002,シンイチロォと言う男
小川恵夢です。note第二回、眠れぬ明け方の配信です。今回は私の芸人としての同期であり、今はeスポーツのキャスターとして活躍をしているシンイチロォについて書きたいと思います。
まずは情報漏洩をば。
いや、良いように書いてんな!…しかし、これがまた事実なのです。シンイチロォは、言うなれば"ネアカなバカポジティブで人類皆兄弟"。悪口のように聞き取れますが、こういうやつだと言うことを最初に明記しておきます。
彼とは、001,で前述した福岡吉本の公開オーディションで出会いました。その当時は丸坊主にジャージ、その他はもはやボケをしていたのかツッコミをしていたのかさえも覚えておりません。(それだけトリテンとマキ(後日ご紹介できれば))の印象が強かったのです)
彼は、時間をおかず、賑やかでまとまりのない19期生の纏め役になりました。というか持ち前の性格がそうさせたのでしょう、とにかくツッコむ、ツッコむ。「いや◯◯かよ!」みたいなテンプレートのツッコミではなく、それは日常から染みだすような「痒いところに手が届く」所謂「それそれー」のツッコミ気質でした。
ただ、気づいた時にはまさかの「舞台では振り切ったボケ」。私は大きな違和感を感じていました。勿論、マキのツッコミあってのキャラ漫才だったのですが、彼は舞台前に二時間掛けてへアセットに行き、ホストのような髪型にして、オートクチュールのシルバーのスーツを羽織り、「福吉のプリンス、ここに降臨!」と口上する確固たる「プリンス」キャラを築き上げました。お陰で今でも彼は旧友から「プリンス」と呼ばれています。
言ってしまえば、男女コンビのビンタありのどつき漫才はウケました。たまには口のなかを切って帰ってくることもありました。そんなときも、「大丈夫、大丈夫ぅ!」と明るく振る舞ってツッコミ気質に戻るのです。本当に違和感。12年の付き合いから正直に言って、私はシンイチロォはツッコミだと思っています。ただ、人の選んだ「ボケ」「ツッコミ」に口を出すのもおこがましい。そんな気分で過ごしていました。
あるとき、マキが芸人を辞めました。
弄られてなんぼのキャラ芸人が、弄ってくれる相方をなくす。これ程辛いことはありません。彼は試行錯誤を繰り返します。ツッコミのいない状態で、ピンでやるには何をしたら良いか。大丈夫といいつつ、基本的に真面目なんです。シンイチロォ。そしてこれが、転換期に繋がるのです。
「知り合いの伝を頼って、声優、俳優の勉強をする」
そう聞いたのは、我々が売れない芸人としてぬるま湯に浸かっている最中でした。彼は、何とかして現状を打破したいという考えに満ち溢れていました。東京にいくというのです。あの恐ろしい東京に。刺さる東京タワーに、刺さるスカイツリー。(ギャグマンガ日和)東京なんて、我々にとっては夢のまた夢、何なら外国でした。しかし、シンイチロォはもともと東京生まれということもあり、そこに抵抗はなかったようです。勿論、止めたい気持ちもあり、また、応援したい気持ちもあり、正直複雑でした。何をするかもわからないまま、芸人をやめ、吉本をやめ、あめんぼあかいなあいうえおと言いながら東京で過ごす。これは19期にとってとても刺激でした。
彼は、東京に行きました。「何をしてるかわからない訳のわからないやつ」、回りにそんな風に揶揄されることもありました。人間、成長するときはいつだってそういわれることをまだ私は知りませんでした。
思出話をひとつ。彼は、無謀バカでした。あるとき、バイト先の一階の鍵を閉めたいがために、二階の窓から飛び降りました。その結果、両足を骨折して、入院しました。退院後、「やっちゃったわ~」と笑いながら、松葉杖にキラキラのモールをつけて舞台に立ったときは、こいつ本物のバカだと思いました。
ただ、バカは成長するんです。なぜなら、限界なんて言葉を知らないから。彼が東京で選んだ道は、大好きなネットゲームまみれの生活でした。夕方に起きて、ネットゲームをし、朝方に寝る。その繰り返し。完全なる引きこもりです。正直、ああ、プリンス大丈夫か、と皆が思いました。でも、プリンスはそんな中で道を見つけたのです。
ここ最近、市民権を得た「eスポーツ」という「ネット対戦やチームを組んで対戦をするゲーム」という競技。彼は、芸人時代のツッコミ、べしゃりスキルを活かし、そのキャスターとしての第一歩を踏み出しました。
今では、自分の事務所を立ち上げ、大好きなゲームを生業に日々の活動をナチュラルに楽しんで行っています。
自分を貫くとは、こういうことなのか、と思いました。好きなことを仕事にする、それは諸刃の刃です。それは十分シンイチロォもわかっていると思います。でも、彼は「バカポジティブ」です。恐らく楽しいのです、毎日が。それは、もはや成功に近いのではないでしょうか。
きっとこの先、まだまだ挫折も幸せもあると思います。しかし、シンイチロォなら我が道を行くだろう。そう思わせてくれたのが、シンイチロォという男なのです。