#8_番外編_人生の経営戦略
今回取り上げるのは、『人生の経営戦略』
表紙にある「最も苦しく、最も面白いプロジェクトは人生だった。」が目に飛び込み、即ポチ。
確かにそうだ。企業は経営戦略を立てるが、企業も法「人」、長い企業の一生をどう成功に導くかを考える。人も同じ。当たり前と言えば当たり前だが、その発想に飛びついた。
企業経営にジレンマがあるように、人生においてもジレンマはあるだろう?あるはずだ。それを探したく、一気に読み進め、まとめてみた。
・なぜ今、人生の経営戦略なのか?
マネジメントとは、「思い通りにならないことをなんとかする。」ことだという。つまりは、ものごとが計画通りに進んで、管理、統制されていればマネジメントは必要ない。
だが、人生、計画通りに進むわけはなく、人生の中で一番長い時間をかけて考え続けているプロジェクトは、人生の経営戦略(ライフ・マネジメント・ストラテジー)であり、思い通りにならない人生をとにかくなんとかすることである。
最大の問題は、低成長そのものではなく、「無限の成長を期待している社会の制度や規範」と「ゼロ成長の均衡へと軟着陸しつつある現実の社会」とのあいだで様々な歪みが生まれてきており、この歪みによって私たちの人生が翻弄されていることにあると著者は述べている。そんなつなぎ目の社会に私たちは生きている。
ゼロ成長社会とは、「成長・発展している場所」と「停滞・衰退している場所」との明暗が極端に分かれている社会である。よって、個人の居場所の選択、経営戦略でいうポジションニングが大きな影響をもたらす。
私たちは自分自身の人生というプロジェクトの唯一の責任者であり、リーダーである。そのような立場にある私たちが自己のわがままに忠実になって発言し、離脱することによって、最終的には組織や社会にとっても良い状態が生まれる。
プロジェクトのデザインは、「ゴール設定」、「プロセス設計」の2つが重要であり、人生のプロジェクトにおいても重要となる。
世で言われている人生論の2大潮流は、どちらも問題がある。
①残酷な社会ゲームを冷徹に戦って生き残り、経済的・社会的成功を手に入れろ
→仮に実現できたとしても幸福な人生に直結しない。ゴール設定の問題
②経済的・社会的成功の虚像に囚われず、自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろ
→一定の経済的・社会的基盤があってこそ獲得できるものであり、人生プロセスは容易ではない。プロセスの問題
2大潮流にある「自分らしく生きる」と「経済的・社会的に成功する」の両立を目指す二律背反を壊すのがイノベーションであり、「自分らしいと思える人生を歩み、経済的・社会的にも安定した人生を送る」ことが3つめの人生論である。
・目標設定について
良い戦略の前には良い目標がある
・パーパス
「時間資本」を適切に配分して、持続的なウェルビーイングの状態を作り上げる。
他社や組織や社会は自分ではコントロールがでいないものであるが、自分でコントロールできる戦略変数は「時間資本」であるため、人生の経営戦略を考える際には、どのように配分するかが中心的な論点となる。
スキルや知識といった「人的資本」への転換
「成長・発展している場所」へ身を置き、「人的資本」への転換効率を高める。
信用や評判といった「社会資本」
「人的資本」が「社会資本」を生み出す。「人的資本」に裏打ちされた高い水準のパフォーマンスやアウトプットによって初めて構築される。
直接的に「時間資本」を投下しても「社会資本」の構築は進まない。
「金融資本」
「社会資本」が「金融資本」を生み出す。
「社会資本」の裏打ちがないままに直接「金融資本」を増やそうとしても効率が悪い。人的資本は外側からは見えない。
切り口を変えると、最終目標である持続的なウェルビーイングの実現に向けて、2種類の資本がある。
・「仕事をする上で役立つ資本」:「社会資本」や「金融資本」を通じて間接的にしかウェルビーイングの実現に貢献しない。
・「人生を豊かにしてくれる資本」:直接ウェルビーイング構築に貢献する。
ものがある。
「時間資本」を仕事をする上で役立つ資本に偏って投下してしまうと致命的なミスを犯してしまう恐れがある。
