甲状腺機能亢進症について。その②。

今朝は晴天です。
最高気温も34度ほどで、向こう1週間は代り映えなさそうです。
ただ、今日は午後から局地的に雨が降る予想とのこと。
傘忘れた。

前回から続きです。
Hyperthyroidism.
Cleaveland Clinic.

治療
甲状腺機能亢進症の治療法には以下のものがあります。
抗甲状腺薬 チアマゾール (MMI)またはプロピルチオウラシル (PTU):これらの薬は甲状腺のホルモン生成能力を阻害します。甲状腺を迅速にコントロールします。
放射性ヨウ素: 放射性ヨウ素は過剰に活動している甲状腺細胞にダメージを与え、数週間かけて甲状腺を縮小させ、甲状腺ホルモンのレベルを低下させます。これにより、通常は甲状腺が永久的に破壊され、甲状腺機能亢進症が治ります。この治療を受ける人のほとんどは、正常なホルモンレベルを維持するために、生涯にわたって甲状腺ホルモン薬を服用する必要があります。
手術:  内服治療が奏功しない場合、甲状腺を切除することがあります。これにより甲状腺機能亢進症は治りますが、通常は甲状腺機能低下症を引き起こし、生涯にわたって甲状腺ホルモン薬を服用する必要があります。
ベータ遮断薬:  甲状腺機能亢進症によって引き起こされる心拍数の上昇、神経過敏、震えなどの症状を管理するために使用されます。

妊娠初期などをのぞき、
MMI(メルカゾール)が第一選択となります。
内服開始から2~3か月程度まで、
容量依存性に無顆粒球症(白血球が減る。死亡例もあり)が、
まれ(0.3%程度)におこるので注意が必要です。
重症例では、ヨウ化カリウムを併用して、
MMIの投与量を少なくします(MMI 15mg+ヨウ化カリウム50mg)。
MMI 5mg を隔日投与で6か月経過すれば休薬も可能です。
(最小量維持期間を長く維持したほうが再発が少ないという発表も)

放射性ヨードは、
妊婦、妊娠可能性がある女性、授乳している人、
甲状腺癌(疑)の方には使えません。
18歳以下でも原則使用しません(ほかに治療法がない6歳以上除く)。

手術は甲状腺全摘術となります。
術後は甲状腺ホルモン製剤(チラージンS)の内服が必要です。


治療のリスク
薬の副作用:
甲状腺機能亢進症を治療できる 2 つの薬は、MMIとPTUです。これらの薬は、いくつかの副作用を引き起こす可能性があります。1% 未満の人に影響するまれな副作用の 1 つは、潜在的な肝障害で、PTU の場合は永久的になる可能性があります。もう 1 つのまれ (1% 未満) ですが深刻な副作用は、無顆粒球症 (白血球数の大幅な減少) です。これらの副作用は、どの年齢の人にも起こる可能性があります。妊娠中の人の場合、この薬は胎盤を介して親から胎児に移行する可能性があります。これにより、胎児に甲状腺機能低下症または甲状腺腫が発生することがあります。この副作用のため、妊娠中の人は厳重に監視されます。また、約 5% の人に発生する、これらの薬に対するアレルギー反応の可能性もあります。
放射性物質
放射線が関係する場合は常に、がんの副作用の可能性があります。現在、甲状腺機能亢進症の治療に放射性ヨウ素を使用することとがんを発症することとの間に関連性はありません。これは低リスクであり、起こりそうにないと考えられています。知られているリスクの 1 つは、妊娠中または授乳中の人とその赤ちゃんとの間のリスクです。赤ちゃんの甲状腺に影響を与える可能性があります。放射性ヨウ素 療法後に口の中の感覚が失われる場合があります。数か月続くこともありますが、時間の経過とともに口の中の感覚は戻ります。
手術
感染症や出血など、常に一定のリスクが伴います。まれに、声帯麻痺(話すことができない)や副甲状腺損傷などの合併症が発生し、血液中のカルシウム濃度が低下することがあります。治療後は、一生甲状腺ホルモンを補充する必要があります。

一般的には、
抗甲状腺薬内服治療が選択されるかと思われます。

治療せずに放置すると・・
甲状腺機能亢進症を治療しない、または十分に治療しないと、次のような合併症が起こります。
・心房細動
・脳卒中
・うっ血性心不全
・骨粗しょう症

