一人芝居用台本「山椒魚の見た空」台本
2019年3月23日:上演/脚本・出演:小川恵夢
上京前に行った一人芝居のために書き下ろしたお話です。
登場人物…1人(女性)
ジャンル…
(あらすじ)
2019年1月、東京拘置所。
マリは、一人ぼっちで来るべき審判の日を待っている。
その手に握られているのは、井伏鱒二の「山椒魚」。
これは、住処である穴ぐらから出られなくなった山椒魚の話。
山椒魚は、悲しんだ。
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※今後、ネタ(漫才・コント)台本、ショート演劇台本、散文などメギーが書いたものをこちらで発信して参ります。
中にはメギー本人がすでに使用しているものもありますが、基本的にご報告さえ頂ければどなたでもご使用可能です。
長さや内容、登場人物数にもよりますが、無料~有料までありますことをご容赦頂ければ幸いです。
今回の一人芝居用台本、「山椒魚の見た空」は、ある一人の女性死刑囚「マリ」の心の葛藤を描いた作品です。
また、「登場人物何人で何分程度、こういう話やネタを書いてほしい」というご意見もお待ちしております。いや、まぁ台本を書くプロではないので、ご満足頂けるかはわかりませんが…頑張ります!
お気軽にご相談ください~。それでは、台本。
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「山椒魚の見た空」
山椒魚の見た空
プロローグ
暗転
マリ「山椒魚は悲しんだ。
彼は彼の住処である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることが出来なかったのである。今はもはや、彼にとっては永遠の住処である岩屋は、出入り口のところがそんなに狭かった。そして、ほの暗かった。強いて出て行こうと試みると、彼の頭は出入り口を塞ぐコロップ・・・コルクの栓となるに過ぎなくて、それは丸二年の間に彼の体が発育した証拠にこそはなったが、彼を狼狽させ、かつ悲しませるには十分だったのだ。
「何たる失策であることか!!」
彼は岩屋の中を許される限り広く泳ぎまわってみようとした。人々は思いぞ屈せし場合、、部屋の中をしばしばこんな具合に歩き回るものである。けれど山椒魚の住処は、泳ぎまわるべくあまりに広くなかった。彼は体を前後左右に動かすことが出来ただけである。その結果、岩屋の壁は滑らかに感触され、彼は彼自身の背中や尻尾や腹に、ついにコケが生えてしまったと感じた。彼は深い嘆息を漏らしたが、あたかも一つの決心がついたかのごとく呟いた。
「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ。」
しかし、彼に何一つとしてうまい考えがある道理はなかったのである。」(山椒魚より引用)
第一幕 嘲り
明転板付
2018年12月、東京拘置所内、独居房。
マリ、立膝をついて井伏鱒二の「山椒魚」を読んでいる。
SE―サイレン
マリ、そのサイレンに反応し、本を投げ出して正座。
乱雑に出された朝食盆を大切に受け取り、センターに運ぶ。
マリ「・・・いただきます」
言うや否や、行儀悪く、すごいスピードでかっくらうマリ。
器の底についた米粒一粒まで指ですくい、あっという間に食べ終わる。
マリ「ごちそうさまでした」
小声でそう言うと、食器を元の場所に戻す。
センターに腰を下ろし、腹をなでるマリ。
マリ「・・・少ね・・・」
小さい窓の外、雀が鳴いている。
それを虚ろな目で見上げ、ぼんやりとする。
やがて、もう一度文庫本を手に取り、パラパラとめくる。
マリ「・・・山椒魚は、悲しんだ・・・」(山椒魚より引用)
M―OP、ピアノ(月の光/ドビュッシー)
徐々暗転(下手上の窓にだけサス当てる?)
タイトル「山椒魚の見た空」
第2幕
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