低脂血症について

そろそろ、朝晩は冷え込みがつよくなってきました。
冬型の気圧配置が強まり、日本海側は大雪の予報です。
都内は日中は10度超えなのでそれほど、
寒くはないようです。

本日は、
検診でたまに見かける低脂血症。
特に症状もないのですが、
検診の判定ではD判定となるので、
気にして来院されるかたが、
ちらほらいらっしゃいます。
脂質が低いと何か問題があるのでしょうか?

Hypolipidemia.
MSD manual Consumer version.

低脂血症は、血液中の脂質濃度が異常に低下した状態(総コレステロール120mg/dL未満、または低比重リポタンパク質[LDL]コレステロール50mg/dL未満)です。

人間ドック学会の判定区分(2024年度版)では以下の時、
要精査(D)になります。
中性脂肪(TG) 29以下、HDL 29以下、LDL 59以下

国内の基準では、
低脂血症はTCが120mg/dL未満,TGが40mg/dL未満LDL-Cが70mg/dL未満を基準とし,低HDL血症はHDL-Cが40mg/dL未満を基準とする。
(低脂血症日本医時新報社)

微妙に数値が異なります。

どれくらい珍しいのか、
統計を取った記事があります。

2013年11月に実施した「国民健康・栄養調査」によれば,
男性5.7%,女性3.9%が低LDL血症(Friedewaldの式)
男性0.4%,女性0.0%が低TC血症
男性3.7%,女性9.5%が低TG血症(TGが50mg/dL未満)
男性12.1%,女性3.2%が低HDL血症と報告されている。
(低脂血症日本医時新報社)

低LDLは男性で約6%、
低TGは女性で約10%
ならそれほど珍しくないでしょうか。



血液中の脂質が少ない原因としては以下のものがあります。
①原発性(遺伝性疾患)
②続発性(別の病気による)

脂質濃度が低い場合、それが原因で問題が生じることはめったにありませんが、別の病気が存在するかもしれません。例えば、コレステロール低値は以下のような状態を示している可能性があります。
・貧血
・がん
・C型肝炎などの慢性感染症
・消化管での吸収不良
・甲状腺機能亢進症
低栄養

痩せている方に多いので、
低栄養(食事をあまりとらない)のことが多いような。
たいていそういう人は、前のデータでも低め安定です。

肝硬変や甲状腺機能亢進症、
炎症反応(CRPや白血球等)は調べておいてもいいかも。

急にTCが低下した場合は,悪性腫瘍の検索をしましょう。

HDL-Cの低下は,
冠動脈疾患との関連が認められていますが、
LDLやTGが低いからといって、
それ自体が何か問題があるわけではありません。

まれに遺伝性疾患が原因の時があり、
家族歴も聞きます(たいてい、わかりませんと言われる)。

無ベータリポタンパク血症や低アルファリポタンパク血症などのまれな遺伝性疾患では、深刻な結果を招くほど脂質濃度が低下します。PCSK9(前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)遺伝子に変異がある場合、脂質の値が低くなることがありますが、深刻な問題には発展せず、治療も必要ありません。
・無ベータリポタンパク血症(バッセン-コーンツヴァイク症候群)
LDLコレステロールが存在せず、体はカイロミクロンや超低比重リポタンパク質(VLDL)をつくることができません。その結果、脂肪と脂溶性ビタミンの吸収が大きく損なわれます。症状はまず乳児期に現れ,発育が不良になります。
・カイロミクロン停滞病(アンダーソン病)
体内でカイロミクロンをつくることができなくなる病気です。
・低ベータリポタンパク血症
低ベータリポタンパク血症では、LDLコレステロール値が非常に低くなります。症状はみられないのが普通で、特に治療は必要ありません。非常に重度の場合は、無ベータリポタンパク血症と同様の症状が現れます。

遺伝性疾患については、
非常に稀、
かつ乳幼児期に症状が出るので、
検診で気にすることはないかも。

例外として、
家族性低ベータリポタンパク血症
は、
ヘテロ接合体型(遺伝子の片方だけ異常あり)の場合、
500-1000人に1人の発生頻度なので、
そこそこはいるようです。

特に症状もなく、
治療も不要ですが、
原因遺伝子が3種類あり、
①APOB、②PCSK9,③ANGPTL3

APOBの変異は、脂肪肝が生じやすいので、
生活習慣病の予防が必要です。



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