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後部座席(とっても短編小説)


わたしは夢の中にいるんだな。

車の後部座席にに乗りながら、
目の前には私がよく知っている友達が2人すわっているのを見て思った。

そのうちの1人である彼は最近結婚したばっかりだったのを思い出した。前の彼女と10年以上も付き合っていたのに、彼女の家族が大反対したことでその婚約は破棄されてしまった。

彼は車の中で運転席に座り、肩を震わせて泣いていた。
隣の助手席に座っている例の婚約破棄をした元彼女と向き合い、彼女の肩を持ちながら。

ああ、やっぱり違う相手と結婚しても
心の奥底ではまだ悲しみに暮れているんだな。

私は夢の中で思う。

彼女は、すごく嫌そうな顔をしていたのでそれも見ていてまた悲しくなってしまった。夢だとわかっていても、そこは笑顔ではないんだなと思った。

私は彼とそこまで仲がいいわけでも何でもないので
直接彼に掛けてあげる言葉は見つからなかった。
でも、夢の中でもいいから彼の心の傷が少しでも癒えていきますようにと思った。

彼の深い心の傷は、時間でしかきっと薄くなっていかないかもしれない。
でも、その中でたくさんの愛情が彼の新しい肌を作っていくだろう。

いつか、わたしが大好きだった2人が
2人でいた時の思い出を宝物のように思える日が来ますように。

私は後部座席に座りながら、夢の中で祈った。

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