ウェルビーイング実現のための鍵
・自己効力感を得る
→人的資本に関係
・社会的つながりを得る
→社会資本に関係
・経済的安定性を得る
→金融資本に関係
金融資本は、ウェルビーイングを生み出すための一要素でしかない。
自分にとって本当に大切なもの、自分が本当に実現したいことに時間資本を配分をマネージするしかない。
・長期計画について
・ライフ・サイクル・カーブ
長期間にわたるプロジェクトのため、計画が必要
人生には、春夏秋冬がある。ライフ・サイクル・カーブでいう導入期、成長期、成熟期、衰退期。
「人生の春:試す」
様々な物事に取り組む過程を通じて、次のステージにおいて追求すべき方向性やテーマを見つける。
「人生の夏:築く」
ここと決めた領域に自分の時間や労力といった資源をレーザーのように集光させ、人的資本と社会資本を築いていき、人生の秋、冬以降の下地を作る。
「人生の秋:拡げる」
人生の夏において築いた人的資本、社会資本を足がかりに本業以外の領域に仕事のポートフォリオに拡げ、トランジットをスムーズ、実り豊かなものにするための仕込みをする。
「人生の冬:与える」
これまでの人生で培ってきた様々な経験によって結晶化された知恵を基に後進にアドバイスを与え、活躍の機会を与え、成長につながるフィードバックを与える。
寿命が伸長している現在のような社会では、ある程度の年齢に差し掛かってから「人生の春」をもう一度繰り返す「人生の二毛作」のような生き方も十分にあり得る。
どのような考え方、構え方、動き方が適切なのか、不適切なのかというのは、その人のライフ・ステージによって全く異なる。
人生のステージに応じて役割や貢献が大きく変わる。ステージが変わっているのにもかかわらず、従前の働き方や生き方をしていれば、やがては環境が求める役割や期待を満たすことができなくなり、その人の社会資本は毀損していく。組織や社会における職位や期待される役割の変化である社会的な条件、体力や知力の変化である身体的条件が絡んでくる。
ステージに応じてゲームの種目が変わり、そこで求めれらる人的資本や社会資本が変化する。
長期の営みのため、短期の合理に歪められて繰り返していれば、持続的なウェルビーイングを実現する目標はおぼつかない。長期の合理が重要である。
・キャズム
成長市場が爆発的に成長しているのは実は一瞬と表現してもいいほど、短い期間しかない。
時期尚早でなければ勝てない。キャズムの一瞬で捉えてアドバンテージを得ることができない。
かといって、早すぎるのも問題。
はっきりした兆候が目に見えるまで待っていたら手遅れだけれど、市場の胎動が始まる前に動き出してもうまくいかないため、兆しを捉えるしかない。
世界のある特定の場所には、これからやってくる未来がすでに出現しつつある場所がある。その場所に身を置き、そこにいる人々が何を話題にし、どのように振る舞っていることで、これからやってくる兆しを捉えることができる。
・適応戦略
人生は非常に長い期間にわたるプロジェクトのため、初期段階にいくら精緻にポジショニング戦略を構築しても、様々な偶発的な出来事によってその戦略は大きな変更を、場合によっては破棄することを余儀なくされる。
避けることができない以上、影響を最小化することを考えるよりも、むしろ想定外の偶発事象を計画に取り込み、戦略や戦術を進化させることを考えるべき。
人生は、膨大な仮説の集合体としてスタートし、仮説のひとつひとつを検証し、破棄・修正することでしか前に進んでいけない。
想定外を逆手に取り、しなやかな姿勢を持ち、適応戦略を実行する。
現在のように不確実性が高まっており、長期の見通しが立てにくい社会を生きていく上で、適応戦略は必須で求められる。
・職業選択について
・ポジショニング
プロジェクトの収益性は、立ち位置によって決まる。
今後、同じスキルや知識を持った人間がどのくらい増えるのか。需要に対して過剰に供給されるスキルや能力の価値は必ず低下する。
市場における価値は、能力や知識の水準ではなく、需要と供給の関係によって決まる。
勇気や度胸ではない。自分の居場所の趨勢についてどれだけ論理的に考えられるか。ポーターの5つの力でいえば、「競合との競争」と「代替品の脅威」は人生の経営戦略において非常に重要である。
