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明暗はコントラストじゃなくてグラデーション

映画に熱い知り合いに魅惑的な導入を聴かされ、
その熱冷めぬうちに向かった
観る順番を「重すぎるから」と助言され
その通りにしたけど、
本当にその助言があってよかった

吸う空気がどんどん重くなって、比喩じゃなく胸を掴みながら観た

池袋からの帰り道
街を行き交う人の歩く足元がやたらと目に入ったり
百貨店の地下街に溢れた商品が全部同じに見え目に入らなくなったり
女子高生が集まってアイスクリームを食べて笑う姿に苦しくなったり
ノイズキャンセリングしたまま無音のヘッドホンをして帰路につくなど


生きるとは
死とは
装飾的でわかりやすい説明がつけられた日常は浮き上がって見え
根底にじっとりと鎮まり続いていく水脈はどこかと考えさせられる


・・・という、チャップリンに笑い、トップガンに泣き、
PLAN 75 で息苦しくなって終えた1日。
(トップガンとPLAN 75 が逆だったらあんなに楽しめなかった)


Remi Boubal の音楽も印象的だった。
自然と背景に潜めているのに、映像の流れに乗って直感に訴えてくる感じ

切り取る場面の美しさ
無駄のなさ、すごい。

セリフは極力絞られ
主人公の視線や人柄が現れる動き
見慣れた風景の見え方が変わる瞬間など
ヒトとヒトの重なりが影響する、心の様の変容
その過程を大切に点と点でつないでゆく作品

わたしの視覚聴覚に残ったもの
・職場整理でロッカーを何気なく雑巾で拭き上げる
・電話しながらお辞儀する、みかんの皮を片付ける
・真夜中、交通整備をするミチのベストで光る、赤い点滅灯
・フロントガラスに届いては消えていく霙
・子どもが健気に二重跳びに挑戦する姿
・遮断機が降りて電車待ちになるミチ
・遮断機が開いて歩き出すヒロム
・無意識に投げられる日常に溢れた無遠慮な言葉たち
 「孫たちのこと考えたらさぁ、そういうことが必要かもしれないじゃない」
 「お年寄りって、寂しいんです」
 「生まれる時は選べないけど、死ぬ時くらいは自分で選べたらいいなって」
・早朝の光がうっすら差し込む寝床で手をかざす


75歳以上の高齢者に自らの死を選べる権利が国会で可決された『PLAN 75』

分断されて形式的になっている社会の仕組み、思考停止しやすい社会のありかた
これは学校教育にも全く同じように言えることだ


映画会場は平日というのもあってか
倍賞千恵子さんと同年代か60代以上の人が8割くらい静かに観入っていて
ほーーー・・っ、と席につくも

映画終了後、重みある余韻を味わっているところに
映画館スタッフの朗らかな声がすぐさま
「コロナ禍により、整理退出をご協力いただいています〜
 まずは◯列までの方、ご起立ください〜」
と列ごとに退出させられている状況が一番ゾッとした
(もちろん、仕事をただ一生懸命ノルマに沿ってやっているだけ)

この映画とこの現実の対比




物事は部分だけでは見えない

誰かが敷いたレールを選ぶことや
わかりやすい言葉を借りてくることよりも
大切なこととは


ぜひ。

(写真はネットから拝借)



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