見出し画像

不同視弱視の心当たり 8.より早く気づき、手当していける世の中になってほしい

こんにちは。近藤ろいです。
2025年になりました。
今年もどうぞよろしくお願いします。

年をまたいでシリーズをお送りしてしまいましたが、続きをば。


今5歳の上の娘は弱視治療をしています。
「遠視性不同視弱視」といいます。
左目が強い遠視であまり見えておらず、治療をしなければ将来眼鏡をかけても視力が出ないかもしれない状態です。
普通の3歳児健診で発見されました。

このシリーズでは、「0~3歳の間に親が気づける兆候はなかったのか?」ということをお送りしてきました。

前回は少し特殊で、臨床心理士でもある親として感じる行動・精神発達・性格のアンバランスさから気づければ良かったのに…という後悔を綴りました。

今回はその続き。「発達相談にはかかっていたので、見抜ける機会はなかったのか」という話と、
今後の社会への期待を語り、一旦の締めくくりとします。

複数の心理士が陥った「お母さん楽になっていいんですよバイアス」


上の子は育てにくい子でした。
0歳児の時はとにかく、寝ない。
「赤ちゃんが5分で眠る癒しの音楽」のYouTube3時間半を何回最後まで聴いたことか。
夜明けまで夫婦で交代で抱っこしてユラユラし続けた日もありました。

この時点で「発達障害じゃないかな?」と不安になりましたが、
生後2ヶ月くらいから母親を目で追うようになったのをはじめ、
ちゃんと生後10ヶ月くらいで三項関係も成立し始めたので
自閉症ではないなあと安心しました。

時期を同じくして、とにかく離乳食を食べない。
パン粥も味の濃いめのものも市販の離乳食もハイハインも「エッ」とそっぽを向いて、
何も口にしません。
1歳3カ月になり「イヤ」が言えるようになったのと奥歯が生えたのとが同時に起こり、
多少は解消されたのですが、次は壮絶なイヤイヤ期が始まりました。

こうした1歳以降〜4歳くらいまでの親子関係の不安や育てにくさは、夫にはもちろん、
市の保健師さん、心理士さんや、保育園に時々来られる心理士さんにも相談していました。

辛かったし、我が子に起きていることを理解してあげたかったし、
いくら臨床心理士として自分なりの見立てを持っていても、
やはり第三者の冷静な目で見て頂いて、風通しを良くしておいた方がよいと思ったからです。

「親が気づいていないだけで、実は軽い自閉スペクトラム症などがあり、賢いけど情緒的な機微は理解できなくて負荷がかかっているのか?」
という想定までしていました。


相談結果としてはいつも
「いいえ、発達障害ではありませんよ?」
「知能も平均以上はあると思います」
「お母さん、お子さんに理想を求めていませんか?」

いいえ!
3歳半になるうちの子は
保育園で自分の思うようなタイミングでお迎えに来たのが気に食わなかったと家に入るのを拒否し、
玄関で晩御飯を食べる子なんです!

塩気が美味しいからと、乾燥わかめのみでお腹を満たそうとする
こだわりの強いこの子に私は日々振り回されています!
育てづらいんです!!

しかし言われるのは、
「この子はやっぱり、発達障害ではない」
「お母さんがんばりすぎていませんか」

この2点が中心でした。

"不同視弱視で片目が見えていないから、不安が高い"という仮説は
私も専門家も思いつくことができませんでした。


「普段接しているからお母さんは娘の身体のことはわかっている」という思い込み
「お母さんは子どもに高い期待を持ちすぎないように、ありのままで」美徳

というバイアスにより、
アンバランスさを感じていてもその原因が片目弱視だとは、誰も思いつかなかったのです。

今から思えば、我が子には左右差がありよく見えていない、立体視ができない、片目だけを使う場面では極端にやりづらさを感じるなど、
本人も言語化できないような負荷があったのではないかと思います。
それをうまく言えないわずらわしさも。

