映画【ディア・エヴァン・ハンセン】宿題じゃない感想文
2021年公開、アメリカのミュージカルを映画化した作品。”隣人が奏でるミュージカル”
冒頭のタイトル回収も束の間、流れるようにミュージカルに突入する。制作側としては当然のことなのかもしれないが、出演者の歌唱力、表現力は圧巻の出来だった。
一般的なミュージカル映画よりすんなり没入できるのがこの作品の魅力だ。通常の会話に織り交ぜて、感情の起伏を可視化するように歌い上げる。決して大袈裟に見えず、より登場人物の思いや葛藤が伝わってきた。反響や環境音があえて残されているのもその一因と言える。
精神病を患う主人公が治療の一環として書いた自身への手紙。この一枚、このワンアイデアから波紋のように物語は広がりをみせる。脚本、演出、メッセージ性と、どれをとっても超一級品だ。
完成度が高いだけに、共感性羞恥心の感度が高い人は要注意。終始不安を抱いたままの鑑賞になるだろう。さらに、もやもやした気持ちが取り除かれるエンディングかと言えば、それこそこの映画を体験した者にしかわからない。
“関心”は時に牙を剥く。しかし、誰かを守ることもできるのだ。
画像 https://deh-movie.jp/より引用