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【声劇】聖夜への鼓動



(基本的に女性一人読みですが、●部分は1人でもお相手にお声を出してもらってもいいと思います)




オフィス内、年末の忙しい雰囲気

「もうすぐ定時…今日も終わりそうにないなぁ」

溜まっていく書類と確認しなければならないメールの多さにげんなりしながら、私はすっかり冷めてしまったコーヒーを1口飲む。

「やっぱり入れ直そう、体が冷えちゃう」

給湯室へ向かいお湯を沸かしていると、後ろから男性社員の声がしてきた

「あ、●さんだ……」

出先から戻ってきたのか、コートを着た●さんは大きな荷物を持って颯爽と歩いている。
私のいる給湯室を通り過ぎ、寒かったからコーヒー飲みたいなって話しながらオフィスに入っていく、後ろ姿もかっこいい。

いつ見ても爽やかな笑顔、同期入社で憧れの●さん
部内での飲み会で隣になってからおしゃべりするようになったけど、仕事もそつなくこなすし、誰とでも仲良く話してる姿がとても素敵で、彼のような人が恋人だったら……

「なんて、誰とも付き合ったことがないのにこんなことばっかり想像して…もうやぁね私」

コーヒーメーカーからドリップのいい香りがしてきた時に、●さんが入ってきた、軽く挨拶だけのつもりだったのに…

●「この後1時間半くらいなんだけど残業頼まれてくれないかな?○さんの作る資料、見やすくて評判だから、一緒に作ってもらえると助かるんだけど、あ、○さんの上司には許可取ってるから…どうかな?」

えっ?
えっ?
私が…●さんと一緒に?!

なんて返事をしたか分からないままオフィスに戻りデスクの周りのやりかけのタスクを片付けていたら、遠くから名前を呼ばれて、慌ててノートPCを抱えて打ち合わせルームへ、きっと私、今顔真っ赤になってる。


(タイプ音と書類をめくる音)

2人で次々に資料をまとめていく、私はデータ入力を終えて無意識に彼を眺めてしまった

綺麗な指…背筋もしゃんと伸びててほんとかっこいい……こんな恋人がいたら見てるだけでも幸せだなぁ

見とれてたら手が止まっちゃう、集中しなきゃ、
●さんも私も明日に響いちゃうものね、この時間すごく贅沢だけど早く終わらせなきゃ

不意に視線を感じて顔を上げると、彼がこちらを見ていた。
何か言いたげな表情だったけど、私には分からなくて思わず視線を返すと、とても優しげな微笑みを見せてくれた。
いつもとは違う笑顔にドキドキが止まらない……邪念を払うようにキーボードを叩いた。

「これで全部ですか?部のサーバーの会議フォルダに入れておきますね」

●「手伝ってくれて助かったよ!頼んでよかった、すごく分かりやすい資料ができたよ、ほんとにありがとう」

「…お、お役に立ててよかったです……じゃ、私片付けてきます」
バタバタとデスクに戻り、片付けながら、
今言われた言葉を頭の中で反芻する
「今!お礼言われた!資料分かりやすいって!きゃー、どうしよう凄く嬉しい!」
お疲れ様でしたと一言告げて、私はスキップするような足取りで会社を出た。


冷たい風に身震いしながら、駅前の通りを歩く、クリスマス直前ということもあり、イルミネーションを施したきらびやかな街並みを、恋人同士が幸せそうに寄り添って歩いていた。

「そっか、もうクリスマスかぁ、みんな幸せそう」

私も…いつか恋人とイルミネーションの下を手を繋いで歩いてみたいな

そう思った時、遠くで名前を呼ばれた気がした、この声は…

●「○さーん!」

振り返ると●さんが走ってこっちに向かってくる。私忘れ物でもしたのかな…

●「(軽く息切れ)報告書書いてたら先に帰っちゃうから…もう遅いから駅まで送るよ」

思いがけない彼からの提案に、ただただ驚いて

「でも、もうちょっとですよ?」

●「そのちょっとを送らせて?」

優しく笑って見せた彼は、私の歩調に合わせて歩いてくれた。

こ、これは…
今聞いてもいいのかな…

「あのっ、クリスマスって予定ありますか……?」

彼の顔を見ることができない…今私きっと真っ赤になってる。

「良かったら一緒に過ごしませんか?私…●さんのこと…」

●「(セリフ食い気味に)ちょっと待って」
静かに聞いてくれていた彼が言葉を遮った。

「えっ?」

やっと顔を上げると、彼の顔も…赤くなっていた

●「ここからは俺から言わせて?」

生まれて初めての告白は途中で遮られ、ここからは…って何を言われるんだろう……
心臓がもうドキドキしすぎて破裂しそう。

●「今日の残業、実は俺から先輩に頼んだんだ、一緒に帰る口実が欲しくて、だから…その…」

きょとんとした私の前で、彼は頭をかきながらゆっくり話す

●「俺、○さんのことが…好きなんだ、クリスマス、俺と一緒に過ごしてもらえないかな?」

突然の告白ってこういうことを言うのかな…
えっ、●さんが私のことを好き?

パニックになって整理のつかない頭の中で、必死に今の気持ちを探し出す、すると不思議なくらい優しい気持ちが溢れてきた…
込み上げる想いと緊張で涙が零れた

「私…も。私も●さんのことがずっと好きです」

イルミネーションから流れる音楽が大きくなった気がした


駅まで送ってもらった別れ際に、私は今まで恋人がいなかったことを伝えると

●「それじゃぁ、これからたくさん2人で思い出を作ろう」

これから始まる2人の未来を想像してドキドキしながらうなづいた。


─────終

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