スキルや知識を持っている人がどれくらいいるのか、増えるのか。需要に対して過剰供給されるスキルや能力の価値は必ず低下する。能力を変えるより立地を変える。
どこがその人にとって最適化は先験的にはわからない。今いる場所から色々な場所をみてみないと自分の立地は見つけられない。
・内発的動機付け
外発的動機で動く人=頑張る人は、内発的動機で動く人=楽しむ人には勝てない。
報酬は必ず必要ではあるが、超長期にわたる人生プロジェクトを通じてパフォーマンスを維持することは難しい。
・リソース・ベースド・ビュー
調達困難性、つまり、手に入らない資源や能力が大事である。
「自分の強みは何か?」という問いについて考えるのを止めて、「他の人にはなに私のユニークな特徴は何か?」を考え、その特徴をどうやってキャリアや仕事につなげていけるかを考えるべきだということになる。
自分で自分のプロデューサーになることが求められている。
社会で評価されるのは、平均点ではなく、他人には真似できないユニークさ。
調達困難な資源や能力は、時間資本を大量に投下しないと獲得できない資源や能力のことのため、着目すべきは長く続けてきたこと。
・イニシアチブ・ポートフォリオ
仕事のポートフォリオを持つことは、成長の機会、キャリアの多様性、人的ネットワークの構築、リスク分散のメリットを享受でき、人的資本、社会資本、金融資本にポジティブな影響をもたらす。
世の中には理想の職業などというものはない。私たちの虚像でしかない理想の職業を追い求めるよりも、複数の仕事の長所と短所を補完的にうまく組み合わせることを追い求めるべき。自分の時間資本の投資配分に関する自身によるガバナンスを効かせるツールが、イニシアチブ・ポートフォリオである。
とはいえ、過度な分散投入は、集中していれば達成できたはずの成果や得られたはずの成長が中途半端なレベルで終わってしまうリスクがある。
・選択と意思決定について
・ブルーオーシャン戦略
自分ならではの組み合わせをつくる。新しい価値の組み合わせではなく、「既知の価値」の「新しい組み合わせ」を創出する。
掛け合わせる要素は、必ずしも超A級トップクラスでなくてよい。
ユニークな組み合わせは、他人にとって模倣できないこと、他人が簡単に獲得できない知識やスキルや感性、大量の時間資本を投入しなければ獲得できないこと。つまりは、その人がずっとやってきたことの中にこそ、組み合わせの鍵がある。
・創造性理論
創造性を向上させる上での鉄板のアプローチは、とにかくたくさんのアウトプットを出す。
追い求めるのは、打率ではなく打席の数
極めてダメなアウトプットは無視されすぐに忘れ去られるのに対して、極めて優れたアウトプットは、その人の社会資本を一気に厚くして、生涯にわたって金融その他の資本の形成に貢献してくれる。
優れたアウトプットがもたらすリターンは、その後の人生の長きにわたって社会資本となる。
ダメなアウトプットがもたらすロスは、年齢を経れば経るほどに大きくなる。
成功・失敗の確率は人生を通じて一定であるが、失敗のコストは人生の後半になればなるほど高くなる。
打率はどうしても運が関わってくるため、高めることは容易ではないが、自分たち次第で、打席の数は増やすことはできる。
・絶対優位の戦略
パフォーマンスを上げる選択肢とゲームに勝つ選択肢は異なる。
私たちはしばしば、自分がいったいどのようなゲームを戦っているのか?という点から遊離して、目の前の仕事のパフォーマンスを上げることに近視眼的に追求しまいがちだが、パフォーマンスが上がったとしても肝腎要の人生のゲームに敗北してしまっては元も子もない。自分の目の前にある選択肢について考察するリテラシーを持つことで、ゲームに勝つことよりもパフォーマンスを優先してしまうミスを防ぐことができる。
・正味現在価値
将来生み出す価値に着目して時間配分をする。
当座に発生するコストの大小と当座に発生する効果の大小に大きく意思決定を左右される現在のバイアスをもっている。
割引率や期間という概念を盛り込むことで、短期の価値とは異なる側面が浮かび上がることは常に念頭に置くべき。
正味現在価値の大きな投資は、リターンの期間の長いリベラルアーツであると述べている。長らく有効であったものほど、将来にわたって長らく有効である可能性が高いからだという。
