リツさんと「星影のワルツ」を歌う
1966年に千昌夫さんが歌った「星影のワルツ」
作詞は白鳥園枝、作曲は遠藤実のこの歌は、私の勤めているデイサービスでもとても人気のある曲。
デイサービスでは、カラオケだけでなく歌集を見ながら、アカペラで合唱する時間もあるのだが、歌の時間はリクエストを募集することも多い。
その日、普段はあまり、リクエストをすることのないリツさん(仮名)が珍しく「歌いたい」と言ったのがこの、「星影のワルツ」だった。
リツさんは、もう少しで100にならんとする年齢で、娘さんを亡くした。
娘さんが生前、好きでよく一緒に歌ったのが、この歌なのだと話してくれた。
リツさんは、数々の不幸に見舞われているが、気丈でさっぱりした性格で、「仕方ないよ」と明るく言い放ち、これまでしんみりした姿を見せることは殆どなかった。
けれど、「娘が好きだったから、星影のワルツを歌いたい」と言ったときのリツさんは、涙こそ見せなかったものの、まるで娘さんの亡骸を目の前にしているような表情をされていた。
利用者さんたちと声を合わせ、娘さんの冥福を祈る。
リツさんと親しい人たちは娘さんの訃報を知っているが、そうでない人たちはただただ、曲の美しさを味わいながら声を重ねる。
きっと、いろいろな思い出が浮かんできたことだろう。いいことも、そうでないことも。
いや、喧嘩したことも、思い出となれば愛おしくなるのかもしれない。
今晩はあいにくの雨だが、満天の星空を再び見上げる日が来たら、星となって見守ってくれている人たちのことを、思い出すだろう。
※コロさん、ステキな画像をお借りしました。
ありがとうございます