直葬で母を見送りました。 ー地獄の沙汰も金次第ー
母を、いわゆる最近流行り(?)の直葬で送りました。
今までの人生で葬儀に参加することはもちろんありましたが、主導することはなかったため色々と勉強になりました。
それは、もう本当に。
まわりの大人がだれも助けてくれず、何もわからないまま頑張りました。
今回の経験で、これから周囲の人が身内の死に見舞われたときに少しは手助けになれます。
母は、享年60代半ばと年齢は比較的若めではありましたが、交友関係も少なくコロナ禍というご時世、そして本人が本音かどうかはわかりませんが「何もしなくていい」と言っていたからというのもありますが、今回の葬儀を直葬にした一番の大きな理由は経済的な事情です。
そうです。
我が家は圧倒的な貧乏。
後から知ったことですが通夜、告別式を執り行う普通の葬儀なんかできるはずもなかったのです。
葬儀屋さんに連絡、見積もりをとった際に「みんなこんなにお金のかかること普通にしてるの?」 と驚いたほどです。
お金がない暮らしを何十年もしていたにもかかわらずお金のことは母に任せ、実際のところお金がないことで苦労しておらず危機感が全くない父親とは最後の最後まで葬儀社の件でもめました。
母がチェーンの葬儀互助会にかけていた掛け金がもったいないのでその互助会でそこそこの規模の葬儀をやり、自分の身内に見栄をはりたかった父と、互助会のお金なんか損切りしてでも小さな葬儀屋でこじんまりやったほうがお金がかからないと主張する子どもたちとでです。
上を見ればきりがないとはいえ、上を知らないのは幸せなことです。
何も自分で主導しないうえさらにはお金もないのに主張だけはしてくる父には、本当に嫌気がさしました。
葬儀屋さんが決まってからも、ぐずぐず言われました。
結果からいうと葬儀代は子ども二人で折半し、法要にかかるお金は頂いた香典から父に出してもらうことになりました。
子から親への盛大な香典になりました。
お金があることで避けられるもめ事、本当にたくさんあるということは身にしみました。
そういった事情でかなりコンパクトに、世間の相場よりは安くできたと思います。
今回の葬儀に関しては、最小限ではありますが「完璧ではないけれど、それなりに清潔感のある形で送れた」と遺された側が思うことができた事例ということになります。
それでは、時系列で追っていきます。
対応が最悪な某冠婚葬祭互助会のオペレーター
帰郷した怒涛の一夜目からほぼ眠れず翌朝を迎えボーッとしながらなにげに目の前に放置された新聞を開くと、偶然葬儀屋の折り込みチラシが入っていました。
その日のチラシは家電店とその葬儀屋のみ。
いま思うと天の助け。
最近できたっぽいシニア受けは悪そうな若い人向けのチラシだった家族葬専門の葬儀屋さんA。
だいたいの葬儀の最低価格がシンプルに記されていたチラシでした。
その時まではなんとなく(母が互助会に入っていたB(以下・互助会葬儀屋をBと表記)で葬儀やるんだろうな・・・死んだら連絡しなきゃ。連絡先調べておかなきゃ)と思っていたのですが、そのチラシを見て驚嘆。
火葬プラン(直葬)ではなく、斎場を借りてとりおこなう家族葬プランがチラシ価格で60万円~80万円程度だったからです。
葬儀は葬儀屋に指定されたオプションでいろいろ上乗せされる、というイメージがあったし実際そうでした。
それに、チラシの価格は最低価格でありこの価格で出来るはずもない。
家族だけの小さな葬儀だけで100万円はくだらないんじゃないかということが頭をよぎります。
葬儀費用を残していない実家で、わたしが出せないことはないしきょうだいで折半という策もあるけれど、正直かなりの負担。薄給のわたしが100万円を貯金するには何年間も要する一大事です。
焦ったわたしは弟と連携し、チラシの葬儀屋さんAと互助会Bに連絡し速攻見積もりをとることにしました。
母が倒れてから意識不明のまま数日。
容態がいつ急変するかわからない状態で猶予がありません。
まず、チラシの葬儀屋さんAに電話。
