(メモ)米FRB 金融安定化レポート(2021年5月)
金融規制分野の仕事に関わってたこともあり、各国中銀が定期的に公表する金融安定化レポートは業務上も時折目を通していた。金融当局が考える最新の重要なトピックを洗えるため、全体的な視野を養うのに非常に重要なものだと思われる。
個人的な興味もあり、標題レポートのポイントを私の独断と偏見でまとめてみた。個人的なメモなので、適当なのはご了承ください。
5月6日、米FRBは標題レポートを公表。
https://www.federalreserve.gov/publications/files/financial-stability-report-20210506.pdf
1. 資産の評価。 2020年11月以降、ファンダメンタルズの改善に伴い、リスク性資産の価格は全般的に上昇。ファンダメンタルズの改善に伴い、リスク資産の価格は11月以降おおむね上昇しており、一部の市場では、予想されるキャッシュフローと比較して価格が高くなっている。長期国債の利回りは過去数ヶ月間に上昇したが、歴史的に見て低い水準に推移。歴史的に見ても低い水準にある。資産価格の高さは、財務省の利回りが引き続き低水準であることを反映している部分もある。しかし、一部の資産のバリュエーションは、財務省の利回りを考慮した指標を用いても、過去の基準に比べて高い。このような状況では、資産価格は このような状況では、リスク選好度が低下した場合、資産価格は大幅に下落する可能性。
2. 企業および家計の借入状況。 企業の借入金は、2020年後半にはほぼ横ばいとなり、国内総生産(GDP)比で高水準を維持し、GDPに比べて高い水準にあります。収益の改善、低金利、政府の継続的な支援により、企業の債務返済能力は高まっています。企業の債務返済能力は高まっています。家計の負債は、所得に比べて中程度の水準にとどまりました。住宅ローンやその他の消費者債務の延滞件数は、パンデミックの初期に減少しました。パンデミックの初期には住宅ローンなどの消費者債務の延滞が減少し、パンデミック前の水準を下回っています。これは、家計が猶予制度や財政措置など政府の支援を大きく受けたことや、金利が これは、家計が猶予制度や財政支援制度などの政府による多大な支援を受け、金利が低水準で推移しているためです。しかし、一部の企業や家計は依然として大きな負担を強いられています。
3. 金融セクターのレバレッジ。銀行の資本は引き続き充実しており、ブローカーディーラーのレバレッジは低い水準です。ヘッジファンドのレバレッジは過去の平均値をやや上回っていますが、入手可能なデータでは、ヘッジファンドやその他のレバレッジされたファンドの重要なリスクを捕捉できていない可能性があります。投資家のリスク許容度が高まる中、CLO(Collateralized Loan Obligation:債務担保証券)やABS(Asset-Backed Securities:資産担保証券)の発行は堅調に推移しています。
4. 資金調達リスク。国内銀行の資金調達リスクは、短期のホールセール資金への依存度が低いことや、高品質の流動性資産を大量に保有していることから、低い水準を維持しています。しかし、パンデミック発生時の市場の混乱は、一部のMMF(マネー・マーケット・ファンド)や債券・銀行ローンの投資信託に残る構造的な脆弱性を浮き彫りにしました。
上記の現状認識のほか、短期的なリスクは変わっており、感染症の影響でリスクが継続している状況を指摘。また国際的な金利上昇が起きた場合に新興国の経済に与える影響が懸念され、米国にも作用する可能性もある。
P42では、昨今話題となるアルケゴスについても、以下の言及。(日経はアルケゴスに触れてましたね。)
「また、3月下旬には、レバレッジの高いファミリー・オフィスであるArchegos Capital Managementが、プライム・ブローカーから調達したトータル・リターン・スワップ契約やその他のポジションに関するマージン・コールに対応できず、いくつかの銀行が大きな損失を被りました。アルケゴスが保有していた集中的な株式ポジションの価格下落がマージンコールの引き金となり、株式ポジションの売却を促した結果、影響を受けた株式の価格がさらに下落し、最終的に一部の銀行が多額の損失を被りました。広義の市場への波及効果は限定的であったが、このエピソードは、NBFIにおける重大な苦境がより広範な金融システムに影響を与える可能性を浮き彫りにしている。」
P62では市場参加者へのサーベイ等を通じた潜在的なリスクも変化している点も今日深い。昨年秋は大統領選もあり、政治の不確実性がトップであったが、現在はワクチン耐性の変異種がトップ。
やはり、今回の危機は金融危機ではなく、ウイルスによる実体経済の危機であるため、金融監督の観点からの支援というのは限界があり、金融政策で各種サポートを行っても、様々な副作用とどう向き合うかというような問題でもあるように感じる。
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