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複数の肩書きを通じて、「自分のやりたいこと」にたどり着く~local lounge Ishikawa~

はじめまして、フリーライターの三上です。京都在住の私ですが、最近「meets local」のイベントを通じて他の地域の魅力に触れたり、それぞれの地域に住む人たちとつながるきっかけをもらっています。

今回は2019年7月12日(金)に「ANTEROOM京都 」で開催されたイベント「複数の肩書きをもつ会社員という生き方/石川編 local loungeshikawa」に参加し、2人のゲストから「会社員として働きながら複数の肩書をもつようになった経緯」や、暮らしているからこそ感じる「石川県の魅力」をお聞きしました。ゲストのお話の後には石川県の銘酒や、特産物「こんかこんか」をいただきながらの交流会も。充実したイベントの様子をお伝えします~!

ちょうどいい田舎「金沢」

はじめに金沢について紹介してくれたのは、石川県庁の伊藤友里(いとう・ゆり)さん。生まれも育ちも金沢の生粋の“金沢っ子”です。古くは城下町として栄えた金沢は歴史を感じる名所も多く、北陸新幹線が開通してからは、今まで以上に観光客も増えているそう。最近では中心地の繁華街にタピオカのお店が出店するなど、都会から離れていてもしっかりと最先端の情報やカルチャーにも触れることができるそうです。

「金沢は田舎というイメージがあるかもしれませんが、多くの人が訪れるとてもにぎわいのある町です。中心街から15分で山、30分ほどで海もあるのでお買い物も、レジャーもどちらも気軽に楽しむことができますよ」

金沢以外にも自然が豊かな能登エリア、温泉や歴史や伝統が根付く加賀エリアについても紹介してくれました。中でも伊藤さんのおススメは、絶景ドライブが楽しめる「千里浜なぎさドライブウェイ」と、千枚田をライトアップしたイベント「あぜのきらめき」。どちらもHPで写真をチェックしましたが、県外からもたくさんの人が訪れる理由がわかった気がします。これは行ってみたい~!

近年、そんな石川県の魅力に惹かれて移住する人も増えているそう。移住を検討している人は、約1週間~1か月の短期間で実際に地元企業でワーキング体験ができる「ふるさとワーキングホリデー」などを利用して、実際に石川で過ごしてみるといいかもしれません。

手段は違えどやりたいことは「日本のために役立つ仕事」

ゲストトークの1人目は中神遼(なかがみ・りょう)さん。「AMD」のプランナーとして活躍するかたわら、北陸の伝統的な発酵食品「こんかこんか」の企画、運営などを行ってるそう。

デザイン会社のプランナー」と「金沢の伝統食を支える事業者」。2つの異なる仕事はどのように結びついたのか、京都出身の中神さんがなぜ金沢と縁がつながることになったのかをお話してくれました。

中神さんは、現在所属している「AMD」に入社するまで、デザイン会社で「グラフィックデザイナー」として働いていました。大学生のころ、「工芸品や職人さんが手仕事で作るものの価値をもっと世の中に伝えたい」と考え、デザインを学ぶことを決意したそうです。

素晴らしい技術や職人がいても、手にとってもらえないと産業は衰退してしまう。それを打破するためには、「ロゴやパッケージなどのビジュアル、また誰にどうやって届けるかなどの仕組みも含めた「デザイン」をもってアプローチしていく必要があるのではないか」と。

大学とデザインの専門学校のWワークを1年間こなし、大阪のデザイン事務所に入社。仕事を通じてひたすら腕を磨く日々が続きます。

その後も京都のデザイン会社への転職や、オランダのデザイン業界へチャレンジするなどデザイナーとしてスキルアップを計りますが、「今後どこへ向かって進んでいけばいいのか」と壁にぶつかってしまいます。

そんな頃出会ったのが、現在所属する「AMD」。クオリティの高いデザインの仕事以外にも、デザインやテクノロジーの力で社会問題を解決する取り組みを積極的に行っているところに中神さんはとても惹かれたそうです。

入社後にはクライアントワークと並行しながら、石川県の学生と共に東南アジアの社会問題を抱えている地域に赴き、問題解決の手立てを探す「社会起業家リーダーシップラーニングジャーニー」などに参画。当初からやりたかった“デザインやマーケティングの視点から社会問題に取り組む”ことができました。

当時は東京オフィスに勤務していた中神さん。「もっと根幹から関わりたい、もっと日本のために役立つ仕事に携わりたい」と思っていた矢先、社長から直々に託されたのが「こんかこんか」の事業承継でした。

「いい仕事をしているのに途絶えてしまう事業が、金沢にはくさんあります。異業種間でタッグを組むことで、相手が持つ素晴らしい商品や技術と僕たちの強みである企画立案・販売戦略・デザインという双方の強みを活かして強固なブランドができるんじゃないかと。僕も会社もそこを目指しているんです」

