分近く日本語を用いた会話がなかったので、会話が生まれて安心した。
(ここで現地観劇した人の感想をチラ見し、どうやらオムニバス形式らしい?ことに気づく。前情報をきちんと頭に入れていないからこうなる)
過去の自分の発言って覚えてないけど、誰かの記憶に残ってたりするよね。
このザマだ、があまりにも切ない。
田舎から都会へ飛び出してやりたいことやってもつまづいてだんだん上手くいかなくて田舎に戻ってくるのが苦しすぎる。子供の頃のままではいられない。
脱皮だ!!!!!

Chapter3 友情の話

ルンバくんが走り回る舞台上。
顔芸というか身体全体での表現が好き。首の動きや目線で分かる大きさとか、手に持っているものがどう動いているか。
社長と無職って組み合わせの落差。社長とダメ社員くらいかと思っていたがもっと飛び抜けていた。
「流行りが溢れかえっている世界で、簡単に忘れられたりしない変わらない本物が欲しい」
流行りが世に溢れかえっているのはそれだけたくさんのビジネスがあって人が活動していることなんだろうけど。その中で不変的なものを手にしたいという願いは難しいけれど皆が求めていることなんだろう。

Chapter4 工場でタンポポをのせている話

工場のラインという単調になりやすい絵を、こまめに動いて飽きさせない表現が面白かった。片方が表情を見せて片方は表情を見せないのでどこに注目したらいいか分かる。
梅津瑞樹と橋本祥平って顔芸が凄すぎる普通にしていたらイケメンなのに表情筋がよく動くから色んな顔ができて良い。
才能があるって言い聞かせてきたのは共感しかない。俺才能ないかも、も分かる。
時間はどうしたって帰ってこないんだよなぁ。

Chapter5 役者と演出家の話

役者と演出家(監督?)のやりとりが面白いし、客席側にいるのが面白い。
本番は一回、人生は一回。
一番初めの演目から持ってきた表現(男女逆)
しょうちゃん死んでるんです?
→カテコで成仏できそうですと言っていたので死んでいたみたいですね。
劇場という文化の発信地が消えていくのを残して欲しいと訴えるのが現実味があって辛い。でもその後にできるのが相撲部屋なのは太刀打ちできない。「相撲は国技だから!」その通りすぎる。
感動系かと思ったら急に笑いをぶっ込んできてまた感動系に寄せていくのが良い。
万事は常に変わり、来て、そして行ってしまう。
そんな舞台装置があるなんて聞いていませんが?!?!?!

舞台装置とか衣装について

上手、中央、下手の3つのハケ口(出入り口のこと、ハケ口って言うっけ?)
重ねれば言式となる立方体たち、床に落ちた「あ」、鮮やかに舞うたんぽぽの花びら、背景の壁が倒れる仕掛け
小道具が足されることもあるが全て真っ白な衣装

背景の壁が倒れてくるのには驚いた。下手すると普通に事故になる。薄いベニヤで作られていたとしてもそれなりの大きさなのでは?あれはどうやって倒したんだ?

一番最初の時だけ、女性は大きな赤いリボンを頭につけていた。

カーテンコール

梅津瑞樹からnot for meという言葉が出てきて面白かった。not for meは普通の英語なのに。not for meをオタク用語だと思うな。
「照明打ち合わせとか音響打ち合わせとか、めっちゃ大変そうで」という感じの発言があったが、本当に想像しただけで大変そう。おつかれさまでした。演出もやるってことは色々確認しなきゃいけないから絶対大変だっただろうな。
DVD化しないのも趣深くていいじゃないか、というのもそうだなという気持ちになる。とはいえ、実際に観劇できる人数に限りがあるので配信はしてほしいし、可能であれば何作かやって総集編みたいな感じで円盤化してほしい気持ちはある。これを何かしらの形で物理的に残さないのは損失な気がすると個人的には思う。とはいえ難しいことは想像できる。

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