怪談ともつかぬこと TVに写ったおばあさん
不思議な話。
大学生の頃である。午前中の授業しか無い日は、一旦自宅へ帰って仮眠をして
バイトに向かうのが習慣だった。
(レジ閉めまでやる21時半上がりのバイトなので仮眠しないと辛いのだ。
午後まで授業がある日は電車で爆睡してから直接出勤・余談)
秋も半ばの頃だったと思う。
その日も、出勤時間までソファに転がり熟睡し過ぎないようテレビを
つけたまま仮眠をとっていた。
番組は適度に騒がしいワイドショー的な番組。
うつらううつら心地よい仮眠の中、眠りの浅いタイミングで見たテレビの画面。
レポーターが廃墟のような場所でレポートしている映像だった。
スーツ姿の男性レポータがマイクを持って、何事かを喋っている奥で
茶色の着物を着たおばあさんが、画面から見て横向きで、椅子に
座っている姿があった。
あれおかしいな・・・出演者なら正面向くよな・・・??
普通の関係ない人が映り込んじゃったのかな?
ぼーっと眺めている間に画面がスタジオに変わって、自分も目が覚める。
一体何を見たのだろう。寝ぼけていたのかな。
起き上がってバイトに行く支度を始めた。
まだ出勤には早い時間だったから、だらだらとテレビを見つつ
歯を磨いていた時、また画面が廃墟からの中継に切り替わった。
顔色が悪く土気色、白髪が混じった髪を纏め、茶色の着物。
あのおばあさんがいた。深く俯いた横顔は、表情や顔の造作はいっさい
わからない。背景に溶け込むように存在感がなく、うっすらと向こう側が
透けている。
え??何あれ?私まだ寝ぼけてる?
呆然としているうちに、画面はスタジオに切り替わり、
続いてCMに変わった。何事もなかったかのように。
説明のつかないものを見たことはあるが、テレビの画面の
向こうにおかしなものを見たのは、今のところその一回だけ
である。