去年の2月に「AMD」が「こんかこんか」の事業承継を行い、中神さんは夏に金沢へ移住しました。任されたのは「こんかこんか」のブランディング。情報誌をモチーフにしたパッケージ、金沢の人気ゲストハウスでのイベントの実施、メディア戦略などデザイン会社としての強みをいかして「こんかこんか」の認知拡大につとめました。なんと!中神さん自身、製造以外はすべて担当しているそうです。

中神さんが担う仕事の割合は下記のように、「こんかこんか」の仕事が半数以上ですが、屋台村「とおりゃんせ」など、こんかこんかの仕事をきっかけに中神さんへ直接依頼が来る仕事もあります。

今までの仕事も継続しながら、金沢でつながったネットワークを活かして「食に関する仕事以外にも、デザイナーとしての仕事も増やしていきたい」と意欲的な中神さん。これからの活躍がとても楽しみです!

2つの仕事の共通点は「町を観察して編集すること」

ゲストトークの2人目は笠原実緑(かさはら・みのり)さん。大学進学を機に富山県から金沢へ移り住みました。大学卒業後、入社した有限会社「E.N.N.」では建築設計、不動産「金沢R不動産」、WEBメディア「real local 金沢」の運営の3つのチームに分かれており、笠原さんは「金沢R不動産」と「real local 金沢」の2つの事業に携わっています。言うなれば「社内複業」というところでしょうか。

「金沢R不動産」での笠原さんの仕事はHPを通じた不動産の紹介です。「3LDK・駅から徒歩5分」のような条件だけが書かれた不動産の紹介文とは違い、人の目線を感じられるテキストが特徴的です。

金沢R不動産のHPをのぞくと、「実際に足を踏み入れると、遠くには日本海まで見える眺望が待っていました」とおもわず住みたくなっちゃう紹介文が書かれていました。このように物件を紹介する以外にも、物件活用の相談にのることも笠原さんのお仕事です。

こういった不動産業の仕事のかたわら、地域の情報を発信するWEBサイト「real local 金沢」の業務にも取り組んでいます。ライティング・編集・取材・関連イベントの運営…と仕事の内容は多岐にわたります。

不動産の業務と並行しながら、WEBサイトの運営業務をたった1人で担当していた時期もあったそうです。提携しているライターさんに助けられながら、なんとか乗り切った笠原さん。現在は関わるメンバーも増え、7(R不動産):3(real local)ぐらいの割合で仕事ができているそう。社内複業をすることで、笠原さんは2つの仕事の共通点が見えてきました。

「共通しているのは、“まちを観察して編集する”ということ。物件を紹介するときも、地域の情報を発信するときも、「まち」という大きな枠のなかの情報をそれぞれの視点でとらえて、編集しているように感じるんですよね」

また2つの仕事を通じてまちの人たちと関わることで、金沢ならではの人とのつながり方を発見しました。それは「あみだくじ型」。

「金沢は金沢城を中心に半径2㎞以内においしい店も、面白い人たちと出会える場所もあります。ご飯やさんや行きつけのカフェがコミュニティスペースのようなもので、そこで一人と知り合えばあみだくじのようにどんどんいろんな方と知り合えるんです」

複数の仕事を通じて、金沢というまちでの人とのつながり方や暮らしの楽しみ方を見出している笠原さん。最近では関りをもつ人からイベントの運営や調整役を頼みたいという声もあるそうです。

また近々、笠原さんも関わるコミュニティスペースを作る計画も。金沢のまちの情報を知りつくす笠原さんが手がけるコミュニティスペース、とても楽しそうですね!まずはそこに訪れて、あみだくじのスタート地点を探してみるのもいいかもしれません。

複数の肩書きが生みだすもの

イベントの最後は、石川県の銘酒「手取川」「竹葉」と中神さんの手がける「こんかこんか」を食べながらの交流会。こんか漬けとは、魚のぬか漬けのこと。「こんかこんか」は、塩分が控えめで、地元のお醤油と本みりんをつかって食べやすくしてあります。これがとっても日本酒と合うんです!おいしかった~!

2人のお話を聞いていて、複数の肩書を持つことはあくまで「手段」であるのではないかと感じました。中神さんのように「仕事を通じて何を成し遂げたいのか」と突き詰めた結果が、今の仕事の形になることもあるし、笠原さんのように多くの人たちとの関りをもつきっかけになることも。

複数の肩書を持つためには、どんな仕事をするのか、どんな会社を選ぶのかということも大切ですが、手段や方法にとらわれすぎずに「何がしたいのか」ということとシンプルに向き合うことが大切なのかもしれません。石川に関わる方たちのお話を聴きながら、そんなことを思った夜でした。

ゲストの皆さん、素敵なお話をありがとうございました!

(写真・文/三上 由香利)

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