聞かれたことには単純明快に答え、質問に対して曖昧さを残さないシンプルな対応。
事務的といえば事務的ですが、何もわからない状態ではっきりと質問に答えてくれるのには安心感がありました。
今の状況を説明し、すぐさま見積もりをもってきてもらうことにしました。
一方、互助会B。
Aと全く真逆の対応。
そもそも、係に取り次ぐまでにかなりの時間を要する。
時間的余裕がないなか折り返しの電話も遅い、オペレーターものらりくらりとしていました。
質問に何も答えないどころか、葬儀にいくらかかるのかもはっきりしない。
直葬自体ができるかどうかもわからないし、相場も言わない。
互助会であらかじめ含まれているものは、棺となんとかとなんとかと言っているけど「で、最低いくらかかるの? 基本料金はいくらなの?」という質問にはあくまで逃げようとする。
しつこくしつこく聞いて引き出した金額の目安は最低80万円ぐらい?でした。
互助会の意味を訝しんでしまったうえ、これからさらに大変な目に遭うのに果たしてこのような社風で大丈夫なのか、搾取されるのじゃないかという不安もよぎるし、そもそも価格の価格設定が高かったです。
とりあえず、問い合わせにより母がBの会員であることは間違いなかったのでAの葬儀屋さんを本命としつつ、母の様子を病院に見に行っている合間にAに見積もりを作成してもらい、家に来てもらうことになりました。
火葬葬(直葬)の流れ
急ぎAの葬儀屋さんに持ってきて頂いた見積もりによると、直葬はオプションのない状態で30万程度。
通夜・告別式形式の家族葬は80万ほどでした。
葬儀がまだ決まっていない段階で会員になるとそこから会員割引になるとのことで入会金(1万円)を払いとりあえず会員になり直葬のほうで話を進めることにしました。
ちなみに自宅に連れ帰るという案はなかったので、すべて斎場で進めることにしました。
自宅安置になるとまた料金は変わったと思います。
直葬の流れとしてはこうでした。
当日
・病院から斎場に移送
・翌日まで安置(死亡診断書の時間から24時間は火葬できない法律がある)
・納棺(お経)
翌日
・出棺前のお別れ(お経)
・出棺
・霊柩車で移動
・火葬(参列者は現地集合・現地解散)
ここまでの経費はほぼ初期設定に含まれていて、火葬代金(行政に支払い)と、どうしても火葬場が押さえられなかった場合の安置料金が1日につき7万円プラスとのことでした。安置料金は葬儀屋さんによっても変わると思います。
細かいもので含まれていたもの
・安置の際の枕花
・安置用のお布団類
・納棺の際に着せる仏着
・棺
・出棺の際に棺の中を飾る花
などです。
これらは、オプションでお花の量や棺の豪華さ、仏着の色などを選べましたが葬儀屋さんは形式的に紹介してくれただけでしつこくされることは一切ありませんでした。
結果的には基本料金内のもので十分な内容でした。
棺も装飾が施されていた綺麗な棺であり、仏着も過不足のない感じ。
お花も小さくはありましたが洗練されていました。
なにしろ清潔感があってよかったです。
少し気持ち的に落ち着いていたところ、
父が「互助会Bならもっと花が・・・」と安置された状態で言い出したのでキレることになります。
そりゃ、数十万の花なら豪華でしょうしオプションで豪華にすることもできましたがお金がないので仕方ありません。
生前花を母にプレゼントしたこともないのに、一体だれのための花なのか。
オプションで頼んだものは写真盾付きの小さい遺影(5000円)と骨壺を49日まで自宅に置いておく用の、後飾り祭壇セット(15000円)と会葬礼状10枚(1000円)だけです。
お坊さんは付き合いがなかったため、葬儀屋さんに手配してもらおうと思っていたのですが親戚の知り合いに付き合いのあるお坊さんが居て、タイミングが合ったためその方にお経などをお願いすることになりました。
葬儀屋さんに手配してもらう場合は、お布施の他に手配料金などが別途かかります。
