【声劇】はじまりの花火
きっかけは漫画みたいな出来事
でも、、この恋は大切にしたい
──昼間の海水浴場
店員「はいよー、たこ焼きおまたせ」
女「ありがとう〜、わーいい匂い」
男「えっ?俺が頼んだたこ焼きどうなったの?」
店員「…あっ、ごめん」
男「いや、待つけどさ、あるんだよね?」
店員「いやー、ごめんね、今ので材料終わっちゃったみたい」
男「えー?マジかよ。ここのたこ焼きめちゃめちゃ美味くて、監視員のバイト終わってダッシュできたのに……」
店員「また明日だなぁ」
女「あのう……」
店員「ん?」
男「ん?」
女「あの、1人で食べるにはちょっと多いんで、良かったら半分…食べてもらえませんか?」
男「え?」
女「まだフタも開けてないんで良かったらですけど」
男「えっ、いや、それあなたが買ったものだし……(お腹の音)うっ、あっ、これは…その…」
店員「(察した)お客さん、それかして、半分に入れ分けてあげるよ」
男「ええ?」
女「あ、すみません」
男「え、ホントにいいの?」
女「いいんです、ホントに多かったんで、押し付けちゃったみたいですみません」
男「いや、こっちが申し訳なくて…」
店員「そこにパラソル置いてるからゆっくり食べて!ありがとう!今日はもう店じまいだな」
女「いただきます…んー、美味しい!」
男「でしょ!ここのたこ焼きホントに美味いんだよ!俺も…んー美味い!」
女「すみません、押し付けちゃった上に一緒に食べることになるなんて」
男「いやいや、こちらこそありがとう。暑いからここでゆっくり食べれて良かったと思うよ。見たところ1人で来てるみたいだし。」
女「ふふ、うん、見ての通り一人で来ました」
男「こういう…夏の海水浴場って友達や恋人とかと来るんじゃないの?」
女「…そうなんですけどね」
男「あ、ごめん、これ以上は聞かないから」
女「いえ、大丈夫ですよ、確かにこういうところに1人で来るのは珍しいですよね」
男「まぁ、一人で来ても楽しんでいけたらいいんじゃないかな」
女「そうですね…でもやっぱり、ちょっと寂しかったです(ふふっと苦笑い)」
男「あ、そうだ!今日この後はもう帰っちゃうの?」
女「えっ?」
男「今日この辺でお祭りと花火があるんだけど、俺もひとりだからよかったらたこ焼きのお礼にどうかなと思って」
女「ぷっ(笑いをこらえる)」
男「ナンパじゃないから!お礼だから!」
女「ふふふ(笑いながら)
ありがとう2、3日近くのホテルにいるから、お祭り…連れてってもらえますか?」
男「よしっ(心でガッツポーズ)わかった!19時にここの……あ、ほらあそこにバス停あるの見える?あそこで待ち合わせしようか?」
女「はい、誘ってくれてありがとう」
男「あ、ごめん、名前も言ってなかった、俺○○って言うんだ、夏はここで監視員のバイトしてるの、普段はスポーツジムのインストラクターしてるんだ、よろしくね」
女「私は○○、都内で事務職してるよ、よろしくね」
男「じゃ、後で」
───待ち合わせのバス停
女「こんばんは」
男「こんばんは。良かった、来てくれてありがとう」
女「こちらこそ、誘ってくれてありがとう」
男「浴衣も持ってきてたんだね、めっちゃ綺麗」
女「ありがとう、今日のために買ったものなの、無駄にならなくてよかった」
男「ん?無駄にって?あ、ごめんあまり聞くつもりはなくて…その…」
女「大丈夫、もう過ぎたことだから」
男「ごめんね」
女「ふふ、ホントに大丈夫だから…」
─歩き始める、祭囃子と雑踏が聞こえてくる
男「足痛くない?もっとゆっくり歩こうか?」
女「今でもゆっくり歩いてくれてるんじゃないの?合わせてくれてありがとう」
男「花火までまだ時間もあるし、ゆっくり行こう」
女「じゃぁ歩いている間に少し……私の話してもいい?」
男「うん、いいの?聞いても」
女「うん、いいの、今日はなんだか聞いてもらいたくて…あ、でも歩きながらでいいよ」
男「そっか…あ!なんか食べる?めっちゃいい匂いしてきた」
女「ふふふ、ホントだ、いい匂い」
─雑踏と祭囃子と2人の足音
女「あのね、2泊3日…彼とここに来る予定だったの」
男「そうだったんだね、だから浴衣も新調したって言ってたんだ?」
女「そうなの、お祭りと花火大会があるって聞いて、近くにホテル予約して……先月の始めだったかな……」
男「うん」
女「連絡も途絶えがちになって、なんとなく彼の態度もよそよそしくなって……」
男「うん」
女「先週ね、見ちゃったの、彼が私の友達と一緒にいるところ」
男「それって……」
女「前に友達に彼を紹介したことがあってね、それから友達が彼に色々相談してたんだって」
男「もしかして…」
女「うん、相談してたらお互いそうなったみたい」
男「それで1人で……」
女「ホテルも予約した後だったし、元々私がここに来たかったし……傷心旅行かな?こんな真夏に笑っちゃうよね」
男「いや、そんなこと……」
女「ううん、やっと気持ちの整理もできて、この旅行でスッキリ忘れるんだ。」
男「うん、そうか…」
女「はい、この話はおしまい。聞いてくれてありがとう……きゃ」
(不意に抱きしめられる)
(花火が上がり始める)
男「あのさ…急なのもずるいことなのも分かってて言うんだけど…」
女「えっ?えっ?何?」
男「次の恋は……俺にしない?」
女「えぇ?」
男「今日知り合ったばかりだけど、あの……君の、○○のことが気になって……自分でも分からないんだけど、これ多分一目惚れって言うのかな……だから…」
女「お互いのことよく知らないのに?」
男「それは…その…」
女「これからゆっくり知っていけばいいよね」
男「えっ?それって…」
女「○○のこと、これからたくさん教えてね?」
男「お、おぅ……ありがとう!これからよろしくね」
女「こちらこそ、よろしくね」
───終