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七夕

◆概要

元は中国の七夕が伝わって日本でも行われるようになったのが始まり。ここでは、日本の七夕の概要を述べる。
天の川によって引き離された織姫(こと座の「ベガ」)と彦星(わし座の「アルタイル」)の恋人の出会いを祝う。彼らは年に一度、太陰太陽暦の7太陰月の7日だけ会うことが許されている。
なお、元来は、旧暦7月7日の夜のことで、旧暦7月15日前後にあったお盆との関連がある年中行事であったが、明治改暦で、日本におけるグレゴリオ暦導入されて以降、お盆が新暦月遅れの8月15日前後を主に行われるようになったため関連性が薄れてしまった。同様に明治回歴の影響から、七夕祭りも、新暦または旧暦の7月7日や、その前後の時期に開催されている。

以上、インターネットより。

◆駄文

「お待たせ……待たせちゃった?」
駅前の広場、どこの誰がよく分からない像の台座にもたれかかってスマホを弄っていると、聞き覚えのある声がした。顔を上げて、その声の主を確認した俺は、スマホをポケットに突っ込みながら、
「んー、まぁ、そうね。待ったよ、小一時間くらいね」
と、返す。すると、彼女はひどく困った顔をしながら
「ゴ、ゴメンじゃん……、でも、これでも一応集合時間前なんだけど……」
と返してきた。確かに、集まる約束の時間の10分前。なんなら、彼女の方が常識的な集合時間なんだろう。
「それに、私なんてあなたに1年近く待たされてるんだけれど……?」
今度は頬を膨らませながら、俺の腕をつっつく。俺は、笑いながら
「冗談だよ。こっちこそ、待たせてごめんね」
と、約1年ぶりの再会を喜んだ。
あんな軽口叩いたものの、その実、電車の都合で、少し遅刻するか、小一時間前に着くかしか出来なかった。であれば、小一時間待つ方が良いと思ってのことだ。なんだかんだ自分の判断だ。もしかしたら、集合時間を早めても良かったのかもしれないが、それではこの炎天下に彼女を晒す時間が増えてしまう。それはそれで、なんか違うなと思い、その事実に気がついた後も敢えて彼女に話すなんてことはしていない。
実際、今日もジリジリと焼けてしまいそうな程暑く、皆一様にうちわやハンディファンを片手にしている。彼女の手の中でも、ファンが忙しなく回り、続けている。外に長居は良くないだろう。
「じゃ、少し早いけど行こうか」
俺は、彼女の手を引いて、今日の目的地へと向かった。

「涼し〜い!」
外の暑さとは一転、照明の少ない室内は冷房がよく効いていて、下手をしたら寒いと感じるくらいには冷えていた。
壁面に埋められた水槽には、数多の魚が自由に泳いでいる。
最近街中に出来たこの水族館は、街の中心地に位置しているにも関わらず、沢山の展示がされているということで有名になっている。その為、避暑も兼ねてか、多くの人で賑わっている。
「あ、みてみて!くらげ!」
人混みを掻き分けてズンズンと進んでいく彼女とはぐれないように、気をつけながら先に進む。少し遅れて隣に着くと、彼女は水槽に手を付けながらふわふわと漂うクラゲを眺めていた。
「素敵だよね、くらげって。生まれ変わるならくらげになりたいもの」
「クラゲに?どうして?」
「知ってる?くらげって、死んだら水に溶けて無くなっちゃうんだって。ふわふわ漂って、そうして、そのうち、溶けて消えちゃう。なんだか、とっても神秘的じゃない?」
「まぁ、確かに。そうやって聞くと、儚げで綺麗に感じるな」
俺は水槽の横のプレートを眺める。そこには中に漂うクラゲ達の説明が記されている。
「……案外、似てるかもな。クラゲと」
「え?ホント?なになに、私の儚げで綺麗で触れたら消えちゃいそうな所とか?」
「それもそうだし……ほら、ここを見てみろよ」
俺はクラゲの説明文を指さす。彼女は俺の指先の文章を読んでいく。そしてしばらくして、
「もう!ねえ、それってどういうこと!」
と、分かりやすく怒りながら、「冗談だって」と笑う俺の事をポコポコと叩くのであった。

その後も水族館を堪能した俺たちは、すっかりと陽の傾いた駅前に戻ってきた。
「じゃ、もうそろ行かないと」
その言葉を聞いて、彼女の顔が途端に曇った。
「そう……だよね、遠いから、もう、行かないとだよね……」
彼女は、そんな風に理解を示しているような台詞を並べている一方で、決して俺の腕を離そうとはしない。
「次に会えるのは、いつになりそうなの……?」
「わからない。でも、また1年ってことは無いはずだよ」
「この前もそう言ってたのに」
「ゴメン。先輩が倒れちゃってさ、どうしても俺が代わりに入んないといけなくって」
「……知ってるよ。何度も聞いたもん」
俺は掴まれていない方の手で、彼女の頭を撫でる。
「悪いな、寂しい思いをさせる」
再開した時とは対照的に、彼女は俯き、今にも泣き出しそうであった。
「……電話毎日してくれる?」
不意に顔を上げて、俺の目を真っ直ぐ見ながらそう尋ねる。
「……極力」
「そこは嘘でも、するって言うんだよ!ばかっ!」
彼女は、今日1番の全力で俺の事を叩く。
「嘘は吐きたくなくって……」
「そういうことじゃないよ……んもう」
彼女はまた両手で、俺の事をポコポコと叩く。が、さっきとは対照的に、力は全然入っていない。
「じゃ、もう、本当に行かないと」
彼女から、解放された手を振りながら別れを告げる。
「またね」
彼女は、一瞬その手を離してしまった事を後悔したような素振りを見せたが、直ぐに気を取り直して、
「うん……、またね」
と、少しだけ涙を浮かべながら手を振り返してくれた。
俺はそれを見てから、改札へ進んだ。時折振り返えれば、まだ彼女は手を振り続けていた。
今度こそ、もっと早く会えるようにしなければならないと、強く思うのだった。

P.S.

海月(くらげ)
一般的には刺胞動物門に属する生き物のうち、淡水または海水中に生息して浮遊生活をする種の総称。
体はゼラチン質で柔らかく、透明の種が多く、体の約95%が水分でできている。そのため、1部の種を除いて、死亡するとそのまま水と混ざりながら溶けていく。
形状としては傘のような形をしている種が大半で、傘の下面の中心部に口があることが一般的。
化石が発見されているだけでも5億年、学説では10億年前からほとんど姿を変えずに地球上に存在していたとも言われている。
ウニやヒトデ、イソギンチャク、サンゴなどと同様に、考えて行動するための脳がなく、代わりに「散在神経」と呼ばれるものが張り巡らされている。この散在神経によって、水流や何か物に当たった時などに、反射的に動いている。

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