そして、宗派や各々のお寺によってもお布施などの料金が変わり、葬儀屋さんで手配してもらう場合のお経の料金はコミコミで最低30万円はかかるとみていていいと思います。
我が家の場合は死亡日時が午前中だったため、近隣の火葬場をあたり翌日火葬が可能でしたが、夕方から夜にかけてだった場合は24時間安置の法律があるため翌日火葬は厳しく、火葬が長引けば長引くほど安置費用はかさみます。
わたしは今この記事を書きながらカレンダーを見たというぐらい全く気にしていなかったのですが、六曜を気にされる方や地域の風習でも変わってくると思います。
良かった点
・家より斎場の方が綺麗だし何かと好都合
実家に棺を置いておける部屋がなかったわけではないのですが、実際すごく小ぎれいな部屋に安置してあげることができて個人的にホッとしました。
1日分の安置料金はベース料金に含まれており、実家付近は車を何台も止めておけるスペースもないため駐車場付きという点でもよかったし、家だと何かと来客をもてなさなければならず、掃除などにも気をつかったと思います。
地方はほぼ車社会のため、駐車場問題は盲点の方もいるかと思います。
あとは斎場の利点としては打合せなどと言いつつその場を離れられたりと逃げ場があってよかったです。
スケジュールも決まっているので、その場にだらだら来客がとどまっているということもなく即解散となれたのも助かりました。
わたしの場合は、親戚・家族ともにろくに手助けにならず、ほぼ一人で孤軍奮闘していたので家での作業も加わっていたら確実に倒れていたと思います。
ちなみに葬儀屋さんからの打診はありませんでしたが希望すれば泊まれる施設でした。
・納棺が通夜、出棺が告別式のかわりでシンプルだった
納棺の前にお経とお焼香があり、納棺には1時間以上かかるうえ、ある程度参列者が参加できるイベント(?)が用意されていたため、儀式としては充分でした。
翌日の出棺の前にもお経とお焼香があり、それなりのお別れの儀式みたいなものも用意されており、簡素化されてはいましたが葬儀屋さんの立ち合いのもと行われたため、セレモニー的な雰囲気はあり必要充分と思えました。
・コロナ禍
コロナの真っ最中ということもあり、なにかというとコロナのせいにして乗り切りました。
会食も用意しなかったので、経費も抑えることができましたし時間的にも短くやれました。
反省点
・もっと少人数でやりたかった
思いのほか親戚が来てしまって相手をするのに疲れました。
直葬の場合は、特にやることもそんなになく手伝ってもらわなくても問題ないので来てもらっても気を遣うだけでした。
実際、何しに来たの? っていう人がほとんどだったし、来なくていいと強く言ったのに遠慮してると思われて集まってしまい、ほんとうに辛かったです。
静かに見送りたかったです。
しかし、来なくていいというわけにもいかずひたすら耐えるのみ。
・互助会の件はもっと詳しく聞いておくべきだった
あとから判明したのですが、母は互助会の積立金を貯金代わりに使っていたらしく貯金にしては解約金も多額なため、損しかしないシステムでした。
今回は互助会を損切りという判断をわたしが下したわけですが、父も今回の葬儀屋さんにはかなり世話になっておきながら互助会で葬儀を上げない件を納得しておらず非常にめんどくさかったです。
互助会といいつつ互助的な対応もなくなんのために掛け金をかけていたのか本当によくわからないうえ、解約も大量の書類を送りつけられ死ぬほどめんどくさい目に遭わされているので見張っておくべきでした。
故人の死後の整理は全部遺族がやるはめにはりツケが回ってきています。
まとめ
・葬儀屋さんに頼む場合の直葬費用の底値(お経なし・オプションなし・翌日火葬)
最低20万円~
・お寺さんを呼ぶ(法名・お車代・お布施込みで一名)
最低10万円~
葬儀屋さんで行う直葬価格、最低30万前後。
このほかに、香典返し、諸経費、法要費などがかかります。
お寺さんの費用は、元々お付き合いのあるお寺があるかどうかでだいぶ価格が変わってきます。
繰り返しになりますが葬儀屋さんに手配などを任せると、お坊さん1人につき手配料も含めて30万円はかかります。
