映画「好きだった君へのラブレター」自分の気持ちと向き合うための2人の関係。過去の手紙が結ぶシンデレラストーリー
初恋、ラブレターにファーストキス…。
誰にだってある、忘れられない過去の淡い恋。
大切にしまっておいたはずの過去の恋心が、ある日突然、当の本人たちに知れ渡ってしまったら?
Netflixのオリジナル作品「好きだった君へのラブレター」は、妄想ばかりして手紙にそっと自分の手紙を閉じ込めていた内気な女の子のシンデレラストーリーだ。(以下、ほぼネタバレとなる。)
レビュー
主人公は3姉妹の真ん中、韓国系のアメリカ人のララ・J(ララ・ジーン)。ララ・Jは、誰かを好きでどうしていいか分からない気持ちを手紙に書く。そして、その手紙は出さず、お母さんからもらった大切な水色の箱にしまっておくという真面目で、ちょっとだけ変わった女の子。
物語を複雑にするのは、彼女が恋した相手たち。お姉ちゃんの彼氏、友人の彼氏、実はゲイの友だちやサマーキャンプで出会った子に模擬国連で出会った子…。
ララ・Jの秘めた恋心は人知れず、そっと大事にしまっておく、それがララ・Jの恋の仕方だった。
長女のマーゴットが進学で家を出て、新学期が始まって最初の週末の夜。
2人寂しく末っ子のキティ―とテレビを見て過ごす、ララ・J。辛辣な物言いをするキティーは、ララ・Jが一人で週末を過ごさなくていいように友人との予定を断ったと言う。さらには、なぜ彼氏を作らないのかという繊細な部分にもズケズケと入り込んでくる。お姉ちゃん思いではあるが、キティ―の「真実は痛いの」という言葉がグサリ突き刺さる場面だ。
その翌日だった。
5人の片思いの相手へ書いた手紙が、ある日突然、本人たちの手に渡ってしまうのだ。大事件だ。しかも、そのうち2人は学校でよく会う存在。すぐに2人はララ・Jのもとにやってくる。これをきっかけにストーリーが動き出す。
そのうちのひとり、ピーターとひょんなことからララ・Jの恋人とふりをすることになる。ピーターの元カノ・ジェンを嫉妬させ、心を取り戻すためだ。
どんな行動を恋人のふりとしてするか・しないかを契約で取り決めるところは、少し「逃げ恥」を思い出してしまった。契約の内容は、いたってアメリカの高校生らしいものだ。
気が付くと、お互いの友人や家族を巻き込んだ深い関係になっていく2人。勘のいい人ならお分かりだろうが、ララ・Jは、ピーターに恋してしまった自分に気が付く。しかし、そんなことをピーター本人に言えるわけがない。
本当の目的ではない方向に進んでいくララ・Jの気持ちを、果たしてピーターはどう考えているのだろうか?
複雑な高校生らしい人間関係と純粋な感情のぶつかり合いは、ありきたりではあるが、主人公や登場人物と一緒にイラっとしたり喜んだりできる作品だ。
映像・描写
どこかリトルミスサンシャインの主人公の女の子を思い出すような、ララ・Jの妹・キティ―。ララ・J同様に少しクセが強いが、家族思いでどこか愛らしくストーリーに欠かせない存在だ。そんなキティーが、ピーターの車の中で飲んでいるのが「ヤクルト」だ。ピーターも「ちょっと飲ませてよ」「うまいじゃないか!」と言うことから、ヤクルトの売り上げが上がったとか(株価まで上がったらしい)。というのも、ピーター役のノア・センティネオはこの作品をきっかけにブレイクしたイケメン俳優だ。彼が言ったセリフから飲んでみたいと思ったファンが多かったのではないだろうか。また、パーティーで飲酒を控えてピーターが飲んでいるのが昆布茶であるという点は突っ込まずにいられない。
加えて、字幕で1回・吹替1回作品を観たが、本作品の吹替では、スキーキャンプに送り出すときの父親のセリフが何とも生々しく、産婦人科医の父というのを思い出させてくれて、クスっと笑ってしまった。
音楽・音響
高校生のラブストーリーを描くだけあって、今どきの音楽が多用されている。特に私のおすすめは、スキーキャンプのバスが走るシーンで流れるLauvの"I Like Me Better"だ。私のSpotifyにも入っている。(簡単に言うと、「あなたといる時に自分のほうが好きなんだ」という曲だ。)
好きだった君へのラブレター公式サイト(Netflix)
(原題:To All the Boys I've Loved Before)
本作は、ジェニー・ハンの小説『To All The Boys I've Loved Before』を原作としているそうだ。ジャケ買いしてしまいそうなくらい、洋書ってかわいい。
好きにならないと思っていた人を好きになってしまった…。そんな経験がある人は、思わず共感してしまう1本になっている。
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