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鏡開き

◆概要

正月に神や仏に供えた鏡餅を下げて食べる年中行事。神仏に感謝の気持ちを示し、無病息災などを祈って、供えられた餅を食べる。調理することもしばしば。

江戸時代の武家の風習が一般化したもの。
刃物で餅を切るのは切腹を連想させるという理由から、手や木鎚で鏡餅を割り、その時も「切る」「割る」という言葉を避け、「開く」という言葉を使用する。
なお、鏡は円満を、開くは末広がりを意味する。
また、鏡餅を食すことを「歯固め」といい。硬いものを食べることで、歯を丈夫にし、年神様に長寿を祈るという。

関東を中心とした地域では概ね1月11日に行われるが、他の地域では別の日に鏡餅を食べたりする。

以上、インターネットより。

◆駄文

年末年始の豪勢な余り物も底をついてきた昼下がり。何かないかと、無いと分かっていながら冷蔵庫を開けては閉めを、1時間おきくらいに繰り返している。

そんな事を繰り返して3,4時間ほど、ついには普段は開けない戸棚を開けて見たのだが、そこでその端にとあるものを見つける。
「かーさん?これ、いつの?」
リビングで洗濯物を畳みながら録画したドラマを見る母に向かって問いかける。
「んー?なにー?」
返事は返って来るが、もう既に忙しい母はこちらに向かってくることなんてないので、"それ"を片手に母の元に向かう。
「あー、その鏡餅ね。あったねー、そんなの。」
プラスチックの容器に完璧に密封された鏡餅。というか、縁起物を"そんなの"扱いとは。
「ほら、今ニセモノ飾ってるじゃない?あれを買う前のやつだね。」
といい、棚に飾られた発泡スチロール製の鏡餅を指さす。"ニセモノ"だのなんだの散々な言われようである。縁起物なんだけどな。いいのだろうか、そんなもんで。
というか、あの鏡餅(偽)は数年前に買ってきたものだった気がするので、それより前からこの家にいることになる。となると、一体この餅は何年前のものなのだろうか。
「別に食べちゃってもいいんじゃない?」
と、母。なんて楽観的な。普通に下手しなくとも危険物の可能性がないか?
その鏡餅をクルクル回すと、底の方にかすれた文字列が見えた。
「20**/*2/24」
んー、判断つかねー。1番欲しい情報が不足してる。あと、賞味期限なのか消費期限なのかもわかんねぇ。

……でもなぁ、食べ物を捨てるってのは気が乗らないよな。パッと見て、カビが生えてる訳じゃないし、完全に密封されてるし、別にいいよね。うん。

と、フードロスや環境を気にする振りをして、己の小腹を満たすために包装の端を握り斜め上に引っ張る。

するとどうだろう。
なんと、綺麗に周りだけ外れた。

文字面だけで伝わるかな。あの、わかる?
めくる為のあまりの部分だけが綺麗に剥がれた訳ですよ。つまり、この包装を正当に開ける術を失った訳です。あれだけの覚悟を固めたというのに、固めた分の絶望に打ちひしがれていると、母が言う。

「もうめんどいし、そのまま切っちゃったら?」

ーーー

しばらく後、母の助言通り、プラスチックの容器ごと4等分にされた鏡餅の姿があった。
なんと虚しい光景だろう。
ボロボロになった包装容器をゴミ箱に投げ入れ、電子レンジに餅用のトレーに切り刻んた餅を並べる。
電子レンジの窓を眺める。クルクル回る膨れ上がる餅と、期待。

数日後、彼が腹痛に悩まされることをまだ知らない。

P.S.

滑り込みアウト。

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