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地球の走り方 世界ラリー応援宣言 ラリードイツはつまらないと放送した回を解説

皆さんは「地球の走り方 世界ラリー応援宣言」という番組をご存じでしょうか?

2017年から2018年にかけてテレビ朝日で放送されたWRC(世界ラリー選手権)の応援番組。アンジャッシュ渡部建がメインMCを勤めるこの番組はラリーのハイライト番組ではなく、ラリーを知らない人をラリーファンにするためのバラエティー番組であり、ハイライトよりも芸人による現地リポートがメイン。その現地リポートもWRC無関係なものが多いことや、ラリーハイライトシーンですらバラエティー演出を多く用いるなど、ラリーファンの視聴者からは大不評の番組でした。

Yahoo!の番組欄における評価や感想もボロクソ、いかにこの番組が悲惨なものかを物語っています。

https://tv.yahoo.co.jp/review/364072/

今回は2017年9月に放送されたラリードイツ回にて番組スタッフの行った演出について紹介したいと思います。


まず、WRCとは?

WRC(世界ラリー選手権)はモータースポーツの一種であり、F1やル・マン24時間耐久と並ぶ人気のモータースポーツ。サーキットレースではなくSS(スペシャルステージ)と呼ばれる公道を閉鎖したコースを使用し、SSをラリーカーと呼ばれるレーシングカーがタイムアタック。そして15から20のSSの合計タイムが一番短いドライバーが勝者となります。このWRCは日本車が常に参戦しており、現在は2017年からトヨタが参戦しています。

詳しくはレッドブルのサイトにて記載されているのでこちらをどうぞ。

https://www.redbull.com/jp-ja/world-rally-championship-season-need-to-know

ラリードイツ2017

続いて2017年のラリードイツについて。

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ラリードイツはフルターマック(未舗装路)を走るラリー。2017年はフォードのラリーカーを使用するMスポーツのオット・タナクが優勝。2位にはシトロエンのアンドレアス・ミケルセン、3位にはMスポーツのセバスチャン・オジェ、4位にはトヨタのユホ・ハンニネンという結果となり、チャンピオン争いをしているトヨタのヤリマティ・ラトバラとヒュンダイのティエリー・ヌービルはマシンが壊れてリタイヤとなりました。

しかし、このラリー終了後にラリードライバーから「退屈だ」と不満が相次ぎました。

あるドライバーは

「こんなラリー、理解できないよ。彼らはこのイベントの特徴を変えてしまったんだ。昨年までは本当に良いラリーだったけど、今回のラリーは本当に退屈だ。完全にストレートか、もしくはほぼ真っ直ぐのストレートを走るだけじゃないか。このルートになんの意味があるんだ? 僕にとっては本当につまらないラリーだ」

ヘイデン・パッドンのコドライバーであるセブ・マーシャルは

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「金曜日にはブドウ畑中心のステージがある。そこには人によって好みのステージだったり、苦手なステージがあったりして、ステージによって性格が変わる。さらに土曜日のパンツァープラッテ(イベント最長ステージ)は誰にとっても間違いなく挑戦的なステージになるだろう。しかし、それ以降の土曜日と日曜日のステージは"ほぼ高速"ステージだ。そこでライバルに差をつけるのはかなり困難だ。差をつけられるのは強力なエンジンを搭載し、素晴らしいエアロが付いているクルマだけだろう」

ラリードライバーのクレイグ・ブリーンは

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 「できるだけギャラリーを動員するために主催者が今回のようなステージ編成にしたことは理解できる。でも、僕たちは金曜日に3ステージをそれぞれ2度走行する予定なんだ。僕たちが使うそのルートでは、主催者がVIPランを開催する予定があって、それが終了する頃には600台ものクルマがステージを通過していることになる。もし雨が降ったなら、僕たちは悪夢を見ることになるだろうね。ほとんどのコーナーをカットできるようになるだろう。(ティエリー)ヌービルには大きなアドバンテージになるだろうね。コーナーをカットできるだけの余地がたくさんあるんだから。言うまでもなく、今回のルートは最善策ではないだろう。ブドウ畑やバウムホルダーから離れて田舎道に行っても、対して面白くない。今回のイベントはラリーの特徴を大きく失ってしまっている」

