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【声劇】けむたさ(喪失) 男性side




一人、床に座り込んだ俺は、テーブルの上の小さくなった君をぼんやり見つめていた。

「疲れたな......コーヒーでも飲もうか?」

暗く静まり返った部屋からは、返事はなく、君は静かに俺を見つめている様だった。
さっきまでの君は......
窮屈そうな箱の中で、綺麗に化粧をしてもらって、君が好きだった花に囲まれて...

「眠っているようだったね...こんなに早く......君を失うなんて......」

次々に流れてくる涙を抑えることも出来ず、部屋の中には俺の声だけが響く。

「なにか飲み物......」

薄暗いキッチンに向かい冷蔵庫を開ける。君が作り置きしてた梅酒を注いだグラスを2つ、いつもの場所に並べてはっと気付く。

「習慣.....だね。」

グラスを合わせて1口飲む。喉にしみる熱を感じてまた目頭が熱くなる。

「一人で飲んでも美味しくないよ。君が一緒に飲んでくれないと......」


かつての姿ではなくなった角張った君の肩を抱き寄せて語りかける...まだあの時の煙の匂いが残っている。

「ねえ、あの時箱の中の君にキスをしたんだ、いつもの様に。」

抱いた腕に力を込める。

「....でも本当は、抱き締めたかったんだ....
っ。」

俺はもう一度、腕の中の君にキスをした。

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