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餃子くんのかばん

ぼくはきっと美味しいよ!

今のぼくはなんにも入っていない、ただの皮だけど。

この皮も、おじいさんのシワシワの手で作られただなんて誰が信じる?

一枚、一枚ていねいに。

ぼくは二枚目に作られたの。二番目ってことだけど、おじいさんは冗談みたいに、ぼくのことをかっこいいって言ってくれるんだ!

おもしろい、おじいさん。仕方ないから笑ってあげる。

おじいさんはぼくにかばんを持たせて旅に出るようにと言ってきた。できたら、この国から出るようにと言ってきた。

ありきたりな中身を選ぶんじゃないぞって、チョコレートをくれたんだ。

え!チョコレート?ぼくには似合わないよ。そう思ったけど、かばんにそっと忍ばせて翌朝早く、おじいさんの家から出発したよ。

まずはパスポートを出して、おじいさんの言った通りに外国に行くことにした。

南の島に着いたらね、ぼく、溶けちゃいそうになったんだ。困ったな、ぼくはまだなんにも包んでいないのに。

その時、思い出したよ!かばんの中のチョコレート。

熱でとけて、どろどろになってしまったチョコレート。ぼくはあわてて、ぼくで包んであげた。
そしたらぼくの色はチョコレート色になっちゃった!

うん、でもこれなかなか、かっこいいんじゃない?日に焼けたみたいで男らしいかも。

南の島は暑いから、ぼくは船に乗って西に進んだよ。
そしたらそこは、どこもオシャレできらきらしたものばかり。

ぼくはかばんの中に色とりどりのキャンディやクッキーや、それから固くて長いパンもつめこんだ。

こんなにわくわくする旅は初めてだよ。ぼくに似合うかどうかなんて分からないけど、ぼくの好きなものをたくさん集めたかばんの中身。

今度は飛行機に乗って、東へと行ってみた。そこでは見たことのないお野菜やチーズ、スパイスを見つけたよ。

これもまたかばんに詰めたら、ぎゅうぎゅうでいっぱいになるから、そろそろおじいさんのところへ帰ろうと思って今度は汽車に乗ったんだ。

ああ、懐かしいこの感じ。
ほっとする、夕陽の色。

ただいま。おじいさん。

おや?茶色いお前は餃子くんだね。

うん。おじいさんにもらったチョコレートが溶けてどろどろになっちゃったから、あわてて包んでみたら茶色くなったの。

そうかい、そうかい。

おじいさんはそう言って、ぼくのかばんを指差した。

新しい出会いはあったかな?

ぼくはかばんから、ひとつずつお気に入りのものを取り出して、おじいさんにお話した。

ぼくは今までお肉とお野菜しか包んだことがなくて、それがずっと心地良かった。みんなも美味しいって言ってくれるから、それで満足していたんだ。

だけどね、おじいさん。
ぼくは旅に出て気づいたよ。ぼくはぼくの好きなものを包んで、みんなに新しい味を教えてあげたいって。奇妙で楽しくて夢のある、ぼくにしか出せない味を出したいんだ。

最初はまずいって言われるかもしれない。だけど、それでもいい。

世界は広いんだ。ぼくの味を美味しいと言ってくれる人はどこかにきっといると思う。

おじいさんはぼくの話を聞きながら、嬉しそうに笑ってた。

そしてね、ぼくのかばんからキャンディをひとつつまむとこう言ったよ。

君はやっぱりかっこいいぞ!
旅する餃子くんなんて世界初だってね。

《おしまい》

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