ときめきの作り手

友人に誘われてりぼん展に行った。りぼんを一度も読んだことがない私が。

何を隠そう、私は生粋のちゃおっこだった。ちゃおガールに応募しようか本気で悩んだこともある。漫画に登場する少し年上のお姉さん達のキラキラした青春に心底憧れていて、毎月2日の夜になるとお小遣いを握りしめて近所の本屋さんに走っていたのが懐かしい。そんな私にとって、当時のりぼんの認識は「友達の友達が読んでるらしいな…」くらいのものである。ちゃおを卒業してからは少年誌にハマり少女漫画とは疎遠になってしまったこともあって、りぼんはおろか、いわゆる少女漫画の名作を殆ど通っていないのだ。しかも今回の展覧会の主役は90年代の作品だったので、「名前聞いたことあるかも?」程度の知識しかない。誘われた際は、90年代のポップな色使いのイラストや古いおもちゃが見られるかもしれないと思い「行く!」と即答したが、心中楽しめるか不安であった。


………と、長くて失礼な前置きはここまでにして。 


も〜〜う、めちゃくちゃ楽しかった!! 

いや〜、本当に本当に楽しくってひっくり返った。前情報が皆無の私でもこんなに楽しかったのだから、世のりぼんっこ達は今頃泡を吹いて倒れているんじゃないかと心配になるほどである。

そんなりぼん展、印象に残っていることをざっと振り返ってみよう。

チケットを握りしめて向かった入り口にはりぼんのキャラクターたちと「久しぶり。元気にしてた?」の文字。早速後ろめたさを感じながらも会場に足を踏み入れると、数えきれないほどの表紙が目に飛び込んでくる。どこもかしこも表紙表紙表紙。イラストと文字が主張しあう空間は、思わず目を細めてしまうほど眩しい。そのうちの一つに近づいてよく見てみると、「新学期☆ステショ祭り!」の文字が踊っている。ちょうど私の母世代が少女だった頃のりぼんだ。ここで、そういえば私たちも文房具のことを「ステショ」と呼んでいたことや、ステショの付録は特に嬉しかったことを思い出す。見渡すと最近の号の表紙にも同じように「ステショ」の文字が。母世代も、私たちも、今の子たちも、どうやら少女はもれなく「ステショ」に目がないらしい。そうだよな、ステショ、教室という名の小宇宙を生き抜くための武器みたいなものだもんな!!!皆が同じ少女時代を過ごしてきたことを思い出して、妙に嬉しくなった。

次に待ち受けるのは作品ごとの展示。少女漫画ならではの細くて柔らかい線と淡い色彩が美しいアナログ原画は、まさに圧巻の一言である。元お絵かき少女としては、漫画家の先生が描いた作品を間近で見られるというだけでときめきが止まらない。「髪のペン入れって途中で迷ったり潰れたりしないのかな」「どうやったらこんなに綺麗なグラデーションが作れるんだろうか」などと考えながら、楽しく鑑賞させていただいた。

そして私はここでも、先程と同様に少女の憧れが不変であることを知る。かつての少女たちをトリコにしたストーリーを読んでみると、魔法であこがれのあの子に変身、幼なじみとの恋、最初は嫌いだったぶっきらぼうな彼、ドキドキの生徒会デビュー、デザイナーの夢……。描かれているもの殆ど全てが、やっぱり少女時代の私も憧れたものだったのだ。女の子って、ほんと楽しい!と私の中の河北麻友子が叫び始める。

付録コーナーも同様だ。ポーチにステショにコーム、お気に入りの水着を入れたくなるようなビニールショッパーや、紙で組み立てて作る可愛いボックス。あ~~~~~可愛い。どれもこれもとんでもなく可愛くて、現在進行形でときめいてしまう。読んでいない雑誌の、しかもまだ私が生まれていない頃の付録だ。テレフォンカードなど時代を感じさせるものも多数ある。にも関わらずやっぱりどこか懐かしくて、紙の段ボールをビリビリに破って付録を取り出す時の高揚感が胸に蘇った。

こんな風にりぼんっこでない私でも十二分に楽しめた展覧会だったのだが、何よりも忘れられない景色がある。それは、私たちの周りにいたお姉様方の表情だ。彼女ら全員が、まるで少女に戻ったみたいに瞳をキラキラと輝かせていた。そして聞こえてくる「きゃ〜懐かしい〜!」「これ大事にしてた!」「今も持ってる」「大好きだったなあ」の声。私ですら感じた懐かしさや胸に抱いたあの頃のときめきを、彼女たちはダイレクトに感じているのだ。なんという多幸感。彼女たちが「りぼん」と過ごした青春を思い出して目を細める様子が幸せで愛しくて、なんだか泣きたいような気持ちになった。

私達の少女時代には、いつもコンテンツにもらった憧れや夢があった。与えてもらったときめきは、何年経っても一瞬にして私達を少女に戻してしまう。しかもそれは不変で、全く別の時代を生きた少女の心だって掴んでしまうのである。ときめきに溢れた時間や、「久しぶり。」なんて笑いながら再開して少女に戻る多幸感を、この先生まれてくる全ての人に体感してもらいたい。ああ、私も誰かの「ときめきの作り手」になりたい。心からそう思わせてくれたりぼん展だった。

#りぼん展 #展覧会 #日記


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