心房細動(特に高齢者)は、
心臓内に血栓が生じやすくなり、
脳梗塞の原因となります。

甲状腺機能亢進症の危険因子
甲状腺機能亢進症を発症するリスクを高める要因としては、次のようなものが挙げられます。
・甲状腺疾患の家族歴があること
悪性貧血、 1 型糖尿病、原発性副腎機能不全(アジソン病)などの病歴
・食事にヨウ素を多く含むこと
妊娠

特に、
家族歴があるかたは注意しましょう。

予後
甲状腺機能亢進症は管理可能で治療可能な病気であり、ほとんどの人は治療を受ければ良くなります。治療法によっては一生薬を服用する必要がありますが、甲状腺ホルモンのレベルは正常になります。

内服で治らない場合も、
手術などの治療があります。
早めに疑って受診するのが大事です。


甲状腺機能亢進症の合併症
甲状腺クリーゼは、甲状腺機能亢進症のまれではありますが深刻な合併症です。甲状腺が短時間に大量の甲状腺ホルモンを生成し、放出すると発生します。甲状腺クリーゼは生命を脅かす緊急事態であり、直ちに診療を受ける必要があります。症状には以下のものがあります:
高熱(40度以上)が一般的。
・心拍数が1分間に140回を超える急速な状態(頻脈)。
興奮したり、イライラしたり、不安になったりする。
せん妄
・うっ血性心不全。
・意識喪失。

甲状腺機能亢進症の原因の 1 つであるバセドウ病の合併症は、バセドウ眼疾患 と呼ばれます。この病気は通常は予防できません。バセドウ眼疾患は、以​​下の合併症を引き起こす可能性があります。
・目が飛び出ている。
・視力喪失。
・複視。
・光に対する過敏症。

甲状腺クリーゼは年間250人以上発症、
致死率10%以上と、重篤な疾患です。
早期診断、治療が必要です。

その他
・女性の不妊症を引き起こす可能性がありますか?

甲状腺機能亢進症の症状の 1 つに月経不順があり、妊娠が困難になることがあります。妊娠に問題があったために精密検査を行い、甲状腺の病気について知る場合もあります。
妊娠中に甲状腺機能亢進症を発症する可能性はありますか?
妊娠初期には、胎児の発育を助けるために、通常よりも多くの甲状腺ホルモンを生成する必要があります。甲状腺ホルモンレベルが急激に上昇した場合は、胎児にも影響が及ぶ可能性があります。妊娠中は甲状腺ホルモンのレベルが自然に上昇し、妊娠による他の症状によって甲状腺機能亢進症の兆候が隠れてしまうため、甲状腺機能亢進症の診断は難しい場合があります。

妊娠初期に、
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが高値になりますが、
hCGはTSHレセプター刺激作用を持ちます。
約5%の方が妊娠性一過性甲状腺中毒症を発症します。
妊娠14-18周でfT4は正常値となります。
甲状腺腫大や目症などはみられません。


甲状腺機能亢進症の場合、避けるべき食品は?
食事でヨウ素を豊富に含む食品やヨウ素を強化した食品を過剰に摂取すると、甲状腺機能亢進症を引き起こしたり、場合によっては症状を悪化させたりすることがあります。国立衛生研究所 (NIH) によると、ヨウ素の 1 日の推奨摂取量は約 150 マイクログラム です。妊娠中の人の場合、1 日の摂取量はさらに多くなります。ヨウ素の少ない食事では、さらに少ない量で済みます。魚介類にはヨウ素が最も多く含まれています。海藻 1 グラムには 23.2 マイクログラム (mcg)、つまり 0.02 ミリグラム (mg) が含まれています。医師や栄養士から低ヨウ素食を勧められた場合は、以下の魚介類や魚介類添加物を避けるようにしてください。
・魚。カニ。ロブスター。エビ。
・海藻。藻類。アルギン酸塩。海苔。昆布。

他にも、次のような食品にヨウ素が多く含まれています。
・牛乳および乳製品。チーズ。卵黄。ヨウ素添加塩。

厚生労働省では、成人では推奨量130μgとしています。
耐用上限量は3000μg(NIHの安全な上限値1100μg)となっています。
昆布、カットわかめ、ヒジキは控えめのほうがいいかも。


その他、
喫煙はリスク因子として知られています
(受動喫煙含む)。
バセドウ病発症リスクが3倍となり、バセドウ眼症も4倍となるそうです。
治療抵抗性となり、再発率もあがるとのこと。
周囲の人も含めて、
禁煙を。

ストレスも増悪因子となっています。
バセドウ病の方は、
高い頻度で抑うつ、神経症的などの心理特性がみられます。
十分な睡眠、ゆったりとした生活を心がけましょう。

くわしくは、「バセドウ病治療ガイドライン2019」をご覧ください。

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