![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/123946013/rectangle_large_type_2_59fb1b6ce9e3246a06e874a8d9aa5939.png?width=1200)
Photo by
sakozou
弱肉強食
「弱肉強食」
それは、弱い者の肉を強い者が食べるという意味の言葉です。
。。。
ある日曜日の午後。
強い者のお父さんがぐうっと背伸びをしてから言いました。
「おい、強い者。今日は外食にするか」
強い者はとても喜びました。
外食の日はいつも、みんなで車に乗って遠出をして、国道沿いのファミリーレストランに行くからです。
「うん。行く」
こうして強い者は、お父さんとお母さんと強い者と妹の4人で車に乗りました。
「今日はどこに行こうか」
お父さんがそう言うので、強い者はびっくりしました。
「国道沿いのファミリーレストランじゃないの?」
強い者の言葉にお父さんとお母さんは顔を見合わせて笑います。
「他のお店に行ってもいいんだよ。強い者は何が食べたい?」
強い者は悩みました。
強い者が喜んだのは「みんなで車に乗って遠出をして、国道沿いのファミリーレストランに行く」からなのです。
何かを食べたかったわけではありません。
強い者は悩みながら答えました。
「弱い者の肉」
強い者のお父さんとお母さんは驚きました。
普通ならハンバーグとかステーキとかスパゲッティーが食べたいと言うものです。「弱い者の肉」なんて子供らしくない答えだと思いました。
「わかった。じゃあ今日は弱い者の肉を食べに行こう」
「うん」
強い者のお父さんは少し嬉しそうに、その交差点を右折します。
強い者の妹は何か言いたそうでしたが、黙ってただ後ろへ流れる景色を見つめていました。
。。。
残酷なことですが、こうして世界は成り立っているのです。
(おしまい)