我が家は切り詰めて、オプション的なものは、遺影と後飾り祭壇のみ。
骨壺はプランに組み込まれてました。(オプションのところも多いそう)
コロナ禍なので会食はなし。
飲み物、つまめる程度の軽食は自分たちで用意しました。
香典返し・お寺さん代金(49日までの法要・納骨)も込みで50万円以下ですますことができました。
通夜・告別式を含めるとたとえ家族葬だとしてもこの倍は最低かかる計算です。
お願いした葬儀屋さんは割と良心的な価格だった分、カード払いなどはできずに現金一括か、振込の二択でした。
踏み倒し防止の措置だと思います。
我が家の経済事情としては精いっぱいの葬儀だったと思います。
行政のみに頼ればここまでのお金はかからないと思うし、お坊さんも頼まないで自分が祈るだけで充分という考えの人もいると思います。
そもそも、宗教にや地域よっていろいろ作法や相場はあると思うのですが、無宗教なこと、そこまで横のつながりの深い地方ではなかったことで逆に日本のスタンダードに合わせる羽目になったともいえます。
そして火葬後は納骨せずに自宅に保管、散骨という手もありますし、その後の仏式法要も不要ということであればかなり節約できます。
わたしは正直なところ今まで一度も信じたことない宗教の法名とかいる? って思ってました。
名前の一字をとって、テンプレに当てはめただけの法名が一番下の位で5万円です。
しかも、この価格はかなりお手頃らしい。
5万円払っても一番下の位なんですよ?
そもそも、お金で位が決まるって宗教的にどうなの? っていうみんなが思うことを絶対的に思うわけです。
生きてるあいだに積んだ徳は?
わたしが主導していたら、お寺さん関係は断っていたかもしれませんが、今回は父の意向を尊重した結果こうなりました。
子どもたち二人は、現在地元に住んでいないことで墓は考えていませんでしたが、父が納骨までの面倒を見る気満々でそこは突っ込んで話し合う気力も体力もなかったこと、法要でもなんでも父にはやることがあった方がいいと思ったことなどを鑑みて判断しました。
ここまで簡素化しても葬儀屋さんを通し、お経も読んでもらうと50万円はみておかないといけないというのは、わたしも含めて知らない人は知らないんじゃないかなと思います。
若い方は特に。
だいたいの方は葬儀代金50万円ぐらいは捻出できる余裕を持った生活をされているとは思いますが、わたしのように経済観念が破綻した親御さんをもっている方もいらっしゃると思いますのでご参考にしていただければと思います。
親御さんがまだ存命のうちに、
・地元の葬儀屋さんのあたりをつけておく
・どんな葬儀がいいか希望を聞いておく
・葬儀費用を予定しておく
はしておいた方がいいと思いました。
今回は、これから生きていかねばらなないこちらの都合を優先して節約葬儀になりましたが、こちら側のできる範囲での精いっぱいで見送ったという気にもなっており葬儀に関していえば後悔は全くありません。
わたしが死んだときはここまでしてもらえないだろうし、正直羨ましいとすら思います。
ただ、これはあくまでわたしの場合でありパーッと派手にたくさんの人数に見送ってほしいと思われる方もいらっしゃるし、それを希望していた人に余裕があるにもかかわらず直葬をしてしまったら、遺された側が一生後悔してしまう事態にもなりかねないのでそこはケース・バイ・ケースだと思います。
ご家族で充分話し合っておくにこしたことはありません。
備えあれば憂いなし。
父のときはもうちょっとさくさく進められると思います。
今回の葬儀屋さんが素晴らしかったのでできれば同じところでと考えており、積立金などもなかったので今回の感謝の意も込めて入会金をお支払いし、会員になっておきました。
次は焦らないという安心感を買いました。
今回のことが誰かのお役に立つと幸いです。
それでは、また。
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