結局、私も含めて複数の臨床心理士が、子育てのしんどさの裏に視力の問題があることを
見落としたことになります。

だって思ってもみないものねえ。
「なんか育てにくいんです」
「お母さん大変ですね」の時代で、
「片目が弱視なのでは?」なんて思わないもの。

でも、割を食うのは子ども本人なのよねえ。

そして、発見されたうちの子は眼鏡を掛けるようになり1年が経ちます。

上記のような性格行動面はまだありますが、
随分落ち着きました。
何より本人が心からの自信に溢れています。

眼鏡を掛けたから全て解決、ではないと思っています。

でも、「そうか、私は目が悪かったから色々しんどかったんだ」と形が見える納得の材料があることで、本人も落ち着いたのではないかなと思っています。

遠視性不同視弱視がわかってから振り返ると
「子育てについてのあれっ?と思っていたこと、
相談したけど『心配しすぎ。個性の範囲内かな』と思ったことは多々あったけど、
 あれもこれも視力のせいだったのかな?」
と思う要素が出てきて、焦りました。

ただ、ランダムに出てくる子育ての「あれっ?」を拾って、
「これは、遠視性不同視弱視があるに違いない!」と気づくのはとても困難なことです。

一方で、親である自分がまず見抜いてあげられなかったことは、それなりに心に刺さりました。


たくさんの人との偶然の出合いに支えられてここまでこられた

わが子は3歳児健診で幸い発見されましたが、
・家での視力検査で感じた違和感を保護者が拾って保健師に伝えた
・保健師が丁寧に屈折検査をしてくれた
・専門医にスピーディーにかかれた
・家族全体で眼鏡や視力差を理解し、受け止めていけた
・保育所の理解と協力
など色々なラッキーと、様々な立場の方からの助力もあり、
今に至っていると思います。

同じく子育ての「あれっ」と感じて、キーワードで検索された時、同じように、

根底に遠視性不同視弱視があるのかもしれない

という早期発見・理解・支援につながればと思い、
このブログを書いています。

「何か育てにくい」と思いつつも、うちのように原因が見つからず、「お母さんの理想が高いのでは」などと言われ、親子ともども傷つきながら何とかやってきた家庭の中には、見過ごされてきた片目弱視の存在があるかもしれません。

終わりに ー弱視の子は毎年1.5万人増えるという現状に思う

このサイトをオープンした令和4年度の出生数は77.7万人。一方、弱視の子どもは50人に一人、人口の2%はいるといわれています。

2%って結構な数字で、毎年1.5万人強が弱視と検出されることになります。

不同視弱視の場合は、治療成績50%。

つまり1.5万人のうち7,500人は苦労の果てにそれなりの視力を得ますが、7,500人は眼鏡を掛けても視力が上がらないまま、
さりとて指定難病とも身体障害とも言われず福祉にかからないまま生涯を過ごすことになります。

これって結構な人数で、かなりの社会的損失なんじゃないか。

わが子含めて、もしかしたら優秀な医者になれるだけの知能と体力と技術があるかもしれないのに(!?)、
或いは月面着陸できるロケットを考案・作成・操作できる技能があるかもしれないのに、
視力のせいで可能性が潰されていくのです。

子どもの弱視について、もっと社会全体で驚いたり、治療成績を上げるための研究をしたり、その情報を親も知れるように共有してもいいのでは?

…という思いから、弱視治療に関しては全くの素人である「親」の立場から、継続できそうな布アイパッチの提案や、乳幼児期の気づきにつながるような要因をこうして公開しています。

今は私一人のかそけき叫びですが、いつかは社会全体の子どもの利益につながることを願ってやみません。

近藤ろい





これで開設当初に書き溜めた記事は一旦終わりました。
次は溜まっているアイパッチ作り(ディズニープリンセス仕様)の作ったよレポートのシリーズをお送りしようと思います。

気がつけばサイト開設から1年が過ぎていました。
運営こそ1人ですが、見ていただける、声を掛けていただける仲間あってここまで来られました。
ありがとうございます。


最後に…以下宣伝です

3歳児健診で見つかり、治療を受けることになった経過を描いた絵本を作ってみたり(有料販売しています)、

簡単にできる布アイパッチの型紙を提案したり、

習慣化アプリ 「みんチャレ」で励ましあうチームを作ったりしています。

ではまた〜!