なぜ彼らは不満を漏らしたのか。

理由のひとつが前年と比べコースが大幅に変更されたこと。

2016年のコースがこちら

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2017年のコースがこちら

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見ての通り大幅なコース変更がなされています。この2017年の新コースは田舎の直線道が中心となりました。これがドライバーから不満が続出した要素の一つ。直線ばかりになると、ドライバーのテクニックよりもマシンの性能で勝負が決してしまうからです。また、直線よりもカーブの多いコースが好きだというドライバーが多かったのも不満続出の原因かもしれません。

上記で、ブリーンはVIPランが行われたあとにラリーが行われることも批判しました。600台もの車が走った後なのでコースは荒れ模様。さらに、ラリーカーがインカット(カーブを曲がる際にタイヤだけ舗装路の内側の部分を走行させること)を行うと道路に泥が散乱し、先頭スタートのドライバーが有利になる。さらに、雨が降れば泥に雨水が付着しとてつもない泥道と化す恐れがあり、かなり難しいコースとなります。

これらを踏まえた上で、ドライバーたちはラリードイツは田舎を走る退屈なラリーと発言しました。これらの発言は批判ともいえますが、「2018年はちゃんとしろよ」という意味合いも含まれていることや、命を懸けて走っているプロドライバーであるため、ラリーファンからドライバーへの批判は一切ありませんでした。

2017年9月12日

この日の深夜、テレ朝は地球の走り方のラリードイツ回を放送。現地リポートは芸人・ブリリアンによるトヨタ・ヤリスWRCの乗車券をかけたゲームと乗車リポート。しかも撮影はフィンランドであり、ラリードイツ放映回でありながらドイツに番組スタッフは出向いていません。(この番組ではよくあること)

番組後半、ラリードイツのハイライトがスタート。前戦のラリーフィンランドで優勝したトヨタのエサペッカ・ラッピが、早々とコースオフ。優勝争いから脱落したシーンの直後、「いたって地味な展開」というテロップとともにラリーハイライト担当の編集スタッフが登場。

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パソコンでラリーハイライトをみながら「これはおかしい」と発言します。

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そして上記のラリードライバーの発言が登場。

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この直後、トヨタのドライバーであるヤリマティ・ラトバラのマシンにトラブルが発生。ラトバラは怒りで放送禁止用語を連発します。

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これを見た編集スタッフも放送禁止用語を連発!

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翌日、チャンピオン候補のヒュンダイ所属のティエリー・ヌービルにもアクシデントが発生。走行中に謎の脱輪を起こしリタイアとなりました。ヌービルのコドライバーのニコラ・ジルソウルはリタイアに頭を抱えました。

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そのシーンを見た編集スタッフは「頭を抱えたいのは我々の方だ」と頭を抱えました。

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そして最終日、チャンピオン候補のMスポーツ所属のオット・タナクは1位、セバスチャン・オジェ3位。ライバル自滅で安全走行に心がけると発言し、ゆっくりしたペースでステージを走行。

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これを見た編集スタッフは気絶寸前。

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そして、最後まで大きなハプニングもなくラリーはタナクの優勝で幕を閉じました。

編集スタッフは優勝したタナクのリアクション、優勝コメントが薄すぎると彼をバカにしました。

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そして、ラリーハイライトの最後で編集スタッフはつまらないラリーを見せてしまったことを番組MCのアンジャッシュ渡部建に謝罪。

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「渡部さんすみません」でコーナーを締め括りました。

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解説

真剣勝負のスポーツであるラリーを、バカにしたとしか思えない放送。ラリーファンを激怒させてしまったのは言うまでもないでしょう。

当回を視聴したモタスポファンの声を紹介します。

地球の走り方 世界ラリー応援宣言 って番組久々に見たけど、ドイツラウンドの放送酷すぎでしょ。この番組作ってる奴らはチャンピオンシップなんて興味ないし、レースドライバーはアスリートだと考 えて無いんだなってのが凄く良く分かる内容だったよ。
昨晩の地球の走り方はラリー・ドイツ。番組スタッフが意味なくしゃしゃり出てきたら終わりだなと呆れる。リアクションは芸人に任 せとけばよい。
録画したラリーの番組観たけど大きいクラッシュがなくて地味だとか言っててなんだかなあって
テレ朝「地球の走り方」を見る。 地味なレイアウトで大不評だった事を当たり前のようにイジる度胸がすげえ。
この内容じゃラリーを見たいとは思わない


まず、ラリードイツは退屈なラリーだと番組中でやっていましたよね?

確かにラリードイツは田舎を走る退屈なラリーとラリードライバーは言いました。しかし、番組では編集スタッフが退屈だと言っています。おかしくないですか?