・オプションバリュー
常に選択肢を複数持つ。
成功者ほど、オプションバリューを保ちながら、リスクをコントロールして起業をしている。
例えば、ビルゲイツは、マイクロソフトの起業にあたって、ハーバード大学を退学したわけではなく、休学しており、起業がうまくいかなかった場合はすぐに大学に戻ることができる選択肢。つまり、オプションバリューをもっていた。
いわば、本業を持ち、リスクをコントロールしながらサイドプロジェクトとして起業し、その起業が成功したことで、徐々に本業から足抜けをしていった。
本業を止めて起業に専念する人の方が大胆にリスクを取って果敢に挑んでいるイメージを持つが、ある研究結果からは実は真逆の傾向であった。本業を続けながら起業をした人ほど副業で大胆なリスクを取ることができた。
常に、修正、撤退、転身のオプションを自分の手元に持っておくことが、現在の不確実性の高い世界で生きるためには求められる。
・学習と成長について
・バランス・スコア・カード
ライフ・マネジメント・ストラテジーにおいて重要になってくるのが、自分なりの成功のものさしは何か?という点を考えること。
目標の設定を外せば戦略をどんなに精緻に作ってもプロジェクトは必ず破綻してしまう。
他社から与えられたモノサシを受け入れてしまえば、長期的には必ず「モノサシを作る側=支配者」と「モノサシを受け入れる側=非支配者」という関係が成立してしまう。
人生の良し悪しを測るための指標は、決して他社から与えられるべきではなく、自身が考える自分にとってのウェルビーイングとは?という問いから生まれたものでなければならない。
・ベンチマーキング
行き詰ったら素直に真似てみる。
まずは課題を特定する。その後、その課題を解消するためのベンチマーク対象を選出する。選出する際には、能力は簡単には真似できないため、行動と時間配分に着目する。
一般的に意識を変え、その後で行動が変わると考えてしまいがちだが、なかなか意識の保守性により意識を変えることができない。意識が変わらなければ当然に行動は変わらない。行動が変わらなければ結果も変わらず、そして人生も変わらない。
そこで、行動を変えることからやってみる。行動により結果が変わることで最終的に意識が変わることを目指す。
・経験学習理論
経験とは、良質な失敗。
こうなるはずだと思ってとった行動が、思いかけず想定外の結果を招いた時、人は自己システムの変容を促すようなきっかけを得る。
特に若いときの失敗は、失敗がもたらすリターンの期間が長期化するため正味現在価値が大きい。
組織において経験を与えることで人的資本が増加するが、経験のデフレが進行している日本の会社や組織では、貴重な機会が与えられることを受動的に待っていれば、無為に貴重な時間資本をさしてリターンの得られない活動に投下することになってしまう。
・発達思考型組織
その仕事をやらせることによって、最も成長できそうな人に任せるという考え方を取る。
弱さを埋めることで本人も組織も成長できるため、弱さは機会として考えている。
私たちの学習や成長はコンフォートゾーンから抜けることでしか実現できない。
必死になって見せまいとする弱さやみっともなさにこそ、実は私たちが成熟していく機会が潜んでいる。
・サーバントリーダーシップ
「人生の夏」から「人生の秋」にかけての転機をどう乗り越え、人生の後半を豊かにしていくか。
どんなに現場の第一線で活躍し、大きな業績を残した人であってもキャリアのどこかで支配的リーダーシップを手放さなければならなくなる時期がくる。自分の能力が低下し、人から頼られなくなり、社会から忘れられるということを受け入れなければならなくなる。
一方で、蓄積した知恵と経験を活かして他社を支援するサーバントリーダーシップによって人的資本や社会資本を充実させて、「人生の秋」以降の持続的ウェルビーイングを実現できる。
今回、短時間でいっきに読み進めたが、金言ばかりであり、「人生の夏」にある私にとって明日からの行動に変化をもたらすものであった。
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