お砂糖の星
瓶の中にある星の形をしたお砂糖を見て、トモちゃんは言いました。
「お母さん、このお星さま食べられるの?」
お母さんは笑いながらお砂糖をトングでつまむと、トモちゃんの前にあったお茶の中にポチャンと入れました。
みるみるうちにお砂糖は溶けて、星の形はなくなってしまいます。
トモちゃんは「ああ」とがっかりした声を出したあと、コップの中をのぞきこみます。
すると、その中にはたくさんの星が輝いていました。
「お母さん!見て!こんなにいっぱいお星さまがあるよ」
トモちゃんは思わず、星をつかもうとコップの中に手を入れてしまいます。
目の前は真っ暗になり、目をよーく開いてみるとそこは宇宙の真ん中あたりのようでした。なぜだか分からないけれど真ん中あたりのような気がしたのです。
トモちゃんは嬉しくて近くにあった星をパクリと食べてみます。
「美味しい!ショートケーキの味がする」
もう一つパクリ。
「わあ!今度はオムライスの味がする!こっちを先に食べたら良かったな!」
パクパクパク。
ピザパン、おにぎり、バナナジュース。
「ちょっと気持ち悪い」
トモちゃんは食べるのをやめ、ゴロンと仰向けになり宇宙の真ん中で幸せいっぱいでした。
お砂糖の星はトモちゃんに夢を与えてくれます。
見た目は同じ形をしていても、どれひとつとして同じ味はありません。
トモちゃんはお腹いっぱいになり、そのまま眠ってしまいました。起きると肩にはそっと毛布が掛けてありました。
「お母さん!私、お星さまを食べたの!」
トモちゃんがそう言うとお母さんはトモちゃんの手に歯ブラシを握らせます。
「またおいしく食べられるようにちゃんと磨きましょうね」
お母さんの手はとても温かく、歯ブラシをしっかりと握りながらトモちゃんは不思議に思いました。
(もしかしたら、あのお星さまはお母さんが作ったのかもしれないわ!)
お母さんの後ろ姿を追いかけるようにトモちゃんは洗面台に向かいます。
(だってオムライスの味、お母さんが作るのとおんなじ味がしたんだから!)
棚の上には瓶に入ったたくさんの星がキラキラと輝き、台所をほんのりと照らしているのが見えました。
おしまい。
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