ラリードライバーは実際に走ってみた結果退屈だった。一方の編集スタッフは見てて展開がつまらなかったから退屈だった。これは明らかにイコールの関係ではありません。

そもそもラリードイツは多くの観衆が詰めかけた盛り上がったラリーでした。

観客が退屈なラリーなら開催なんかされません。その上、ヒュンダイは本拠地がドイツにあるため、韓国メーカーではありますが、事実上の母国戦になりますし、トヨタもレーシング部門のTMGがドイツに身を構えており、多くの関係者も楽しみにしているラリーです。さらに、開催地がベルギーと近いことから、ベルギー人のティエリー・ヌービルの大応援団が大挙しており、とても地味なラリーとは思えません。

それに、見てて退屈かどうかは人の価値観です。twitterでラリーファンがこのラリーは退屈だったと言ったところでなんの問題もありません。しかし、この番組は世界ラリー応援宣言。応援宣言を名乗る地上波番組がラリードイツは退屈なラリーと紹介すること自体間違いです。逆の立場でいうならドイツのラリー番組が「ラリージャパンは田舎を走る地味で退屈なラリー」と紹介したら、日本人は怒るでしょ?この番組がやったことはそういうことです。

そもそもこの番組が初心者に向けたものであるため、ラリーファンが口出しすべきではないという意見もありますが、ラリードイツはつまらないと教えるのは間違いです。あんな編集スタッフの悪ふざけを放映するくらいなら、2位入賞のアンドレアス・ミケルセンを特集してほしかった。

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彼は若くして才能を開花させるも、2016年に所属チームが解散、ドライバーとして行き詰まってしまうも、シトロエンが救いの手を伸ばし、数戦にスポット参戦。そしてこのドイツでは殊勲の2位入賞を達成しました。このミケルセン、番組では一切無視でした。スタッフのアホみたいなシーンをやるくらいなら、彼の経緯を紹介してほしかったです。ちなみに、このあとヒュンダイに加入し、2018年は全部のラリーに出走したミケルセンですが、2年間の放送のなかで彼は一度も番組では特集してくれませんでした。番組的に撮れ高がなかったんでしょうかね?

また、最後にタナクのリアクションを薄いとバカにしましたが、彼自身優勝しても派手なリアクションをする人物ではありません。(ただし、表彰式では大はしゃぎするときもある)2019年にチャンピオンとなるタナクですが、チャンピオン決定の瞬間も大きくはしゃいだりはしませんでした。そもそも、優勝の瞬間に大はしゃぎするドライバーはそれほど多くありません。79勝を誇るセバスチャン・ローブですら、優勝の瞬間は落ち着いています。しかし、番組的に大はしゃぎしてほしかったんでしょうね。いくら退屈なラリーとはいえ人格まで否定するとは。

最後にスタッフが渡部に謝罪するシーン。実は失神寸前のシーンの前にスタッフが「こんなつまらないものを見せたら渡部さんにボコられる」というシーンが存在します。

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編集スタッフなんだから、面白い要素を探せよ!といいたくなる程ムカつくシーンです。だからミケルセンに触れてほしかった。最後の謝罪も「私達には面白い番組を作れません」って言ってるようなものでしょう。こんなことをする番組こそ退屈でつまらない。ラリードライバーはおろか、大会、競技にたいして失礼極まりない。

しかし、この放送は大きな問題にはなりませんでした。理由はこの番組の放送直後からバラエティー演出ばっかりでラリーのハイライトすら真面目にやらなかったことから、まともなラリーファンは視聴していなかったこと、地上波放送されたのは関東と名古屋テレビのみで、それ以外の地域はネット配信サービスでしか視聴できなかったこと、WRCの知名度の低さが原因と私は推測します。

また、新規のラリーファンの取り入れのためなら、こういった演出もやむを得ないという声もあがっていましたが、2018年のラリーフランスでそれらの声がなくなる程、最低な放送を行ってしまいました。これについては後日別記事で書こうと思います。

ちなみに、2018年のラリードイツ放送回は現地リポートとしてレイザーラモンRG親子がラリードイツ観戦に訪れており、トミ・マキネンやマルティン・ヤルベオヤにインタビューを敢行。ラリーハイライトではトヨタが優勝したため、退屈なラリーだという演出は行いませんでした。流石に退屈なラリーでトヨタが優勝!なんて放送はできなかったようです。

最後に

この番組のヤフー番組欄に寄せられたコメントを紹介して、この記事を締め括ろうと思います。

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